カスタマーサクセスのテクノロジー事情 (1)

英語圏でカスタマーサクセスに携わる人なら必ずメンバーになっている組織はどこだと思いますか?答えはその名もずばり↓です。

 

カスタマー サクセス アソシエイション (CSA)

 

私も勉強したての頃「ここ登録マストだよ」と米国の友人に言われ、以来メンバーとしてライブラリの資料で勉強させてもらってます。

 

創業者マイケルさんが運営されるフォーラム The Customer Success Forum (2017年10月現在メンバー 25,000人)は、メンバー同士が気軽に質問・相談できるオンラインコミュニティですが、回答コメントが実践的で役立つので、ここのメンバーになってから私は毎日 Linkedinをチェックするようになりました。

 

今回はCSAのライブラリ資料をご紹介します。米国でカスタマーサクセスという言葉がバズる前の2014年にマイケルさんが書かれた記事ですが、今でも全く陳腐化していません。

 

日常カスタマーサクセスを業務として実践している人に限らず、その周囲の方にカスタマーサクセスや関連テクノロジーを活用することの意味やメリットを説明するのに大変役立ちます。実はこの資料、CSAメンバー限定なのですが、マイケルさんに直接お願いし和訳の許可を頂きました。

 

注:Mikael Blaisdell & Associates, Inc. Mikael Blaisdell氏の許可を頂き原文の和訳を紹介します。


 

カスタマーサクセスのテクノロジー事例

クラウドの世界に暗い影がたちこめつつあります。今や、ものすごい人数に増えたSaaS企業の経営者や投資家の中には、それに気づき始めた人が増えはじめています。”キラーアプリ”をつくり、躍起になって新規顧客を獲得するだけではもうダメです。サブスクリプションモデルにおいて、営業サイクルに終着点はありません。継続的に利益をだすため、そしてSaaS企業として長期にわたり最大の成長率と企業評価を達成するめ、カスタマーとの関係をできるだけ長く維持しなければなりません。ー その最適水準に至るまで。

 

そもそも変化のスピードが早いテクノロジー業界においてカスタマーを繋ぎ止めることは、仮に環境が完璧に整っていてもベンダーには常に難しい課題でした。さらに今日は他のSaaS企業との競争が急速に加速し、解約の障壁が急速に低下しており、それが課題を更に難しくしています。

 

伝統的な市場戦略や顧客獲得・維持のアプローチでは、もはや全く太刀打ちできません。契約喪失とそれに伴う売上急減の流れは、事業を存続させる上での最重要課題になっています。

 

SaaS /クラウド分野で最も一般的なリアクションは、変化に身を投じることで、少しずつ課題に対処することです。このアプローチに固有の問題は、スケールしないという点です。課題がもたらす脅威に本質的に対処するには、SaaS企業の経営チームが課題の真原をよく理解し、それに対処するための適切な戦略を策定し、正しく行動するための組織を設計しなければなりません。

 

この活動の成功要因はカスタマーのリテンションと売上拡大を目的に設計・構築されたテクノロジーを正しく採用し活用することです。

 

チャーンが生まれる理由

SaaS業界におけるチャーン水準に関する信頼できるデータはまだありませんが、チャーンの水準が上昇しているという事実は、業界全体で同テーマに関する討議が急激に増加し、チャーン関連のキーワードの数もここ数年うなぎ上りでその存在感が目立つようになった状況から見て取れます。

 

しかしチャーンの原因を見つけることはできます。カスタマーサクセスアソシエイション(CSA)が実施した調査によると、B2BのSaaS企業にとり最大のチャーン要因は以下4点です。

 

1. Disvaluation (低評価):カスタマーがプロダクトに価値を見い出せない

2. Disconnection(分断):ベンダーがカスタマーとの接点を失う

3. Disengagement(低利用):カスタマーがプロダクトを十分活用できない

4. Downturn(低業績):カスタマーの事業または企業の業績が悪化(または買収)

 

1. Disvaluation (低評価)

ソフトウェアの世界では、カスタマーの「低評価」は誰もが経験することです、特にスマートフォンでの世界ではそうです。カスタマーはニーズが叶うと思ったアプリケーションを購入した後で、それを使ったり使い方を学んだりするのに思ったより時間がかかることに気づきます。

