再び、アドボカシーマーケティングです(投稿「アドボカシー(口コミ)マーケティングを成功させる12の秘訣」をぜひ参照ください!)。
アドボカシーマーケティングでお馴染みの Influitive社が毎年主催する「BAMMIES賞」。第4回目の 2017年BAMMIESは、10社が受賞しました。
中でも筆頭の「BEST DISCOVER, NURTURE AND MOBILIZE STRATEGY」賞を受賞した Wiley社のカスタマーコミュニティ活用事例をご紹介します。
余談ですが、個人的にWiley社といえば、大学生の時に初めて研究で海外書籍を買った時に目にした学術系に強い出版社です。そんな伝統的出版社が、カスタマーサクセスに留まらず、それをスケールさせるコミュニティを構築しファン基盤を育んでる(それも受賞する水準!)という事実に衝撃を受けました。
日本の大手出版社が同じ道をたどられる日が楽しみです。
注:Influitive社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。
カスタマーサクセスをスケールさせるアドボカシープログラムの作り方
出版と教育のテクノロジー会社、Wiley社のカスタマーサクセス担当ディレクターである ニコール・ディングリー氏は、 今年のバレンタインデーに各カスタマーへギフトカードをプレゼントし、Wiley社とプロダクトの大好きな所について尋ねました。
24時間もたたないうち、彼女のもとにはWileyのファンから600件以上の返信が集まりました。彼女はそれを休暇中だったCEOの元へ直ちに送りました。すると彼から返事が届きました。
「ニコール、これは私の人生で最高の休暇の読み物だよ!」
しかしニコールが、受賞歴もある WileyPLUS Studioのマーケティングプログラムを活用する局面は、単にファンからラブレターを受け取るだけに留まりません。彼女はWileyの強力なファン基盤を育み、今やマーケティング、カスタマーサクセス、プロダクト営業といった様々な機能部門が恩恵を得られるレベルにまで育て上げ、その力を活用しています。
同マーケティングプログラムを活用する目的は、活力あるカスタマーコミュニティの構築、チャーンの抑制、カスタマーサクセス活動の効率的な「複製化」など幅広いです。
今回、彼女が推進中の最新 “アドボチャット/ Advochat(Influitive社ツールを使ったAMAスタイルのウェビナーシリーズ)” 戦略についてインタビューし、彼女がWileyPLUS Studioをどう活用しているかなど伺いました。
なお、アドボチャットによるセッションビデオの様子はこちらを参照ください。
Wiley社が紙の書籍を印刷するだけの会社だった時には、カスタマーサクセスのチームは必要ありませんでした。 しかし世の中のデジタル化に伴い、カスタマーが彼らのプロダクトである教育ツールをより良く活用できるように、効果的なサポートを提供することが必須になりました。
ニコールのチームは、カスタマーの数が増え、それに伴いサポートニーズも増加する中で、より質の高いサポートを提供しつつ、カスタマーと有意義な関係を構築できるような、ユーザーとのインタラクションが拡大する方法を考案しなければなりませんでした。
以下に、ニコールのチームが実行した7つの秘訣をご紹介します。皆さんにもきっと出来る内容ですよ。
1. “1対多数”のアプローチでカスタマーサクセスのカバー対象範囲を広げる
ニコールは言います。
「新学年が始まる時期は、私たちが最も忙しい時期です。その時期に私たちは AdvocateHubを使い、楽しくワクワクする方法でカスタマーをガイドする素晴らしい体験を提供します」
カスタマーサクセスマネジャーの1日の時間は有限です。ニコールのチームは、カスタマーである教師の方々が必要な高品質のサポートを受けられる “1対多数” アプローチをとります。
教師が新年の準備を始める時に WileyPLUS Studioを使い、課題や活動の準備、授業セクションの設定などのタスクを含む、「バック2スクール」設定ガイドを作成します。その際、教師の方が後の受賞に繋がるポイントを獲得できるようにします。
ニコールは言います。
「Skilljar(訳者注:最新で使い勝手のよいオンライントレーニングプラットフォーム)を使ったオンライントレーニングプログラムへ彼らをリードします。以前は、トレーニングプログラムの管理やウェビナーの実施なども含め、カスタマーサクセスマネジャーがすべて手作業で進めており、トレーニングも 1対1が大半でした。
アドボカシープログラムを導入し “1対多数” 型トレーニングに切り替えた今は、1対1のトレーニングはすべて不要になりました。
現在、カスタマーはトレーニングプログラムを自由に受講し終了できます。彼らが望むなら、ですが、夜中に訓練することも選択できます」
2. カスタマーの動機を理解し彼らの琴線に触れる
ニコールは言います。
「コミュニティは彼らにとり最も大きな動機の1つです。人は自分よりも大きなものの一部になりたいのです。特に教育関係者は、コホートやコミュニティの一員であることに慣れていて、意見を共有し合うことが好きな人たちです。ですから、コミュニティ自体が大きな動機付けになるのです」
あなたのファンが、どういうタイプの報酬や認知を好むのかをよく理解することがとても重要です。
ニコールは、”排他性(訳者注:選ばれた人のみ)” の優越感を与えることが非常に重要だと気づきました。
「皆さん、自分が他とは違う特別なものの一部に属していると感じるのが本当に大好きです」
WileyPLUS Studioは、競争心が刺激される場です。チャレンジャーにはポイントが付与され、ポイントが一定値になると、プログラム内でレベルアップし受賞に繋がります。
