Pulse 2018 開催中にアップされ、開催後にカスタマーサクセスリーダーの間でとても話題になった記事を紹介します!
題して「カスタマーサクセス、アイデンティティ喪失の危機」 …!!!!
何やら否定的かつ不安な匂い満載ですね(笑)。でも読み進めると、カスタマーサクセスの真価をズバっと言い切っていて、凄く力強い肯定的な記事なのがお分かり頂けます!
影響力を秘める新しい概念が世に登場する時は常に、ガートナーのハイプカーブよろしく、アップ&ダウンがあるものです。その道中は玉石混合で、中には “微妙”なもの、偽モノが混じるのも世の常です。カスタマーサクセス先進国の米国で、そういう議論が注目を集めているのは大変興味深いです。
これからハイプカーブを猪突猛進する日本企業の皆さんにぜひご覧いただき、先回りして危機回避してほしいです!
注:Gainsight社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。
カスタマーサクセス、アイデンティティ喪失の危機
私は、カスタマーサクセスがここ数年にわたり新しい哲学的信念、規範、機能として台頭し、多大な関心と興奮を集めながら興隆するのを観てきました。
カスタマーサクセスのコア、即ち、あなたのカスタマーにカスタマーであり続けてもらい更に買い上がってもらうための鍵は、カスタマーがそのプロダクトを使って達成したい事業上の目標ないし測定可能な事業上の価値に紐づけて支援することである、という考えは素晴らしいものでした。
更に、カスタマーがプロダクトを利用してよい仕事をするのに必要な手助けをする、というのも、私企業が事業を展開していく上で正に実施したくなる魅力的な仕事でした。
私は、カスタマーサクセス界の先端をいくリーダーが発する示唆にあふれた意見に耳を傾け、彼らと何度も意見交換してきました:
彼らはカスタマーサクセスの基本を 非常に明確に描写し、自身の経験に基づきどう実行すべきか具体的な事例を共有し、それが時の経過と共にどう革新してきたのか説明してくれました。
しかし、カスタマーサクセスの世界ですべてが上手くいくわけではありません。考え方や実務がどんどん浸透し、レベルアップし、スケールしていく会社がある一方で、失敗や挫折を重ね続ける会社もあります。
こんな疑問を抱いている人は多いのはないでしょうか。
「カスタマーサクセスは今が旬のピークかも?」
「もしや、今まさに幻滅の谷間に向かっているのだろうか?」
2つ目の質問に対する私の答えは、「Yesであり、Noでもある」です。
以降、少し説明します。
あくまで私見ですが、ある企業がカスタマーサクセスの考え方に大いに賛同し、勇んで着手したけど、残念ながら本質を誤解し、かなり残念に間違って推進し始めた、まさにその瞬間に問題が生じました。
その後、「カスタマーサクセス」という言葉がバズって流行語になり、あらゆるソフトウェア会社のポストセールスチームが、仕事の中身やカスタマーへのアプローチをほとんど変えずに、単に名前を「カスタマーサクセス」ブランドへと変更したその時に、問題が更に悪化しました。
極めつけは、ベンチャーキャピタル(VC)がシリコンバレーのソフトウェア会社に膨大なリスク資金を注入した時に、問題の火に油が注がれました。
つまり、「カスタマーサクセスをすればチャーンが減る」とだけ盲目的に信じきったスタートアップが、カスタマーサクセスチームの運用モデルやコストモデルを深く熟慮することを一切せず、手にした大金をカスタマーサクセスマネジャーの採用に投入したのです。
結果は… 今まさに私たちが直面している「カスタマーサクセスのアイデンティティ喪失」問題です。
今後数年で、偽モノと本モノが明快に分離されることでしょう。
失敗する「カスタマーサクセス」モデル
偽モノのカスタマーサクセスをご紹介します。ここでいう「カスタマーサクセス」は、どれ1つとして本質的に正しい考え方とは相容れない、全く違う偽モノです!
