Reproにてカスタマーサクセスの本質を学び、自ら組織づくりや実践を通してカスタマーサクセスの市場づくりに挑戦してきた岩田。「SuccessGAKO」の講師として感じる受講生の変化と、これから届けていきたい価値を自身の言葉で語ります。
スタートアップで学んだカスタマーサクセスの本質
私のカスタマーサクセスとしてのキャリアは、SaaSスタートアップ企業Reproとの出会いから始まります。
その頃のReproは、まだ20名ほどのスタートアップで、オフィスはマンションの一室。しかし代表の平田は当時から「グローバルでNo.1の会社になるぞ」と意気込んでおり、学生だった私は衝撃を受けました。
“最も難易度が高く、挫折しそうな会社”であり、修行の場を探していた私にとってそこはうってつけの場所。学生インターンとして参画する覚悟を決めたのでした。
それからはオフィスに寝袋を敷いて寝泊まりするくらい仕事にのめり込む日々。しかし、当時のプロダクトは、導入企業の活用度が低く、最も活用して欲しい機能が10%程度しか活用されていないような状態でした。
「これでは、お客様のビジネスに貢献することなどできない」そう考え、お客様をグロースさせるための組織「カスタマーグロースチーム」を作りました。これが、カスタマーサクセスチームの前身となる組織です。
お客様の状況をヒアリングして、利用データをReproで分析。課題を洗い出し、それを解決できるReproを使ったマーケティング施策をプランニングして提案していきます。お客様のサービスを触り倒して、もっとこうしたらサービスが伸びるんじゃないか。ああでもないこうでもないと、サービスのグロースに必要なことを提案資料に落としました。
そんなある日、ふと代表の平田がやってきてこう言いました。
「Reproのツール自体に価値はない。顧客の成長に貢献することに価値があるんだ。」
この言葉を聞いて以来、「どうしたらお客様のビジネスを伸ばすことができるだろう」「そのためには何が課題で、お客様は何に困っているのか」ということを、常に考えるようになりました。
当時はまだ言葉として意識していたわけではありませんが、今振り返るとそのときに”カスタマーサクセス”という考え方の本質を学んだような気がします。
緑本をきっかけに踏み出した未来へのアクション
しかし、2018年頃に私はカスタマーサクセスの“緑本”とも呼ばれる『Farm Don’t Hunt』を読んで大きな衝撃を受けることになります。
この本には、私たちが試行錯誤の末に手にした結論が、全て書いてあったのです。
当時、一切情報がない中でお客様と向き合いながら自分たちがオンボーディングプロセスの重要性を発見したと本気で思っていたのですが、そうした“オンボーディング”についても当たり前のように書かれていました。それだけでなく、将来どれくらいの組織規模になるのか、どういうチーム構成になるのかも事細かに書いてあるのです。
このことに大きな衝撃を受けました。しかしそれと同時に、「未来が見えた」とも思いました。
ただとにかく悔しかったのは、この本が2016年に出版されていたこと。私が手にする2年も前に世に出ている。これは、出版のさらに数年前(2012年~2015年)に数多くの企業が既にカスタマーサクセスを実践していることを意味していました。
このタイミングで、グローバルで通用するように、組織名を「カスタマーサクセス」へ変更しました。
当時、カスタマーサクセスは日本ではほとんど誰にも知られていない概念でした。しかし、「将来、30人ほどのチームになる」と緑本には書いてあります。自分たちの組織には、まだ5人もいないのに。「どうやって採用すればいいんだ…」危機感が募りました。
将来の30人体制を見据え、今からカスタマーサクセスの認知を作り、「カスタマーサクセスといえばReproだよね」と言われるような、第1想起されるポジションを作っておかなければ、将来、仲間を集められないことは明白でした。
そう考えた私たちは、カスタマーサクセスの組織づくりに取り組み、ノウハウを発信することで、日本のカスタマーサクセスを盛り上げ、市場づくりに挑戦していったのです。
世界との差を痛感し、カスタマーサクセスに託した希望
緑本によってカスタマーサクセスの組織づくりを本格的に開始していった私は、2019年、サンフランシスコで開かれたカスタマーサクセスのカンファレンス『Pulse』に参加しました。
そのときにまず驚いたのは、登壇者の半分が女性であったことです。驚いている自分にびっくりしてしまったと言う方が正しいかもしれません。
この世界との差に、自分たちが世界水準に遠く及ばないことを痛感させられました。
