CCOコミュニティのつくりかた

カスタマーサクセスの世界最大イベント「Pulse」を主催する Gainsight社 をご存知の方は日本でも増えつつありますが、毎年Pulseの数か月前に”CCOサミット”という経営層クラスに限定した招待制イベントが開催されているのを知っている人はとても少ないと思います。

 

米国でのCCOサミット成功体験に基づき、欧州でCCOサミットを開催したGainsightダンさんのレポートを紹介します。対象限定の濃いコミュニティを成功させる秘訣が詰まっています!

 

注:Gainsight社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。


CCOサミット ヨーロッパでの学び

 

今年2018年、米国で4回目のCCO(チーフ カスタマー オフィサー)サミットを開催しました。結果は、驚くべき大成功でした!なんと NPSが 85から 94にはね上がったのです。そこで私たちは欧州でもCCOサミットを開催することにしました。

 

欧州各地で活躍するカスタマーサクセスのリーダー40名以上が、英国はホーシャムに遠路はるばる集まり、サウスロッジのホテルで1日半のイベントに参加しました。参加者の顔ぶれは、社員20名の会社、ARR 2百万ポンドで社員1万人以上の会社、売上が数十億ポンドの会社の経営者などです。

 

同イベントは、欧州カスタマーサクセス界において特筆すべき素晴らしいイベントになりました。集まった顔ぶれの中で、両極端なタイプの会社の人同士でさえ共通の課題意識を持っていることが判明したのです。

 

特に大企業の人たちは、ビジネス世界を一転させる爆速変化する技術動向の専門知識を持っている中小企業の人たちと話すことに高い関心を持っています。

 

CCOサミットは、他の一般的なイベントと全く異なります。有名スピーカーや専門家のパネルを総動員して大勢の出席者を引き付ける必要がありません。実際、議題だけで判断すれば、おそらく誰も来ないでしょう。

 

しかし、真に重要な論点を議論するのに最適な人が集まると素晴らしいことが起こるのを、私たちは何度となく経験しました。それこそがCCOサミットで発見したことです。その点を、私は出席者の方がたに心から感謝しています。彼らは議題を見て参加する気になったのでなく「あなたこそ参加する意義があります」という私たちの招待に価値を見出してくれたからです。

 

今回は、私がCCOサミット ヨーロッパから学んだことを紹介します:

 

1)適切な人 + 適切な環境 = マジカルなことが起きる!

 

適切な人たちが、サウスロッジのような会場に一堂に介すると本当にマジカルなことがおきます!それほど、真の仲間と言える人同士が安心して議論できる環境は貴重です。欧州でカスタマーサクセスはまだ新しいため「こういう議論に飢えていました!」という言葉を難度も耳にしました。私たちが取り組む壮大な課題は、唯一の絶対的な答えがないものばかりからです。

 

CCOサミットは商業的側面を極力排除しました。Insided社、N3社、ServiceSource社の3社にスポンサーになってもらいましたが、商業ブースはおかず、セールスピッチもありませんでした。私も自分のスライドをすべて見直し、Gainsightという文字を見つけたはじから全て削除しました。

 

CCOサミットは、カスタマーサクセスのムーブメントや哲学について議論する場であり、特定の企業やベンダーについて話す場ではないのです。CCO同士が顔を見合わせ学び合うために同じ部屋へ集まるのであり、個別ソリューションについて他人が説明するのを聞くために集まるのではありません。

 

それは、売り込み行為を一切排除したイベントだけがもつ安心感という名の魔法です。参加者は皆、カスタマーサクセスのコミュニティをより良いものにしたいと思って集まるのです。

 

非商業アプローチを更に強化するため、イベント主催者もGainsight社の人間でなくしました。その大役を完璧に果たしてくれた Nicola Mannに感謝します!

 

特別なイベント特有の議論をもとうと思うと、その規模はとても重要です。価値ある場にするには親密さが必要で、小規模に保つことがとても重要です。米国では最初は50人からスタートし、2年間で200人の規模に成長しました。しかし、200人は多すぎたため、今年2月のサミットは150人に戻しました。

 

理想的な数字が何人かは分かりかねますが、1人ひとり厳選し、個人的に招待したシニアレベルのリーダーだけの小規模グループでなければならない、という点だけはハッキリしています。

 

2)同じ目線の仲間同士を集めることがとても重要 &とても難しい

 