 

伝統的な市場では、購入後に全く利用されないか、または短期間だけ使って捨てられるアプリケーションのことを「セルフウェア」と呼びました。

ビジネスソフトウェアのSaaS/クラウド時代はもっと簡単で、カスタマーがサブスクリプションの支払いを止めるだけです。この低評価シナリオでは、カスタマーが価値をどう認知するかがすべてです。本当はアプリケーションを使って収益性を上げることができたとしても、購買意思決定者がそれを認知しなければ使い続けてもらえないのです。

 

2. Disconnection(分断)

分断の主な原因はカスタマーの経営チームが変わることです。LinkedInが普及したこの時代、職場のモビリティは爆発的に向上しました。あらゆる階層のエグゼクティブが永遠に「リクルート可能」になったため、カスタマーの組織にいたプロダクト支持者をある日突然失うと同時に契約も即座に失うリスクがあります。カスタマーの人事やベンダー評価に関する連絡が、そのまま契約解除の連絡である可能性があるのです。

 

3. Disengagement(低利用)

カスタマーがアプリケーションの特徴や機能を最大限に活用できない・していないという事態は、契約解除が確実に訪れるレシピです。リテンションする最善の方法は、カスタマーがプロダクトをよりたくさん活用することで、彼らが投資からより多くのリターンを得られるようにすることです。

 

重要なのは、カスタマーが成果を出せていない時点でそれを発見することです。アプリケーションが実際に使われていないことをカスタマーの経営チームが気づいてしまった時にはもう遅く、上手くいってもライセンス数の削減に留まることを望みましょう。最悪の場合、コスト削減の目的で完全に契約を解除されます。アプリケーションが実際に使われている状況をベンダーとしてモニターしていなければ、この契約解除は警告なしでやってきます。

 

4. Downturn(低業績)

カスタマーの業績悪化(または買収)は、サブスクリプション契約へ2通りの影響を及ぼします。1つは、解雇された社員数に応じた契約 “シート”数または個々のライセンス数が減らされることです。もう1つは、費用捻出できないという理由で契約を完全に解約されることです。

 

カスタマーが他社に買収された場合、新しい親会社は、どのソフトウェアを使うのが良いかに関し彼ら独自の考えを持っていることがあります。その場合、状況変化に関する連絡が突然のキャンセル通知である可能性があります。

 

戦略的な取り組み

チャーンに対する無防備さは、カスタマーがあなたの会社のことを知り、あなたの会社とプロダクトに対して興味や期待を抱き始めた時点から始まります。彼らは期待が満たされなければ、他社サービスを検討し始めます。

 

あらゆるSaaS企業にとり、カスタマーと売上を失うリスクは、組織の中核をなす戦略に齟齬が生じた場合や、カスタマーとの関係維持の役割を与えられ全責任を負う、効果的に配置されたカスタマー担当者がいない場合に、さらに大幅に増加します。

 

チャーンの水準とそれに伴うコストの増大に対する関心の高まりを背景に、B2BのSaaS分野やそれ以外の領域でもカスタマーサクセスマネジメント(CSM)のグループ/チームが急速に増加普及しています。与えられる名前は違っても、一貫性した共通点があります。それは、本質的にチャーンを減らすことが目的であるということです。

 

急成長する新しいCSMという職種を設けることは間違いなく正しい方向ですが、単に組織のハコを新たに追加して人を雇うだけでは、長期的に持続する取り組みにはなりません。適切な戦略を実行に移すために必要なスキルが無ければ、必然的にメンバーは受身モードに終始することになります。そうなれば、非常に高くつくだけでなく、カスタマーへの対応が遅れ、関係維持に良い効果が全く出ない結果を招きます。

 

解約の脅威に備える正しい道は、まず上級経営チームがリテンションのために新たに取り組むべきことを正しく理解し、リテンションに責任を担う人を特定し、既存カスタマーとの関係に主体性を持って取り組むことへインセンティブを与え、売上の維持と最適化の視点に基づき業績評価する仕組みを戦略的に意思決定することです。

