IoT-PaaSにカスタマーサクセスが必要不可欠な理由 (わけ)

個人的に、日本のモノづくり会社が IoT-“サービス”事業(”モノ売り”でなく!)へ軸足を移すことでその世界的競争力を復活させることを強く願っています。そのために、モノづくり会社こそカスタマーサクセスを早く学んで実践することが必須だと信じており、それがCustomer Success Japanを始めた動機でした。

 

モノづくり会社からサービス会社へと変革を遂げたGE; Predixは有名ですが、そんなIoT-PaaSこそカスタマーサクセスが必要不可欠である、という記事を紹介します。

 

IoT事業をPaaSとセットで構想する日系大企業の方にぜひ読んでほしいです!もちろん、モノづくり会社でなくても、販売パートナーさん経由でサービス展開されているSaaS企業の方にもとても参考になる内容でます。ぜひお楽しみください。

 

注:Strikedeck社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。


 

PaaSで展開するIoTプラットフォームとカスタマーサクセス

カスタマーサクセスマネジメントは爆速進化中ですが、こと定義となると、「顧客を成功させるために必要なことをする」といった非常に概念的なものに終始しがちです。

 

カスタマーサクセスに取り組む企業のプロフェッショナル職種も、会社の種類、規模、業種に応じ、リレーションシップマネージャー、アカウントマネージャー、カスタマーサポート、コンサルタント、またはその組み合わせなど多様です。

 

IoTもカスタマーサクセス同様に急速な進化を遂げ、今では非常に幅広い範囲をカバーしています。Internet of Things または IoT という用語は、サーモスタット、冷蔵庫、またはベビーモニターのようなインターネットに接続できる製品の製造から、製造業者が展開する製品に依存しないIoTプラットフォーム、インフラストラクチャ(PaaS)及びそれらの一部またはすべてを総称するものとして使用されます。

 

今回は以下2点について考えてみたいと思います。
1)IoT-SaaS企業においてカスタマーサクセスがいかに重要か
2)IoT-Paasにおいてカスタマーサクセスがどう機能するのか

 

なおここでは、IoTプロダクトの製造業者、販売業者、及び IoT-PaaSを利用する企業を「ベンダー」、彼らのプロダクトやサービスを購入する企業を「カスタマー」、製品・サービスを利用する者を「ユーザー」と表現します。

 

IoT革命とそのインパクト

多くのベンダーがプロダクトを次々インターネットへ繋げていくにつれ、IoTは不可逆的な未知の世界へ進みます。プロダクトがインターネットに接続されれば、ユーザーがモバイルアプリケーションを介し遠隔操作できるだけでなく、遠隔での監視・サポート・診断、リアルタイムの利用データ収集・分析など、最先端機能が手に入ります。そしてベンダーは、過去に比類ない豊富な情報源にアクセスできるようになり、既存事業を拡張したり、新事業ラインを追加したり、成長機会を得られるのです。

 

ベンダーは、インターネットに接続されたプロダクトからどのようなデータを取得するのか、どの位の頻度でデータを取得するのかを決める権利を手に入れます。こうしてベンダー自ら取りたいと思って取得したデータを分析し、最もよく使われる機能や、プロダクトの問題、利用が低調なサービスなど、ユーザーの行動やプロダクト利用に関する貴重な情報が得られるのです。

 

これらの情報を使うことで、ベンダーはカスタマーに対し、積極的かつ個別化されたサポートやサービスを提供し、同時に、使われている全機能の優先順位付けや、利用パターンの最適化、障害の検出・軽減の自動化などを進めることでプロダクトを強化することもできます。更にインターネットに接続されたプロダクトやサービスをバンドル化し、シームレスに連携させ、ユーザーの利便性を高めることで、アップセルやクロスセルを増やすこともできるのです。

 

一方、プロダクトにとらわれない IoT-PaaS企業は、最も刺激的かつ先端の選択肢の中から自社プロダクトやカテゴリーを決めることができます。なぜなら、ユーザーや事業モデルがそれぞれ全く異なる幅広い種類のプロダクトやベンダータイプ(OEM、ODM、販売業者)へ対応することが可能だからです。

 

これらのプラットフォームを評価したり利用しているベンダーに共通するのは「IoTの競争に今飛び込まなければ、早晩、競合によって殺られてしまう」という運命を理解している点です。

 

彼らの悩みは、いかに既存事業を混乱させず、かつIoTから得られる最大価値を毀損させずにこの進化プロセスをシームレスに進めるか、です。そして、その解決策こそが?IoT-PaaSでカスタマーサクセスが大きく活躍する領域なのです。

 

 

IoT-PaaS企業におけるカスタマーサクセス組織

一般的に、設立当初の企業にとりカスタマーサクセス組織は必要不可欠ではありません。

 

しかし、IoT-PaaS企業の場合は事情が全く異なります。彼らが IoT事業を始めたばかりのベンダーを指導し、万全なサポートを提供したいと思うなら、強力なカスタマーサクセス組織を最初から構えることが何より不可欠です。

 

なぜなら、IoTは非常に新しい分野なので、ベンダー自身が自社のIoT事業に不慣れでその潜在可能性を理解し尽くしていないからです。従ってベンダーがIoT事業で成功するのに必要な知識、サポート、ツールを用意することは、IoT-PaaS企業のカスタマーサクセス組織にとり欠くことの出来ない重要な任務なのです。

 

IoT-PaaS企業におけるカスタマーサクセス組織の機能

このような背景から、IoT-PaaS企業のCS組織は、次のような機能を兼ね備える必要があります。

 

