カスタマーマーケティング(の続編)です。
先の記事「カスタマーサクセスの次にくる波:「カスタマーマーケティング」」は、カスタマーサクセスな人もそうでない人(特にマーケター)にも、たいへん好評でした。
同記事の著書であり、SaaStrの創業者である ジェイソン・レムキンさんが、今度は「カスタマーマーケティングへの正しいお金の使い方」について叫んで(?)くれています。
10%だけでも多そうですが、+10%、、、これ、担当者になったらワクワクしますね!
カスタマーマーケティングへの投資のし方:「10+10」ルール
私は来年、カスタマーマーケティングにSaaStrの時間の多くを割こうと考えています。
カスタマーマーケティングは、ソフトウェア事業に長年携わってきた人たちにとって古くから知られている概念かもしれません。しかし、SaaS事業に限って言うと、カスタマーが契約してくれた ”後” のマーケティングについては、活用されているツール、プロセス、ソフトウェアがほとんどありません。
この5年間、SaaSの人びとはカスタマーサクセスに本気で集中し、それをサイエンスの域へ、そして成功に必須な組織能力の域へと引き上げました。
一方、カスタマーサクセスは未だ多くの点で「営業の延長」と定義されているのも事実です。つまり、営業活動が終了すればカスタマーサクセスに引き継ぐ、という考え方です。
時間軸でいえば、大抵の場合それは正しいです。
しかし本当は、カスタマーサクセスのイトコはカスタマーマーケティングです。カスタマーマーケティングを正しく実行すれば、カスタマーを10年、あるいはそれ以上の長期にわたり維持できます。カスタマーが契約してくれた正にその瞬間に、リテンションに向けたマーケティングジャーニーが始まっているのです。
カスタマーマーケティングはディマンド創出と似ていますが、最終的なゴールが全く異なります。カスタマーマーケティングの最終ゴールは、カスタマーのリテンション率とアカウント売上のネット成長率です。
そのために実行する手順書も似ていますが、全く同じではありません。必要なコンテンツ、マーケティング活動、そして人材スタッフィングが異なります。具体的には次の通りです:
イベント
オフラインのイベントは、カスタマーのリテンション向上とアカウント単位の売上拡大にとり非常に重要なため、可能な限り実行すべきです。何%がリテンションへ、何%がディマンド創出へ繋がったか把握しましょう。始めるのは簡単ですが、続けるには真剣な判断が必要です。
ウェビナー
ウェビナーの価値は過小評価されています。適切なウェビナーを定期的に行えばそれは非常にかけがえのない資産になります。重要なカスタマーらと直接関われる最高の手段です。
なるべく週次でウェビナーを開催しましょう。同時に、参加者の何%が見通し客になり、参加してくれた既存カスタマーの何%がリテンションないし関係強化に繋がったか把握しましょう。
ドリップマーケティング
大抵の会社が、見込み客に対するキャンペーンメールを自動設定しています。ところで、あなたのカスタマー基盤はどういう人たちですか? 週に1度または2度届くメールの内容は、彼らがプロダクト価値をより多く得られるような内容ですか? もしそうなら、効果は出ていますか? 最新の更新はいつですか? … といったことを、あなたは知らないかもしれません。
ホワイトペーパーと基本コンテンツ
ハッキリ言います、これはカスタマーマーケティングの ROIを左右する重要要素です。ですが、これらがカスタマーのアダプションやエンゲージメントにどれだけ貢献しているかご存知ですか? 御社のオンボーディングコンテンツがどれほど優れているかご存知ですか? 残念ながら多くのコンテンツは営業活動を支援する事例紹介に留まっています。
ポッドキャスト、ブログ、ビデオコンテンツ
今日、ポッドキャストは非常に一般的になりました。にしても、聴き手にとり、特定ベンダーのポッドキャストやブログを定期的に聴くのはそれほど簡単ではありません。従いリード創出効果はそれほど高くないかもしれません。しかし、誰が聴いてくれているかご存知ですか? あなたのトップカスタマーです!そして、あなたのアプリ担当者、日中日夜使ってくれているユーザーです。
などなど。
ご覧の通り、需要創出に使うツールのほぼすべてを、カスタマーマーケティングでも再活用できます。
さあ、では次に何をすべきでしょう?
カスタマーマーケティングを実行する上での大きな課題は、最適な人材が競合していることです。
既存のマーケティングチームには、リード創出プレッシャーが何トン単位で掛けられています。リード案件のパイプライン創出に加え、売上の成長、成長、成長… のための営業活動を支援することへの要請です。そして、このプレッシャーは健全なことです。
一方、リード創出には常に定量目標、「今年は110%の成長率を達成する」などが付いてきます。従い、カスタマーマーケティングにもし明確な定量目標がなければ、それに注意が払われることはないでしょう。
そこで提案です:
「10 + 10 ルール」の推進
同ルールやガイドラインは完璧でなく、今後時間をかけて調整が必要と思います。しかしまずはARR 200万?3,000万ドルの事業に適用できそうです。
1. 契約更新による追加収益の10%をカスタマーマーケティングに投資する
はい、多額に聞こえますよね、特に初めて聞くと。しかし更新してくれるカスタマーの新規獲得費用に比べるとずっと少額です。おそらく初年度ACVの20?30%です。新規獲得したカスタマーを維持するにはそれなりの予算が必要です。でなければ、あなたのしていることは正しいと言えません。
かつ
2. ターゲットアカウントのエクスパンション収益の10%をカスタマーマーケティングに投資する
既存カスタマーからの収益 200万ドルを今年は300万ドルに増やしたいとすると、100万ドルの売上アップです。この場合、アップセル契約を “締結する” のに役立つカスタマーマーケティングに10万ドル投資することを検討してください。決して、カスタマーサクセス、アカウントマネジメント、セールス、各部門のトップに “お任せ” しないでください。
事業の成長フェーズ次第ですが、上記ルールを適用した時の予算額は割と多額になることが多く、かつ多くの “変化” も必須です。もちろん「10%+ 10%」の数字を微調整することも可能です。
究極的には、Second Order Revenue(訳者注: 2度目ないし2年度目以降の契約による売上)があなたの事業の大成長(40%+)を牽引しているにもかかわらず、この「10 + 10」プログラムが適用されていないなら、それはマーケティング予算を契約締結までのことに投入し過ぎていることを意味します。
同時に、その後彼らが何十年にもわたりカスタマーであり続けてくれるためのことに予算を投入しなさ過ぎていることを意味します。
この続きは、2019 SaaStr Annualでたくさん話します。ぜ皆さんいらして下さいね!