 

加えて、このリテンション責任者がどの時点から責任を持つのかを決める必要があります。リテンションに取り組むのが遅れるほど、リテンションすることは難しくなり、そのためのコストも高くなります。以下の図は、リテンションチームによる対応がより早い段階から展開されるほど、経済的利益がより大きくなるイメージを示しています。

 

 

必要な戦略的基盤を手に入れた後の次ステップはチームづくりですが、ここで最も重要な点は、リテンションという役割を正しく遂行するのに必要なツールを武装した最強チームをつくることです。

 

ソフトウェア会社が使う既存テクノロジーは有用ではありますが、重要な欠点が2つあります。

 

1つはデータのギャップです。これは、リテンションに必要なデータを収集・分析するために特別に設計・構築されたアプリケーションと機能が存在しないことから生まれます。

 

2つ目は自動化のギャップです。カスタマーがプロダクトをよりたくさん活用するよう奨励するための手段を講じられるアプリケーションがないことから生まれます。

 

カスタマーリテンションのためのテクノロジー事例

見込み客を特定して追跡し、契約クロージングするのに役立つツールは、非常によく設計・構築されたアプリケーションが山ほどあります。

 

マーケティング関連では、電子メール、ウェブサイト訪問、見本市での交流、その他の接触ポイントから見込みの高い案件を引き出すキャンペーン管理ツールがあります。その後、営業が見込み案件をサイン済み契約へと変えてくれます。このようなアプリケーションは、設計仕様に従って導入・稼動さえすれば上手く活用することができます。

 

プロセスに沿って、チームで状況変化やスケジュール変更などを追跡できます。トレーニングチームは通常、カスタマーの担当者に配信したコースコンテンツの記録を確認し、利用者別のアプリケーション学習進捗状況を評価することもあります。

 

見込み客の発掘から案件化、契約締結に至るプロセス上、テクノロジーが一貫してその進捗をモニターし契約達成に至る状況を記録してくれます。

 

でも一旦契約条件が合意されカスタマーが契約を承認したら、その後は通常どうしますか? サブスクリプション契約の期限が近づいたらチームへ警告がいくよう、営業支援システムを設定することができます。カスタマーに問題が生じて解決依頼レポートが届いたら、サポートチームのケースマネジメントシステムで問題を発生から解決まで追跡することができます。

 

人手サポートを直接提供するとコストが非常に大きくなるため、ベンダーの皆さんは可能な限り高くつく対応を避け、ウェブサイト経由の「セルフサポート」機能をいろいろ提供することに真剣に取り組んできました。

 

このような「アフターセールス」のニーズは、従来の市場で長年培ってきたテクノロジーにより十分カバーされ、そして今日のSaaS時代にも依然それは必要とされていますが、実は、もうそれだけでは十分ではないのです。

 

伝統的なテクノロジーはオンデマンド世界でのチャーンの根本的な原因を解決できません。

差し迫ったチャーンシナリオを見える化する指標に必要なデータは収集されず、そのデータを使って対策を講じるために設計された自動化機能も備わっていないのです。

 

チャーンの最大要因に係わる情報を、時に人手で見える化することもありますが、そのような方法は効果が限定的でスケールもできず、収集・分析したデータも有効に活用できない可能性があります。

 

”自家製”テクノロジーも同じです。必要な情報はすべて自社のデータベースの中にある、と思っている人がいますが、最強のCSMチームを開発する際にテクノロジーが果たす役割についてご紹介する次セクションでこの認識に深刻な欠陥があることを明らかにします。

 

必要なのは、カスタマーのリテンションと関係性を最適化する任務についたチームが容易にアクセスでき、かつプロダクトの利用に関わるあらゆるデータを適切に組み立てられる包括的なシステムなのです。

 

リテンション/ カスタマーサクセス マネジメントを担当するチームのニーズに対応したプロダクトを提供している企業は現在すでにいくつか存在し、さらに同市場への参入を準備中の企業も複数存在します。

 

