カスタマーサクセスチームとプロダクトチームの連携が進む5つの方法

 by? 弘子ラザヴィ

 

カスタマーサクセスチームがプロダクトチームと上手く連携する5つの方法

 

カスタマーサクセスチームがプロダクトチームとベタベタに連携することがとても重要という記事「プロダクトマネジャーとカスタマーサクセスが最高の戦友になる理由」は、強いプロダクトをお持ちの会社さんほど強く同感されます。一方、では具体的に何をする・したらいいか?は手探り、ないしもっと良い方法を知りたいという声も多いです。

 

今回は、具体的に何をすればいいか?に答えるべく、「行動」レベルの連携方法を5つ紹介します。

 

なお、ここシリコンバレーのカスタマーサクセス界でも、プロダクトとサクセスの連携はとてもホットなテーマです。象徴的なキーワードは「(プロダクトアウトから)マーケットインになる」で、誰もが名前を知る優れたプロダクトをもつ会社さんほどその苦労話や挑戦の経緯をミートアップでお話しされます。今回はそういう議論やイケてる実務例からのポイントご紹介します。

 

1)プロダクトチームが既存カスタマーの生の声に触れる時間をサクセスチーム主導でつくる

 

ユーザーの声を一切聞かずにプロダクトを開発する会社は皆無です。ですので「カスタマーの声に触れる(ボイス of カスタマー)だって?!とっくにやってるよ! とプロダクトチームから言われます」と皆さんおっしゃいます。

 

しかし実は、サクセスチーム主導の「ボイス of カスタマー」は、プロダクトチーム単独によるそれと全く別物といっても過言ではありません。最大の違いは「カスタマーの目利き」です。

 

プロダクト開発では、開発の意思決定や優先順位づけの根拠とする市場調査で、信頼性を上げるべく一般的に一定のN数を確保します。そのように、想定ターゲット層の大多数の意見に基づいてプロダクトを開発することは必要かつ重要です。加えて「その後」も重要です。つまり新プロダクトや新機能が実際に使われる現場からの発見をどんどん反映し最高のプロダクトに磨き上げることです。

 

スタンフォード大学を中退して起業し、現在 YコンビネーターCEOであるサム・オルトマン氏いわく

“成功した創業者たちはみな狂ったようにカスタマーサポートを行う・・・創業者って人間は「このプロダクト、最低!」って言葉を聞くと体に物理的に痛みを感じるんだ、そして真夜中だろうと起きて何とかしようとするんだ”

 

問題はこの「その後」に起きます。なぜなら最大の落とし穴がそこにあるのです。つまりあらゆる課題をつぶし込もうとしてより多くの人の声を聞き、届いた開発ニーズすべてをプロダクトに盛り込んでしまうことです。それは強いプロダクトを開発する上で最も避けなければならないことです。

 

真に強いプロダクトは、本当に必要なものだけがシンプルに揃う研ぎ澄まされたプロダクトであり、時には「削る・止める」判断が非常に重要です。

 

そしてそれこそが、カスタマーサクセスチームの活躍が鍵を握るところです。即ち、カスタマーサクセスチームこそが「この人の声が重要」というカスタマーの目利きをできる・すべきなのです。

 

米国の1兆円規模に成長した某スタートアップでは、サクセスチームの親分としてCCO(チーフカスタマーオフィサー)職があり、その重要な役割の1つがこの「ボイス of カスタマー」です。誰の声を聞くべきかを目利きし、その声を常にアップデイトし、そこから得られる重要な示唆を社内の開発ロードマップや営業戦略、マーケティング戦略に戻すのがミッションです。

 

サクセスが目利きしたカスタマーの声にプロダクトチームが触れる機会をもつ方法は3つです:

(1) ラウンドテーブル
(2) ワン on ワン
(3) サポート責任

 

(1) は、文字通り「ラウンド(丸い)テーブル」にカスタマーを招待し、カスタマー同士にプロダクトについて意見交換してもらう方法です。ユーザーコミュニティのオフ会に近いですが、出席者をサクセスチームが厳選した数人に絞る点が大きく異なります。

 

(2) は、カスタマーの会社へ赴き個別会議で意見交換する方法です。カスタマー側から、プロダクトの採用や予算の権限を持つ人、プロダクトを管理する部門の責任者、プロダクトのハードユーザーのほか、経営者(社長・役員)にも同席してもらい、プロダクトを使ってカスタマーがどう成功した・するを議論できるとお互いに効果的です。

 

(3) は、プロダクトチームの開発エンジニアに週数時間など決めてサポート業務を実際に担当してもらう方法です。注意すべきは、プロダクトチームのエンジニアには、目利きしたカスタマーによる難易度が高いサポート案件を割り当てることです。それが担保できればこの方法は、プロダクトチームがサポートチームとも問題を共有でき、更に解決の所要時間が格段に上がることから素晴らしいカスタマー体験を提供できてリテンションにも効果的です。

