by Orie Maruyama
2019年12月3・4日に開催される、日本初のカスタマーサクセスカンファレンス『Success4』の開催決定を記念して、協賛会社である『電通デジタル』の執行役員/デジタルトランスフォーメーション部門長 兼 ビジネスアライアンスルーム 事業部長であり、登壇予定の八木克全氏と、主催のサクセスラボ代表 弘子ラザヴィ氏の対談が行われました。カスタマーサクセスが日本にもたらす意味、そして未来にもたらす変化とは。全3回。(取材・文:丸山央里絵、ヘアメイク:江頭亮子、写真:雨森希紀)
八百万(やおよろず)の神のメンタリティを取り戻す
弘子:
話は変わって、八木さんのパーソナリティと言いますか、今のお考えに至った経緯を教えてください。
八木:
はい。僕は大学・大学院と建築を学んでいました。シンプルに言うと、建築って、行動デザインなんですよね。街や建物にどう入って、どう出ていくか。人間観察をして、「こうすると人はこう動くだろうな」というように考えることを、ギリシャ時代以降、建築に関わる者は皆やっているので。
弘子:
認知行動学の考えは、今の時代ならではで、先進的でもある。納得ですね。
八木:
大学時代から僕には、「日本の会社で美しい仕組みを作りたい」っていう思いがあったんです。世の中の人が知らないうちに動いて、かつ幸せになっている。企業や自治体など社会の意思決定するものは、そこに到達する構造にならないといけない。決裁者が判子を押すんだけれど、そこには一般大衆が幸せになるアイデアが詰まっている、っていう仕組み作りに関わる仕事ができたら、素敵だなって。
弘子:
いいですね。元々の学んできたことや指向がキャリアとして実現して、今に至って。
八木:
私がもやもやしているのは、今のサービスがテクノロジーやデータによる設計に偏っていることですね。例えばスマートシティやホームの設計には、人が幸せに生きるには、どういう行動が必要なんだろう、という視点を持つことが重要なのに、そこがおざなりになっている。
弘子:
アメリカでも昨年あたりから、「ヒューマンセントリック」とよく言われるようになりました。エンドがテクノロジー、つまりシステムが完璧に機能するために人間が作業させられる感覚を疑問視することから生まれた言葉です。そうではなくて、人間が幸せな状態になるのがエンドで、そのために便利なら使うのがテクノロジー。テクノロジーはあくまで手段であって、目的(エンド)ではないんだよ、って。
でも現実はそうじゃない。どんどん便利なシステムが入ってきて、気が付くと人間が使われている。で、長時間労働で疲れて、活力も失って、家族も幸せじゃない。
八木:
絶対的に正しいのは、エンドは人間の幸せな状態。ただ、そこをないがしろにしてきてしまった。高度経済成長期には長時間労働して、出世して、大きな家に住んで、給料やポジションも上がって、っていうのがゴールと思われていたけれど、違うよねと。
弘子:
そう、幸せじゃないよね、ってなってきている。じゃあ幸せの形って何か。それは一個じゃない。あなたの幸せは何か、ってあなたが考えること。でもそこで戸惑っている。
もちろんアメリカにも悩みはあるんですけど、でも元々が多様性(ダイバーシティ)の高い国民なので、答えが一つではないという意識はみんなにある。一方、日本はみんな同じで、正解は一つでないとダメという意識が強い。
八木:
日本には元々、“八百万の神”の考えがあった。私は都合よく、こう解釈しています。山で木の実が取れるのは山に神が宿るから、川で魚が取れるのは川に神が宿るから、自分の幸せを実現してくれる、その感謝する対象が八百万あり、人によって違ってもよい。「幸せを実現する正解は、人それぞれである」ということが、人やコミュニティのベースにあったように思います。それを今の時代らしく実現することかと考えています。
弘子:
そうですね。八百万の神のメンタリティで、自分の、それぞれの、幸せがあるという世の中に、私もしたいです。
八木:
僕はそれ、最近いけると思っていて。“所有”の時代は、言ってしまえば3つぐらい大きいモノを買う、っていうことで人の一生が終わっちゃったので。
弘子:
家と車ともう一つ。
八木:
で、日本って全体主義的な感じになったと思うんです。けど、 “使用”の時代になってくるとそれぞれの単価はそんなに高くないので、モノをどう組み合わせるかというのが、その人の選択であり、生き様になる。なのでこの、“所有”から“使用”へという変化は、大きなダイナミズムを持つと思うんです。
弘子:
でも人間って、選択肢が多いと不幸を感じるんですよ、逆に。だから、そこは揺り戻しもあると思うんですけれど。
八木:
そこはコミュニティと背景にあるカルチャーを際立たせることに解決策があるんじゃないかって僕は思っていて。ここは説明できるよう、『Success4』当日までに何か資料を用意しておきます。
身近なところでは、『バルミューダ』のようなソーシャルコミュニティ側からモノが売れ出す現象ですね。水蒸気で美味しいパンが焼けるトースターで、3万円ぐらいするんですけど。
弘子:
高いですね!
八木:
毎朝の美味しいパンを食べる時間を大切にしたいよね、っていう。朝食は毎日あるのだから、トースターが高いか安いかは、時間の積み重ねで考えようと。
弘子:
毎朝、幸せな時間を過ごす、ということ自体に価値があるっていう話ですね。
八木:
はい。今コミュニティは、変わってきている。これまでは、あなたはここに入るべきである、という社会の規範としてのコミュニティの世界、その最たるものが会社組織だったとすると、これからは価値基準のコミュニティになっていく。
「朝に美味しいパンを食べることが何より大切」と思う人のコミュニティがあって、一つでなく複数の色んなコミュニティに入っていいし、合わなくなったら抜ければいい、そういう感じになっていくんでしょうね。僕はその時に、日本人は自由になれると思うんです。
(後編につづく)
日本初のカスタマーサクセスカンファレンス『Success4』2019年12月3日(火)・4日(水)開催!
『キャズム』『ゾーンマネジメント』著者であり組織理論家のジェフリー・ムーア氏、Box CCO兼上級副社長 ジョン・ヘルシュタイン氏、日本IBM 取締役兼CCO 荒川朋美氏を始め、世界のカスタマーサクセス最前線を切り拓いているリーダーたちが多数登壇する、日本初のビッグイベント Success4 が、ベルサール渋谷ファーストで開催されます。
デジタル社会の到来とともに今、あらゆる業界で「モノ売り切りモデル」から、「リテンションモデル」へと軸足がシフトする中、購入してもらうことではなく、購入を通してカスタマーに本当の「成果・成功」を手に入れてもらうことを成功に導く考え方が「カスタマーサクセス」。
あなたも『Success4』でぜひ、変化のきっかけを掴んでください。
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(以上)