・教育&トレーニング

ベンダーは通常、小売、製造など専門分野のプロではあっても、IoT事業で成功するプロではありません。従って、IoT-PaaS事業で成功するには、ベンダーに対し IoT事業を推進する上での基本や成功事例、従来の製造業とどう異なるのか、IoT事業の生態系を構築することの重要性などについて指導することが必要不可欠です。

 

ベンダーの大半は、彼らの新規事業が成長するにつれ、これらの情報を大変価値あるものと理解し、ROIをどう定義して最大化すべきか等を学びたいと思います。

 

また、IoT-PaaS企業のカスタマーサクセス組織は、ベンダーがIoTプロジェクトを推進する際に、彼らのパートナー企業へ教育を施す上でも非常に重要な役割を果たします。

 

典型的なIoTプロジェクトでは、ファームウェア企業、モバイル企業、及びクラウド/インテグレーション企業など、多種多様なパートナー企業が関与します。 多くの場合、パートナー企業は IoTソリューションの開発経験がないか、またはベンダーが選択する特定のIoTプラットフォームでの実務経験がありません。

 

どちらの場合も、IoT-PaaS企業のカスタマーサクセス組織は、すべての利害関係者がきちんとトレーニングを受け、彼らが共通言語と共通理解を持てるようする上で必要不可欠な存在なのです。

 

・コンサルティング

IoTプラットフォーム企業は、デバイス(製品)に依存しないエンド to エンドの接続性と、デバイスからクラウド、及びデバイスからモバイルアプリへのデータフローをサポートする必要があります。大多数から選ばれるソリューションを構築するには、自身のプラットフォーム/クラウドサービスを理解しているだけでは全く不十分です。

 

IoT-PaaS企業のカスタマーサクセス組織は、自社ソリューションを利用するベンダー企業のプロダクト・ジャーニー全体を通じて彼らをリードするのに必要な専門知識を持たなければなりません。

 

カスタマーサクセスのコンサルタントは、最新動向、ベストプラクティス、ソリューション開発、接続オプション(Alexa、Homekit、その他)、地域的な意味あい/嗜好、典型的な問題点、相互運用性のオプション、ROI、データ戦略 、IoTプロダクトの効果的なマーケティングとサポートテクニックなどのトピックについてアドバイスできなければなりません。更に必要に応じ、より深い考察を重ねる専門的ワークショップも提供できなければなりません。

 

IoT-PaaS企業のカスタマーサクセス組織には、プロダクトやプラットフォームにとらわれないコンサルティングを提供できる中立性が求められます。コンサルティング部隊は、ベンダーが自社プラットフォーム/サービスを選択しているかどうかにかかわらず、IoT事業で成功するための正しいアプローチをベンダーに指導する、独立した存在として機能する必要があります。

 

・ビジネスコンサルティング

IoT-PaaS企業のカスタマーサクセスマネジャーは、時に彼らのカスタマーに対しコンサルタントの役割を担う必要があります。彼らは、ベンダーが相談したい時に真っ先に思い浮かぶ相手となり、IoT事業の基本やベストプラクティス、最新動向、将来の方向性などについていつでもアドバイスできなければなりません。

 

重要な成功要件を予測し、ギャップを特定し、直ちにまたは必要に応じて専門家を紹介します。CSMは、急速に変化するIoT事業環境を踏まえ、営業担当者の役割とは真逆の、ベンダーを成功に導く信頼できるアドバイザーとしての役割を果たすのです。

 

・テクニカルコンサルティング

カスタマーサクセス組織におけるプロフェッショナル・サービス・アーキテクトとエンジニアは、プロジェクトの実施段階で、ソリューションアーキテクトとして、ソリューションのアーキテクチャー、設計・実装のレビュー、QA計画の作成・テストなどを通じ、ベンダーやパートナー企業を支援する必要があります。

 

カスタマーサクセス組織は、ベンダーが最適なIoTソリューションを実装するのに必要な技術ガイダンスを得る上での鍵を握る大切な存在なのです。

 

・カスタマーサポート

プロダクト上市後は、カスタマーサクセス組織のカスタマー・サポート・チームへバトンが渡ります。ベンダーは通常、ユーザーのために最高レベルのサポート部隊を準備します。従って、プロダクト上市後におけるカスタマーサクセス組織のサポート・チームの主な役割は、ベンダーのサポート・チームが、IoTプロダクトをきちんとサポートできるように支援することです。

 

しかしそれは、従来の伝統的なサポート部隊が経験したのとはまったく異なる内容です。例えば、冷蔵庫、 HVAC、サーモスタットなどのIoT製品を利用するユーザーが直面する、Wi-Fi接続に関する問題や、IoTクラウドへの製品の登録、ユーザー・アクションで生じる製品ラグの問題などに対処する必要があるからです。従来型の経験しかないサポートチームがそういった新しい問題に対処できるようにすることは、最高のユーザー体験を提供するために必要不可欠なことなのです。

 

結論

以上より、カスタマーサクセス組織は IoT-PaaS企業にとって必要不可欠な存在です。

 

カスタマーサクセスの究極の役割は、カスタマーから信頼されるアドバイザーとなることで彼らと強い絆で結ばれた関係を築くことです。カスタマーサクセスは、急速に変化するIoT-PaaS事業環境において、カスタマーが事業で成功するのに必要なガイド、リソース、ツールを提供することで、彼らと長期的な深い関係を構築できる立場にあり、それこそ正にカスタマーサクセスの存在意義そのものなのです。

 

(原文)

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