もう1つ衝撃を受けたのは、ある大学の教授がカスタマーサクセスのヘルススコアに関する研究結果を発表していたこと。日本のビジネスのカンファレンスでは、ほとんど見られない光景です。しかし、向こうでは、産学連携してカスタマーサクセスという市場を築こうとしていました。ビジネス側が事業を作り、それを研究者側が研究して体系化し、還元する。そういったエコシステムができあがり、ノウハウの流通が加速し、まさにその瞬間にひとつの産業が誕生しようとしていました。感心すると同時に、僕らはこのエコシステムに追いつけるのだろうか、と大きな危機感を覚えました。
それから少し経った頃に、「CSの書籍を教材にした勉強会をやりませんか?」と声をかけていただいたのが、弘子ラザヴィさんでした。
しかし、ただの勉強会ではなく「お客様に真の価値を出してもらうためにはどうすればよいだろう」と議論しているうちに、「実践カスタマーサクセス」のコンセプトが生まれていったのです。
多くの日本企業がカスタマーサクセスに取り組むようになればこの国は変わる。そして数は少ないものの、これからカスタマーサクセスに挑戦しようとする人達が既にいる。そういう人たちが活躍し、お客様に本質的な価値を提供できるようにビジネスを変えていく機会を提供したい。そして、その人自身の人生が好転するような場にしたい。そう強く思いました。
こうして私は、SuccessGAKOの講師としてお手伝いさせてもらうことになったのです。
SuccessGAKOで体感した受講生の変化
先日、SuccessGAKOの「実践カスタマーサクセス」終了後の発表会で、1人の修了生が発表をしてくれました。
受講前、彼女は「カスタマーサクセスは解約させないこと」がミッションだと思っており、講座でも”解約させない技術”が学べるものと勘違いしていたそうでした。
しかし、初回の講義でいきなりその考えが打ち砕かれてしまった。「カスタマーサクセスって、お客様の成功を実現する組織だったんだ!」と、すっかり認識が変わってしまったのだと言います。
カスタマーサクセスの本質に気づいた彼女は、新卒入社1年目にもかかわらず、上司に「このサービス形態ではお客様に成功を届けられない。サービス形態そのものを変えたほうが良い」と提案。なんと数ヶ月後、本当にそのサービス形態が変わり、そこから売上がグンと伸びたと言うのです。
彼女は最後に、「カスタマーサクセスの本質が知れて、とても救われました」と言ってくれました。
彼女に勇気を与えたのは、「顧客の成功」を希求するカスタマーサクセスの思想そのものでした。
お客様の成功やヒューマンファーストをシンプルに突き詰めることが、自社の売り上げに繋がる。これは実際、よく起こることです。純粋にお客様のためを考え、実行することで、おかしなやり方で無理に売り上げを立てようとしなくてもよくなります。これで救われる人は、実は結構多いのではないでしょうか。
長期的に人生のLTVへと貢献ができる場へ
SuccessGAKOは、講師が一方的に教える場ではありません。仲間と共に学び、勇気を得て、実践につなげるための場です。
もちろん講義で知識を得ることはできますが、それよりも、仲間と共に学びあえる体験にこそ、大きな価値があります。仲間の頑張りを見て、自分も奮起する。そのような場や体験価値を提供できるよう、引き続きプログラムを磨き込んでいきたいと思っています。
そしてSuccessGAKOでもカスタマーサクセスを目指していきたいです。
カスタマーサクセスとは長期的な価値に貢献する姿勢だと考えています。
短期的に「勉強になった」ではなく、受講生のマインドが少しずつ変わり、一歩を踏み出し、価値創造に挑戦して頂くことです。更には「今から数年前、あのときにSuccessGAKOに参加してよかったな」と思って頂けるように、人生が長期的に豊かになることだと思います。
そのような価値を受講生の方に純粋に届けていきたいです。
Text by Kazue Inada / Edited by Keita Kubo
▼カスタマーサクセスに挑戦する人が、知恵と勇気と仲間を手にする実践者コミュニティ「SuccessGAKO」
SuccessGAKO(サクセスガッコウ)は、日本のカスタマーサクセスの未来を作る変革リーダーを輩出するための学び場です。カスタマーサクセスを追求するビジネスパーソンが、知識や知恵を学び、考え、実行することで、自社、顧客そして自身も成功することを目指します。経験豊富な講師陣による集中講座と、メンバー限定コミュニティにより、一方的に知識を伝授するのではなく、仲間と切磋琢磨しながら「実践」することに価値をおいたプログラムを提供します。
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