 

余談ですが、あるシリコンバレーのミートアップで、シマンティック社のカスタマーサクセスリーダーが、彼自身昔はプロダクトアウト系の人だったのが、サポート業務を担当し、マーケットインに心からビビっと開眼した瞬間について誠実にお話されたのが印象的でした。簡潔にいうと、それまでセキュリティ万全、超使い勝手のよい最高なプロダクトだ!と自信満々だった彼が、サポート業務を担当した時、何年もかけて作り上げたコンテンツが一瞬で消えてしまったと問合せの電話口で泣きだしたカスタマーと直接話し深い衝撃を受けた、二度とそんなことが起きてはいけないという使命感にかられたという話でした。

 

2)カスタマーデータからサクセスチームが抽出した洞察をプロダクトチームへ注入する

 

「1」が定性情報に触れる方法とした時、「2」は定量情報で攻める方法です。ここでも「1」同様にサクセスチームがカスタマーの目利きをし、注目すべきデータを選別することがとても重要です。

 

一方「2」は生の声でなくデータな分、「1」に比べより幅広の、あるいは数多くのカスタマーに目くばせできる点が異なります。そしてそこが要注意なところです。つまり、単純に広げればよいというものでないということです。無駄に広げるほど洞察は薄まります。

 

効果的な例は「これから注力したい戦略カスタマーだが、まだラウンドテーブルやワン on ワンをお願いできるほど親しくない」というセグメントについてまずはデータから間接的に声をすくう方法です。ほかの例は、より絞り込んだセグメントの特性を見出し、それを他のセグメントと比較することで、その背後にある問題や課題・ニーズをあぶりだす方法です。

 

どちらも、無駄に広げず逆に絞り込むことで深い洞察を得る方法です。そしてそれが実は「2」でカスタマーサクセスチームの活躍が鍵を握るもう1つの点、即ち「カスタマーデータの分析スキル」ないし「絞り込むレンズ・切り口のセンス」なのです。

 

プロダクトチームは開発が得意であり本業です。カスタマーサクセスチームはデータ分析が得意であり本業です。要は、互いに得意スキルを発揮し合えば最高だね、ということです。

 

カスタマーデータは社内に山ほど存在しますが、プロダクトとサクセスの連携でよく用いるデータは以下です:

(1) ユーザー調査(サーベイ)
(2) プロダクト利用状況データ

 

(1) は、特定カスタマーを定点観測する調査のほか、特定局面(オンボードやサポートといった特定フェーズ終了時や、新機能を初めていじった時、つまづきやすい機能を使った時など)に絞った調査も効果的です。最近はアプリ組込み型の調査や事前設定したタイミングで自動送信される調査など、便利で安価なソリューションが数多くあり実施負荷を気にせず実行できるようになりました。

 

(2) は説明不要ですね。実際のカスタマーの行動履歴ほど真実を雄弁に語るデータはありません。

 

3)理想カスタマーの「人物像」と「成功への道のり」をプロダクトチームとサクセスチームが一緒につくる

 

最初に断言します。この協働作業をもし一度もしていない場合、サクセスチームとプロダクトチームがそれぞれ独自に持っている理想カスタマーの人物像(プロファイル)と成功への道のり(ジャーニーマップ)は、テーブル上で突き合わせると全く異なる内容であることが一般的です。

 

最大の理由は、カスタマーを観る際のレンズとゴールがそれぞれ違うことです。

 

プロダクトチームは一般的に、カスタマーの困り事(ペイン)や、あったら嬉しい(ニーズ)を特定し、それを解決する機能/プロダクトを開発します。しかし乱暴に言うと、彼らの想定カスタマーはあくまで「想定」であり、実際に上市されたプロダクトを利用する人たち、ないしプロダクトに価値を見出す人たちは大きくズレている可能性があります。(ジャスティンとボブの話が参考になります;参照「カスタマーサクセスが働き方を改革する方法@Slack」)

 

加えてズレが生じる最大の理由は、プロダクトチームのジャーニーはプロダクト機能の使われ方を描写する(設定完了→機能A活用→機能B活用・・・)一方、サクセスチームのジャーニーは、その「行間」すなわち「機能A活用→機能B活用」がスムーズにいかないポイントや、機能が使えた後に成功に至るまでに不足することに注目して描写する、つまり観察のレンズが全く異なることです。

 

レンズが全く異なる理由は、サクセスチームのゴールが「カスタマーがプロダクトを利用することで事業上の成果を獲得すること」なのに対し、プロダクトチームのゴールは「利用されるプロダクトを開発すること」、つまり目指すゴールがそもそも全く異なることです。