1.? ホワイトグローブモデル
カスタマーサクセスマネジャーを、あなたのカスタマーを最上級客として扱うための白い手袋と位置づけ、カスタマーに過度に奉仕することを旨とするモデルです。
この場合、カスタマーサクセスマネジャーの人数はカスタマー企業数に比例して増え続けます。
2.? チャーン対処療法モデル
チャーンに対処しようとカスタマーサクセスマネジャーを採用し、問題の所在(過剰営業している、カスタマーのニーズとプロダクトに差がある、など)を明らかにして満足する(だけで終わる)モデルです。
この場合、カスタマーサクセスの費用対効果を再評価する必要があります。
3.? ばんそうこうモデル
カスタマーサポートや、プロフェッショナルサービスといった、従来からある伝統的な機能組織・役割を、「わが社もカスタマーサクセスを推進するのである!」との号令と共に、「カスタマーサクセス」という名前に変える(だけ)のモデルです。
4.? ベンチャーファンド資金投入モデル
年次定期収益(ARR)、リテンション、グロースといった収益インパクトとカスタマーサクセスとを結びつける財務計画がなく、カスタマーへ高い価値をどう提供するかという計画もないまま、VCから得た資金を「カスタマーサクセス」へ全力で注入するモデルです。
5.? 何でもするが何もしない屋モデル
オンボーディング、トレーニング、サポート、NPS管理のすべてを統括する1人のジェネラリストが、実際は何の責任も負わないカスタマーサクセスマネジャー集団のチームをリードするモデルです。
本モノのカスタマーサクセス
本モノが備える特徴は以下の通りです。
1.? リテンションとグロースに直結する
ARR、リテンション、グロースへ与える収益インパクトこそが、カスタマーサクセスの究極の価値評価尺度です。
その他の指標、即ちオンボード、NPS、アダプションなどは、究極の尺度を因数分解した従属尺度であり、究極の尺度を構成するインプットです。そして各指標には、達成責任を担う1チーム、統括が明快に割り当てられています。
2.? 事業価値とROI(投資対効果)を愚直に追求する
カスタマーがあなたのプロダクト(ソフトウェア)の購入を意思決定した際の投資採算計画、またはROIモデルは、カスタマーがプロダクトを利用して期待成果をどれだけ得たか測定する基準と直接紐づいています。
そしてそれこそが、カスタマーサクセスチームが存在し活動する唯一の目的になります。
3.? 財務的な健全性が担保される
カスタマーを支援する人材・サービスは、あなたの事業の粗利や、サービスの収益性、リテンション率が健全な水準範囲に留まるよう計算された上で適切に資金投入されます。基本的に、ポストセールスの人件費は、単独採算の合う有料サービスとしてカスタマーから資金を頂くか、そうでない場合はエクスパンション目標を達成するための営業&マーケティング費用として賄います。
4. スケールする
一般的に企業は、人材、プロセス、テクノロジーをテコに規模を飛躍的に拡大していくことを予定します。セルフサービスのコンテンツ、手順書、コミュニティ、サミット、トレーニング、自動コミュニケーションなどは、あなたの会社の”人”が提供する専門知識を補完します。
5.? 経営チームに対し結果責任を明快に可視化する
先述したリテンションやグロースの指標は取締役会への説明責任を伴います。取締役会やCEOは、ARRを最大限成長させるために会社のリソース配分を調整する権限があるのです。
はたして、直近5年超の間に大量採用されたカスタマーサクセスマネジャーは、上記に照らし正しい仕事をしているでしょうか?
私の知る限り、下記の鉄板2大スキルのうち1つでも備えているカスタマーサクセスマネジャーは、優れたカスタマーサクセスマネジャーと言えそうです。
2大スキルの1つまたは2つとも備えていないカスタマーサクセスマネジャーは、早々にレベルアップする(または「生き残る」というべきかもしれません)ために、 不足スキルを習得することが必須です:
1. コンサルティングスキル
カスタマーが あなたのプロダクトを活用し事業成果を達成する上で非常に重要かつ致命傷となる課題を特定し、問題解決にむけた最善の方法を見出す能力(最善の使用法ではない)。
2. 事業(営業)スキル
カスタマーの経営トップ(CXO)クラスの意思決定者や他の重要な影響力者と連携し、カスタマーがあなたの会社とパートナー関係を維持・拡張してもらうよう商談をハードに展開できる能力。
あまりにも多くのスタートアップが、未経験だったり初級レベルの人材を大量に採用し、彼らにカスタマーサクセスマネジャーの役職・役割を与えながら、しっかり教育してスキル開発させることを怠り、結果として上述の偽モノなカスタマーサクセスに成り下がっていく、という流れが、現在のカスタマーサクセス界が抱える欠陥です。
更にその結果として、偽モノに巻き込まれたカスタマーサクセスマネジャーはどんなに経験を重ねても、ある時点で残念なことにキャリアアップの天井にぶち当たります。
理想は、所属する会社のカスタマーサクセス実務が進化するのに伴い、カスタマーサクセスマネジャーも上述の鉄板2大スキルを磨いて身に着けていく、というのが私の期待するところです。
最後に
先の質問に戻りましょう。「カスタマーサクセスは 幻滅の谷間に向かっているのだろうか?」
あなたは今、なぜ私が「 Yesであり、Noでもある 」と答えたかお分かりですね。
No、なぜなら、カスタマーサクセスこそ収益インパクトを牽引するものであり、成功に必要不可欠なものだからです。
Yes、カスタマーサクセスの戦略とアプローチが、カスタマーに真の成功をもたらすという本来の使命に沿っていない場合、あなたの事業はもうオシマイ!だからです。