そういったツールには2つの目的があります。

1つは、カスタマーサクセスマネージャー向けのもので、彼らがアカウントとのやり取りを上手く進め、必要なデータと施策を実行する能力を持つのを支援することです。

2つ目は、上級管理チーム向けのもので、彼らが戦略的な収益性の目標を設定・達成するのを支援することです。

 

リテンショングループの立ち上げとテクノロジー

多くのカスタマーサクセスマネジメント/リテンションチームは、チャーンリスクの高いカスタマーを優良カスタマーへ大転換させることを託された最後の切り札、”チャーンの火消し役”としてまずは組成されます。

 

毎日、コード赤の勃発に対処するため希少なリソースを瞬時に割り当てることから1日が始まります。どのカスタマーへ “今”電話する必要があるか? 誰が電話をすべきか? 先方オフィスへ行く必要があるか? 他部門をどれくらい巻き込む必要があるか? などです。

 

しかしこのような活動は基本的に対処療法なので、上手くいく可能性の方が低いです。皆さんのチームがこの段階なら、テクノロジーを利用する可用性は普通全くないでしょう。実施したことを追跡し、限りあるリソースでどれだけ上手くやれたか・やれなかったかを評価し、チームとして必要な手続き・方針が見つかるまで同サイクルを何度も繰り返し、全員がそれを経験して納得する必要があります。運営コストが高くつき、それによって得られる売上という形のリターンは決して満足する水準でないこともあります。

 

“チャーンの火消し役”グループの全員と経営陣が優先順位を学び、様々なタイプ・水準のリスクシナリオにどう対処すべきかを定義していく中で、いち早く問題に気づいて処法するための先行指標をどう設定すべきかについて認識を深め始めます。

 

通常、多くのチームが最初に立ち向かうチャーン要因は、Disengagement(= 低利用:カスタマーがプロダクトを十分活用できない)です。 しかし、チャーンに関する学びを踏まえ、受身の火消し活動を超えた先へ進むには、効果的な先回り行動をとるための前提要件として基本的なモニタリングツールを導入する必要があります。

 

チャーンの火消しを超えた先

SaaSアプリケーションはベンダーのサーバーに存在するため、あるアプリケーション機能の使用ライセンスがどう使われているかを、重要なデータポイントごとにモニターする機能を追加できます。しかし残念ながら、そのようなSaaSモデル “ならでは” のモニタリング機能を組み込んだシステムを設計している企業はほとんどありません。

 

そのギャップを埋めるため、ベンダーによってログインや特定のアプリケーション機能の使用状況を速やかに把握しより高付加価値な機能を利用できるようにするテクノロジーを提供しています。このようなツールを導入することで直ちに得られる大きなメリットの1つは、リテンションチームがカスタマーとのエンゲージメントポイントを関係構築の段階からオンボーディングの段階へと移行させられることです。

 

カスタマーのどの社員がアプリケーションにログインしていて、どの機能を使用しているかを知ることで、理想的な(逆に全く理想とかけ離れた)利用状況に関する非常に詳細なマップを作ることができます。

 

カスタマーサクセスチームは、このマップを既存ユーザーの段階別の行動データと比較することで、どこで・どう介入すべきかを決めることができます。通常、初めての介入やり取りを 人対人 で始めるため、最初は高くつきますが、チームが進歩し続けるにつれ、これらの初期活動の多くは自動化されていきます。

 

チャーン防止と同じテクノロジーを使って、アップセルとクロスセルの機会を見つけることもできます。たとえば、テクノロジーに精通したある会社は、カスタマーの “パワーユーザー”数を追跡しました。この数が減少した時にはカスタマーへ直ちに連絡し、パワーユーザーを新たに育成するためのトレーニングとコンサルティングサービスを打診したのです。

 

発展途上のチームが直面するチャーンの主原因は、典型的にはDisconnection(= 分断:ベンダーがカスタマーとの接点を失う)、即ち、カスタマー組織の主要な意思決定者、影響力者、パワーユーザーらとの人間関係の解消・喪失です。カスタマーの組織の重要人物の退職や移転、またはアプリケーションや他サービスへの不満状態を少しでも早く知れるほど、問題を修復できる可能性も高まります。