CCOサミット開催中の大半の時間は、小グループ(6〜8人)単位のテーブルで過ごします。同じテーブルに競合企業が同席しないよう、まず確認することから始め、慎重にグループ分けをすることが重要です。そこを間違ってしまうと、イベントの安心感と透明性が一気に失われてしまいます。

 

では一体、「誰と誰が同じ目線の仲間か?」をどう判別したらよいでしょう?この問は、主にタイトルの問題ではなく会社セグメントの問題です。しかしその変数は多岐にわたるため、答えを見つけるのはかなり難しいです:

 

・会社の規模
・カスタマーサクセスチームの規模
・エンゲージメントモデル(ハイタッチ、テックタッチなど)
・ACV
・カスタマーのタイプ(SMB、エンタープライズなど)
などなどリストは続きます

 

繰り返しますが、正しい答えはありません。

 

私たちは今年は会社の規模でグループ分けしました。結果は、概ね上手くいきました。その要因は、各人が全出席者とお喋りするのに必要な時間と場所をたっぷり用意したためです。

 

一方、来年は違う視点でグループ分けしてみようと思わせるフィードバックも集まりました。具体的には、規模などの社会的条件が同じでも、各事業が抱えている経営課題は必ずしも同じではないという点です。

 

これは次の3つ目の学びに直結します。

 

3)適切な論点(トピック)を設定することが重要 &それほど難しくない

 

小グループ討議の進め方は、まず小グループ単位で特定トピック1つ?複数について議論しあい、最後に各グループの結論をもちよって全体で共有するというものです。

 

1つ目のトピックは非常にシンプルでしたが、議論時間が90分では全く足りない!という声が大半でした。具体的には「Recurring Revenueの世界で売上責任を持つのは誰か?」で、明らかに教科書的な唯一の回答がない問でした。そして、そこがポイントです。

 

もしも明確な正解がある質問で、誰かがあるいは誰もがそれを知っていたなら、議論は5分でおわり、残り時間が非常に退屈になるでしょう。議論は、活発に盛り上がり、思考が刺激され、誰一人として決定打を打てないようなものでなければなりません。ああそれから、楽しくて誰にとっても貴重な時間になるものでなければなりません!

 

CCOサミットやPulseからの学びは、参加者が安心感をもつことが重要だという点です。皆さん、悩んでいるのは自分1人ではない、苦戦してるのは自分がバカだからではい、業界他社にくらべ5年も遅れているわけではない、と確信することで安心感をもてるのです。

 

それが魔法なのです。苦労を分かち合うことほど人と人の結束を強くするものはありません。議論することで、共通の苦労を抱えていることが強調されます。困難な課題と共に闘うことから生まれる関係や友情は本当に貴重です。CCOサミットでのテーブルで、生涯の友情関係が形成されていくのです。

 

トピックの候補は山ほどあります。逆に素晴らしい数々の選択肢の中から選び出すことが難しいです。上述のトピックの他、以下のトピックも議論しました:
– カスタマーサクセスの理想的な組織の形は?
– 給与モデル
– 社内・社外に向けにカスタマーサクセスを評価/正当化する方法
– カスタマーの説明責任をもつのは誰か(売上の説明責任と対照的に)

 

最後に小グループが全体討議のために集合した時、私たちはドラゴン・デン(訳者注:Dragon’s Den; 起業家がVCに事業案をピッチし投資資金を確保するリアリティTV番組フォーマット)コンペを行いました。Notion Capital社のスティーブン・ミラード氏、Frog Capital社のジョー・クランキー氏がわざわざホーシャムまで旅してイベントに参加しドラゴンズの役を果たしてくれました。

 

CCOサミットでのトピックは以下でした:
もし今、100万ポンドをカスタマーサクセスに使えるなら、あなたはそれをプロセスに使いますか?それともプロダクトに使いますか?

 

プロセスかプロダクトかをまず選択した上で、ドラゴンズに対し100万ポンドの事業プランを披露します。このコンペでは非常に興味深い行動が観察されました。ドラゴンズからの厳しい質問にアドリブで答える様子は、見ていて本当にユーモラスで愉快でした。誰もが楽しみ、勝者はエコードットを手にいれました。

 

4)カスタマーサクセスは<依然として>新しい

 

私が「カスタマーサクセス」という言葉を使う時は、「カスタマー」に真の焦点を当てます。そうするのが良いことだから、ではなく、売上底上げにつながるからです。

 

カスタマーサクセスはほとんどのB2B企業にとりまだまだ新しい概念です。既に数年の経験をもつ企業や個人は増え続けていますが、それでも未経験の企業・個人の数は膨大なため、カスタマーサクセスは矮小化されています。