 

この問題を解決する協業アクションは実はシンプルです。

 

具体的には、サクセスチームとプロダクトチームのメンバーが、1-2日オフサイトなど集中できる時間をつくり、一緒に議論しながら理想カスタマーの人物像と成功への道のりを協働で1つ作り上げることです。書くとシンプルですが、実行すると想像以上に辛い時間です。なぜなら、もともと互いのゴールやレンズが違う上、使用する言葉/プロトコルも違うことが多いため、最初に言葉合わせから時間を割く必要のあることが多いためです。

 

でもメリットは絶大です。「3」を正しく行えば「1」と「2」に大きくプラス影響するからです。

 

4)プロダクトチームとサクセスチームとが共有するゴール指標を最低1つ設定して進捗を定期的に確認しあう

 

「3」がスタート地点をすり合わせる方法とした時、「4」は目指す所をすり合わせる方法です。

 

一般的に、プロダクトチームのゴールはプロダクト/機能の開発件数や上市件数、開発スケジュール遵守率など、プロダクト関連の指標がメインです。とても重要かつ必要な指標ですが、サクセスチームとの協働という点では残念ながらあまり役立ちません。

 

カスタマーサクセスは1人2人の個人技でなく組織能力です。組織の力学・モメンタムを正しく作り、誰が担当しようとも、あるいは誰か1人のスーパーマンに頼らずとも成果をだせる組織能力を構築することがとても重要です。その最たる方法が、経営指標の運用です。

 

理想的には、会社のあらゆる部門が共有する経営指標の元にサクセスチームとプロダクトチームが足並みを揃えることです。しかしそういったアンブレラ指標は往々にして売上や利益といった上位概念で設定されることが多く、それらが各部門に落ちた瞬間、それぞれの部門独自の指標に読み替えられることが多いです。

 

そういう落とし穴を避ける具体的な方法は、サクセスチームとプロダクトチームが直接話し合い、共有するゴール指標を最低1つ設定することです。

 

一般的に設定される共有ゴールは以下3レイヤーのどれかです:

(1) アダプション
(2) アウトカム(成果・成功)
(3) カスタマー体験

 

(1) ? (3) のどこに注目するかは各社時々の状況次第です。重要なのは、なぜそれをゴールに設定することが重要なのか、を両チームがきちんと話し合い、互いに腑に落ちた上で共有ゴールとして設定することです。

 

更に、一旦設定した後は一緒に進捗を確認し合うことがとても重要です。そうすることで、サクセスチームとプロダクトチームが常に同じ課題意識を共有し、将来に必要なことを議論し合えるのです。

 

5)カスタマーサクセスの会社における地位を上げる

 

これも「4」同様に組織レベルのアプローチです。

 

この方法の意義はマルケト社CEOのスティーブさんの言葉を引用するのが早そうです:

“(組織横断の協業を進めたいなら)カスタマーサクセスを組織の適正レベルまで引き上げる必要があります。現在弊社のカスタマーサクセスは最高執行責任者(COO)の直属です。(略)COOが組織全体を監督し、サクセスの他、開発、営業、サービス、サポートなど、あらゆる部門からのカスタマーフィードバックが彼1人の元に集まるようになっています。更にそのフィードバックは、サクセスチームだけに戻すのでなく、全事業部門に共有することで、カスタマーサクセスが正にクサビとして機能し、組織横断的に推進されるよう徹底しています。(略)重要なのは、組織の中に1人、カスタマーサクセス部門からフィードバックを得て、それをプロダクトのロードマップに反映させたり、サポート部門に反映させたりする権限を持つ人をおくことです”

 

協業が上手く「いかない」理由の最たるは、部門利害が衝突し残念ながら意見が割れるケースです。そういう時は利害を交通整理する役割(人)が絶対的に必須で、その役割を担うべきは基本的に経営職であり、かつプロダクトとサクセスの両方を中立で見渡せる人が理想です。

 

ほとんどの会社でプロダクトチームの親分は経営職です。一方、あなたの会社のカスタマーサクセスチームの親分は経営職ですか?仮に経営職の方がカスタマーサクセスを管掌していたとしても、実質的に目くばせできていないなら、それはカスタマーサクセスの会社における地位向上余地が大きいといわざるを得ません。要は、プロダクトと対等に議論できるポジション、ないし両チームの交通整理を中立な視点でできる経営職が必要ということです。

 

以上、サクセスチームとプロダクトチームの連携を進める5つの方法を紹介しました。すべてを完璧に実行している会社は少ないと思います。ここは出来ているけどここは未だだなあ、という領域を見出し、明日にでも新たな一歩をご検討いただけるなら光栄です。

 

(以上)

 

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