 

しかし行動につながる情報を取得し、その重要性を理解して、効果的に利用できる人の元へそれを届けるのは、実はとても難しいことです。

 

世の中には、カスタマーが日々何を考えどういう気分でいのるかがわかる詳細データが豊富にあります。Twitter、ブログ投稿、オープンフォーラムのコメント、アンケート回答、新入社員のプレスリリース、企業買収、新規事業のアナウンス、顧客サポート事例、会社のウェブサイトの文献リクエストなどです。

 

これらの情報源を手動で追跡するのは、技術的には可能ですが、1人ないし少人数チームで取り掛かったとしても、要する時間を考えるとそういうデータ収集方法は全く現実的ではありません。加えて手作業だと他チームメンバーへその知識・ノウハウを伝達するのが非常に難しいということもあります。

 

ベンダーの中には多様な情報ソースすべてを人手ゼロで素早くスキャンし、関心のある人 and/or 企業がその情報に基づいて行動したり、評価したりできる自動追跡アプリケーションを提供し始めています。

 

カスタマーが、あなたのプロダクトのどのアプリケーション機能を使って何をしているのかを知ったり、重要な行動や行動の見通を把握できれば、チャーンの脅威があっても対策を講じることで、結果としてチャーンの脅威を劇的に減らすこともできます。しかし、ベンダーの収益性に長期的な影響を及ぼす他の方法もあります。

 

カスタマーにとっての価値に関する質問

カスタマーサクセスの “ミッション宣言” に固執し、カスタマーがアプリケーションを使いこなせるようにするだけでは、サブスクリプション契約を更新してもらうのには不十分です。カスタマーの成果が、彼らの財務上のメリットにどうつながるかを正しく知る必要があります。

 

カスタマーがサブスクリプション契約に価値があると認識しない場合(その認識が正しいかどうかにかかわらず)、契約を継続しない理由として、そのことを引き合いに出すことはよくあります。

 

多くのCSMチームは、重要な顧客との間で四半期毎のレビューを行い、目標と進捗状況について議論する方針をとっています。このレビューでは、討議事項をより効果的に設計することで、アプリケーションの利用データをより重要な目的に利用することもできます。そのようなレビューでは、リテンション/ CSMチームは、他企業が達成した成果と自社が提供した成果を比較しますが、そのためにはデータをプロファイリングしてマッピングすることが不可欠です。

 

カスタマーのCFOにこのようなレビュー会議へ参加してもらうことが非常に効果的です。ソフトウェアのROI(投資効率)が議論される唯一のタイミングは、販売開始時キャンペーンの期間中です。

 

カスタマーのソフトウェア投資に関わる財務上の目標とその進捗状況についてオープンに議論することで、カスタマーと緊密なパートナーシップ関係を築くことができます。より緊密にコミュニケーションをとることで、カスタマーの事業全体の健全性に関わる手がかりも得られ、契約ライセンス数の削減につながる業績低迷シナリオへの早期警告情報を手にする可能性もあります。

 

更に財務成果を見える化することは、カスタマーのためだけでなく、ベンダーにとってもまた、売上の原資と収益性に関する意味合いを強く意識するという意味で大変意義あることです。

 

採算を確認する

カスタマーサクセスマネジャーにとり最も重要なデータポイントの1つはカスタマーの契約更新です。ただしリテンションチームのメンバーは、ベンダー組織内で、サブスクリプション契約の更新率や、アップ/クロスセル機会に関わる財務データへアクセスする必要がある唯一のメンバーではありません。

 

業界内のリテンション/カスタマーサクセスチームを率いるエグゼクティブが常に抱く懸念は、チームの有効性をPLベースで評価・管理するための正確なデータをどう入手するかです。

 

顧客との四半期レビューを準備・実行したり、カスタマーのプロダクト利用パターンを調査したりする活動に、どのくらい費用がかかるのだろうか? それらの活動は、事業の収益性やその他財務上にどう影響するのだろうか? そういった懸念は、企業がCSMのチームとプログラムの予算規模を大きくするリスクをとる時にのみ増加します。