 

カスタマーサクセスはまだまだ新しい概念で、今でも変化し続けています。企業成長における様々なフェーズ・規模に応じ、カスタマーサクセスの焦点も変化が必要です。

 

極端な例で考えるとその差は歴然とします。単一プロダクトの会社と、プロダクト45種類もある会社とでは、おのずとカスタマーサクセスのモデルも全く異なります。また月間売上£40のカスタマーが1万社いる会社と、年間売上£2百万のカスタマーが60社いる会社とでもその差はハッキリ違います。

 

理屈上は、これら4社のカスタマーサクセスはすべて同じであるべきでしょう。しかし、日常業務レベルでは、その方法、形、フォーマットどれもすべて異なります。

 

大抵の企業は、これら極端な例の間のどこかに位置するため、自分がいる位置の次の段階にいる誰かの話を同じテーブルに座って聞けるのは非常に貴重な機会なのです。また同じトピックを同じメンバーで来年したとしても、会話の内容は全く異なるなるものになるかもしれません。

 

カスタマーサクセスは急速な進歩を遂げている分野です。私たちは、CCOサミットの会場に集まった40社の原則とプロセスを観察することができました。私たちは参加者同士がなるべく楽しく面白く議論できるよう工夫しましたが、最も重要なのは、参加した全員にとり非常に意義ある貴重な時間になることです。

 

同イベントでは、カスタマーサクセスにおける究極の質問へは「場合による(It depends.)」と答える、内輪うけジョークが開発されました。「銀河ヒッチハイク・ガイド(訳者注:The Hitchiker’s Galaxy Guide; イギリスの脚本家ダグラス・アダムスが書いたブリティッシュジョークが満載のスラップスティックSFシリーズ)」のファン向けに言うと「42」のようなものです。

 

私たちが議論した論点は、本当にさまざまな変数に解が依存する問ばかりです。という事実の中で、「場合によらない」絶対解のある問も発見しました。大それた内容ではありませんが、それが判明した瞬間はとても楽しい時間でした:

 

– カスタマーサクセスマネジャーの給料は、可変部分をもつ報酬計画に基づくべき
– 更新やアップセルの業務を誰が担当するかに関わらず、営業とカスタマーサクセスは連携して動かなければならない
– 事業モデルの違いに関係なく、GRR(Gross Revenue Retention)はカスタマーサクセスの重要指標
– アドボカシーを色々な方法で測定することが非常に重要。NPSはデファクトスタンダードな方法の1つ
– カスタマーサクセスの生産性と有効性を高めるうえで、カスタマーサクセスのテクノロジーは重要な役割を果たす

 

5)「楽しい (fun)」要素は不滅の原則

 

Gainsight社のことを良く知らない人に補足すると、弊社の5つのバリューのうちの1つは「子供のような喜び(Childlike Joy)」です。私たちはそれを大切に信じていて、あらゆる場・機会で実行に移しますが、特にイベントでは最大の努力をします。

 

実は以前のCCOサミットでやり過ぎだと非難されたことがあります。必要ならいつでも止めますが、完全に止める気は全くありません。それほど私たちは自分たちの文化としてそれを重視しているのです。私たちのイベントの参加者は今ではそれを期待していて、私たちが提供しなければ失望すると思います。

 

このCCOサミットで観察された「子供のような喜び」の瞬間:

 

1.誰がプラスチックカップで最高の城を創れるかという簡単な5分間のコンテストでさえ、人格タイプAグループの競争本能がむき出しになる

 

2.ビジネスで成功している人は実はビジネススキルを超えたスキルを持っていることが多い。CCOサミット中に、カスタマーサクセス界で最高のサッカー選手はアムステルダムから来た女性であり、最高の卓球選手はチェコの若者だと判明したが、最高のゴルファーは継続して探さなければならないと判断

 

3.カラオケが上手い人はいないが誰もがカラオケ大好き

 

4. 人気の曲を勝手にカスタマーサクセスのテーマに書き換える独占権利を Gainsight社はもっていない

 

記念すべき初めてのCCOサミットヨーロッパに出席してくださった皆さん、そしてサポートしてくれたファシリテーターとスポンサーの皆さん感謝しします。おかげ様でユニークなビジョンを掲げるイベントを成功裏に実行できました。来年もまた、新しい参加者を交えてお会いしましょう!

 

(原文)

 

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