カスタマーサクセスの「盲点」に注意:利用状況データの上手な活用法

ネットプロモータースコア(NPS)に関する投稿(「カスタマーサクセスの重要指標:ネットプロモータースコア(NPS)の歴史と利用法」、「カスタマーサクセスの重要指標:NPSを最大限活かす5つの戦略」)が続きましたが、NPSはカスタマーサクセスで活用する重要指標の1つでしかありません。

 

カスタマーサクセスを実践する多くの欧米企業では、NPSだけでなく、数多くの様々な指標をトライアル&エラーし、自社に最適な複数指標から構成される「ヘルススコア」を設計し、活用しています。

 

今回は、ヘルススコアに視点を広げつつ、その中の重要な1要素として「プロダクト利用状況データ」をどう活用すべきか、気を付けるべきポイントに関する記事をご紹介します。

 

特にSaaS事業の場合、プロダクト利用の詳細データを取得可能なため、プロダクト利用状況データに頼りすぎる傾向がある、とのこと、SaaSに携わる方はぜひチェックしてください。

 

注:Strikedeck社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。


 

利用状況データからカスタマーの”脈拍”を知る

カスタマーサクセスの定義に関する議論がようやく終息したようです。要するにカスタマーサクセスとは、カスタマーがあなたのプロダクトをたくさん利用することで彼らが期待した事業成果を実現できるよう、出来る限りのことをするということです。

 

しかし依然、カスタマーの”脈拍”をリアルタイムに把握するよい方法を見つけられていない企業はたくさん存在します。カスタマーへのアンケート調査は回答率が低く、ネットプロモータースコア(NPS)でさえフィードバックの量・質ともに不十分です。現状、カスタマーサクセスに取り組む企業では、カスタマーの様子をしっかり把握し続けるために、より包括的なヘルススコアに頼るようになっています。

 

SaaS事業を展開する企業はこの進化の流れの最前線にいます。彼らは、ヘルススコアのアルゴリズムを運用するために、プロダクトの利用状況データにますます頼るようになっています。

 

SaaS事業では、ユーザーがプロダクトをどう使っているかの詳細をデータで可視化できるため、ヘルススコアの算式に組み込みうる最も重要な指標として利用状況データを活用します。実際に成功したSaaS企業の多くでは、利用状況データに基づいて、プロダクトロードマップを作成したり搭載予定の新機能の優先順位付けをしたりすることを基本とした、プロダクトフィードバックループを確立しています

 

利用状況が最高によいのにチャーンするカスタマー

利用状況データはとても有用なデータですが、カスタマーサクセスの最重要指標として利用状況データのみに頼ってしまうと、カスタマーサクセスの「盲点」が発生するので注意が必要です。

 

実は、カスタマーがプロダクトを最高頻度で利用してくれてもチャーンが発生するリスクは存在します。

 

そういう事態が起こるシナリオ:
・プロダクトを使ってやりたかったことはすべて達成し、克服すべき山/課題はもうなくなったとカスタマーが感じた時

・支持してくれていた上級職者が組織を離れ、新しいステークホルダーが自社プロダクトとは違うお気に入りのプロダクトを持ちこんだ時

・プロダクトロードマップが全然ワクワクするものではなくなった、またはベンダーがプロダクトの革新を止めたなとカスタマーが感じた時

・カスタマーとベンダーとの直近のやりとりが良い形に進まず、課題を残すものになった時

・ベンダーがプロダクトの達成したROIを証明できない時

・支持してくれていた上級職者にとり、プロダクトを利用し続けることの優先度がぐっと下がった時

 

利用状況が低調なのにチャーンしないカスタマー

同様に、プロダクトをフル利用せず限定的な機能しか利用していない、あるいは契約シートのすべてが利用されていないカスタマーでも、契約を更新してくれる可能性があります。

 

そういう有難いシナリオ:
・そのプロダクトのベンダー自身がとても魅力的で、カテゴリーリーダーだとカスタマーが思っている時

・プロダクトをもっと利用する必要があるとカスタマーが自覚している時

・カスタマーの組織文化に沿う形で利用度合が向上する場合

・カスタマーとベンダーが非常に良好な関係を構築している時

 

ここで非常に重要なポイントは、利用状況データと合わせて、カスタマーの関与度合やカスタマージャーニーの状態を継続的に追跡し、契約更新とエクスパンションにつなげるカスタマーワークフロープロセスを構築する必要があるという点です。

 

優れたカスタマーサクセス戦略は、望ましいカスタマー体験をよく理解し、価値向上に繋げる取り組みを計画し実行することです。利用度に基づく指標に頼りすぎるとこの点がよく見落とされてしまいます。

 

カスタマーの関与度、ROI、その他のKPIをしっかりモニターすることで初めて、カスタマーの現状を背景とともに正しく理解することができます。重要視のされ方がピークに達しているとも思える利用状況指標への傾斜の裏で、カスタマーサクセスに関する他の重要なKPIを過小評価している企業が非常に多いことに驚きを隠せません。

 

カスタマーとよい関係をもち続ける

カスタマータッチポイントを設計する目的は、カスタマーが期待した事業成果に向かうよう仕向けることです。カスタマーとのあらゆるやり取りは、カスタマーがプロダクトを利用し始めた時よりもプロダクトに対して良い印象をもつことに繋がる必要があります。

 

まずはカスタマージャーニーをマッピングすることから始めましょう: 理想的なカスタマー体験のエコシステムを確立するには、カスタマーのライフサイクルをよく理解する必要があります。カスタマーが成功するとはどういう状態なのか定義し、カスタマーが成功したかどうかを検証するデータを特定します。

 

営業チームからの引継ぎ時やオンボーディング時だけでなく、カスタマーのライフサイクル全体を通じて彼らの目標やマイルストーンに関する情報を継続的に収集しましょう:アンケート調査やNPSのようなカスタマーからの明示的なフィードバックに加え、ブランドやプロダクトに対してもつワクワク感についての暗黙的なフィードバックもしっかりモニターすることが重要です。

 

カスタマーとのあらゆるミーティングやオフィス訪問は、暗黙的なフィードバックを収集したり、会話のトーンや感情表現を観察したり、組織やその他プロダクト利用の背景に変化がないかを理解したりするのに絶好の機会です。カスタマーの発言内容を理解するだけででなく、大きな声で表現されていない微妙なサインを観察することからも、非常に有用なヒントを得ることができます。

 

会社レベル、サブスクリプション契約レベル、各ユーザーレベルでのそれぞれのヘルススコアに関する生データ、トレンド、変化は、カスタマーサクセスにおけるコアですが、他の重要な要素から目をそらす「盲点」」を作らないよう気を付けましょう。常にデータを適切な整理し、カスタマーの利用状況の裏にある背景事情を把握できていれば、カスタマーの全貌を見失わずにすみます。

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