 

自動化のギャップを解消する

リテンションと売上拡大に関するデータを取得することは、定着率と収益性の向上に不可欠な第一歩です。次のステップは、そのデータをより有効活用することで費用対効果を上げることです。

 

カスタマーサクセスの専門家は、広範囲な分野の専門知識を要するため一般的に高い給与を要求します。したがって、高価なリソースを最大限に活用することが重要です。チャーンに影響する重要度が高くない問題は、人にタスクを実行させるのではなく、可能な限り応答を自動化することが理にかなっています。

 

必要な時にコンテンツをカスタマーへ配布できるよう、マーケティングオートメーションと同等のカスタマーサクセスオートメーションが必要です。たとえば、カスタマーが重要なアプリケーション機能を使用し始めたタイミングで、次の機能のトライアルへ進むよう奨励メールを送るという自動施策はよく利用されています。

 

逆に、カスタマーが重要な機能を使い始めたけど停止した場合、タイムリーな電子メールを送ったり、他に利用上のヒント・ノウハウがあれば伝えるなどの対策を講じることで、その機能の利用を再開し、経験曲線を正しく前へ進んでもらうことができます。

 

すべてのタスクを人手で実行するのに必要なカスタマーサクセス要員数を確保できる企業は1社もありません。リテンションのために必要なことを適切に実施したいなら、タスクを適切に自動化することは、選択することではなく、するのが必須のことなのです。

 

成功の基盤

SaaS /クラウド企業の競争は、毎年新しいテクノロジー企業が登場するにつれ着実に厳しくなってきています。同時に、カスタマーにとっては、解約の障壁が下がり、より多くの選択肢が利用できるようになり、プロダクトの乗り換えもより円滑にできることを意味します。モビリティの低い時代に開発された従来型のテクノロジーと新規カスタマー獲得アプローチは、もはや新しいビジネスモデルの課題に対処するためには適切でも十分でもありません。

 

この新しい市場で繁栄できるテクノロジー企業は、カスタマーライフサイクルのあらゆる段階でチャーンの脅威が存在すること、そしてSaaS事業ではどんな契約締結もゴールを意味しないことを認識し、カスタマーとの関係を構築・維持するために適切な一貫した行動をとることができる企業です。

 

その成功の基盤はカスタマーのリテンションと売上拡大のニーズに対処することを目的に設計・構築されたテクノロジーを採用して活用することです。

 

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マイケル ブライズデイル / カスタマーサクセスアソシエイション

Mr. Mikael Blaisdell / The Customer Success Association

www.customersuccessassociation.com

www.customersuccesscommunity.com

www.thecustomersuccessforum.com

www.customersuccesscon.com

 

Mikael Blaisdell氏は、SaaS /クラウド部門の戦略、プロセス、人材、リテンションテクノロジー、及び顧客単位当り収益性の向上に関するソートリーダー(Thought Leader)です。サポート/サービス分野で30年以上の経験をもち、あらゆる種類・規模のSaaS /クラウド企業に対し、特にカスタマーサクセスという新興職種の分野において、幅広いコンサルティングサービスを提供した経験があります。カスタマーサクセスアソシエーション(CSA)、及び雑誌 カスタマーサクセスマガジン のエグゼクティブディレクターであり、彼のビジョンとカスタマーリレーションの最適手法に関する解説は世界140カ国以上で読まれています。

 

カスタマーサクセスアソシエーション(CSA)は、カスタマーサクセスマネジメントに関わる新しい職務につく人全員に役立つ会員組織です。世界的なカスタマーサクセスコミュニティに提供するオンラインリソースの中には、カスタマーサクセスマガジン、イベントカレンダー、約6,000人(和訳者注:2017年10月現在 約 25,000人)のメンバーを誇る LinkedInのカスタマーサクセスフォーラムカスタマーサクセスライブラリーがあります。CSAは毎年、Customer Success Con East / West / Europeのイベントを開催し、オンライン企業一覧と職業に関する主要情報源であるCustomer Success Community Mapを発行しています。

 

(C) 2017 Mikael Blaisdell – All rights reserved.

 

(原文)

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