ニコールは言います。
「全員がリーダーになるためのハシゴを上がるよう動機づけられています。とても面白いですよ。物理学の博士号を持っている人が、リーダーになるためのハシゴを上がることに本気で真剣になるなんて、誰が想像しますか? でも実際、彼らは本気でそうしています」
3. イベントを活用し、ファンコミュニティに参加する動機を与える
WileyPLUS Studioに参加するよう動機づけるもう1つの方法は、社内イベントへ参加できる権利を排他的に付与することです。
ニコールは言います。
「企業が社内で何をしているのか、カスタマーは割と興味深々です。特にタウンホールで開催される WileyPLUSシンポジウムと呼ばれるイベントに参加したがる方が大勢いらっしゃいます。そこで私たちは「(同イベントの)参加登録は WileyPLUS Studio のメンバーだけが出来ます」と伝え、”メンバー限定” メリットの魅力を実感してもらいます」
もう1つの戦略は、そういうイベントに参加してくれたカスタマーに正しく報いることです。
ニコールのチームはいつも既存カスタマーにお礼をしたいと思っており、イベントにきてくれたカスタマーにプレゼントする超カッコいいスワッグ(訳者注:周囲に自慢できる身の周りのもの。コップやTシャツなど)の製作にはかなり予算を使います。
あるイベントで、参加したカスタマーに特性フリースセーターをプレゼントしました。その際、自分のサイズ情報を入力するためにはコミュニティに登録し、その後も繋がってお知らせ通知を受け取ってもらうことが必要としました。
結果、その年のAdvocateHub 登録者数はそのイベントの影響で約10%増と大幅に増加しました。つまりこの施策は大成功を収めたのです。
メンバー同士の議論や、WileyPLUS Studio内でのみ利用可能な情報も、もちろん一部のカスタマーにはとても魅力的です。
ニコールは言います。
「私たちは今、栄養学のプロフェッショナルと一緒に仕事をしています。彼らが議論に参加し、彼らのもつ栄養学の知識に基づきプロダクトフィードバックをしたい場合、コミュニティのメンバーになって頂くことが必要です。議論に参加できるのは、AdvocateHubのメンバーに限定されているからです。現在、私たちのコミュニティのメンバーは約2,300人です」
4. パーソナライズされたカスタマー体験で1人ひとりと絆を深める
ニコールは、カスタマーとのやり取りで留意すべきことについてアドバイスします。
「アドボカシープログラムで重要なことは、メンバーの方の誰1人にも深入りしないことです。それで良いのです。誰も深入りされることを期待していません」
一方、新プロダクトの説明会など必要な活動をプログラム経由で開催し、カスタマーと絆を深めることも重要だと注意を喚起します。
「矛盾するようですが、メンバーは皆さん1人ひとり希望や嗜好が違うという点を尊重することが大事です。私たちにどう関わってほしいのか、1人ひとり希望が違います」
アドボカシープログラムにおいて、1人ひとりの違いを尊重して対応することは、相手との絆を深める上でとても効果的です。
カスタマーの皆さんに、何を学びたいか、コミュニティにどういったメリットを期待しているかぜひ聞いてください。そして、それに適した機会やキャンペーンを企画するのです。そうすれば、素晴らしい効果が上がります。
ニコールは言います。
「私は常づね、AdvocateHub は Play-Doh のようなものだと説明します。パンケーキが作れるだけでなく、恐竜も作れるのです。あなたのファンを喜ばせる方法は無限大です。方法はたった1つでなく、100万通りにも及びます」
5. 「喜びの瞬間」を沢山つくり、ファン基盤を大きく育てる
カスタマーとの関係基盤を堅固にするには、機会がある毎に、想像もしなかったような特別なものを贈り、彼らに「喜びの瞬間」をもたらすことが非常に重要です。
ニコールは言います。
「私たちはカスタマーの記念日を一緒にお祝いしたいのです。実際、AdvocateHub で記念日情報を収集し、”その日” が近づくと贈り物を送ります。記念日に限らず、休日や特別な時間などでもそうします。私たちにとってもワクワクする機会です」
ファンがこのような特別な機会に大喜びしてくれるようアレコレ工夫すると同時に、今年のバレンタインデーでのように、彼らに対して嬉しいコメントをお願いするなど、ファンとの絆づくりを実際のアドボカシー活動に大いに役立てます。
ニコールは言います。
「喜びの瞬間を企画することで、彼らに特別な気分になってもらえ、私たちも同時に特別な気分になれます。そういったカスタマーへの愛は必ず私たちの元に戻ってきます」
6.ファン同士を繋げてカスタマーサクセスチームの負担を減らす
ニコールのチームは、新規ユーザーのオンボーディングを、コミュニティの既存メンバーによる P2Pサポート活動を運営することで効果的に推進します。
具体的には、WileyPLUS Studio AdvocateHubの週次討議会でプロダクトの様々な機能を紹介する、などです。これは「ヒントを学ぶ火曜日」と呼ばれ、誰もがとても楽しみにしています。
ニコールは言います。
「参加者がどんどん集まり、そのヒントを実際試してみたいか、どう活用すると良さそうかなどを次々と発言し合います。より素晴らしいのは、コミュニティのメンバーさん自身が、そういう議論を自発的に開始してくれる点です。彼らは自分の知恵やワザを積極的に披露し、互いに議論して、更にその上を目指します。その内容は、時に、私たちのソフトウェア以外の内容に及ぶこともあります」
たとえば化学の教師をしている方が、学生との関わりを深める方法に関しとても一般的な議論をポストしました。すると、化学以外のさまざまな科目の教師の方が次々とそのポストに返信し始め、あっという間に100件を超える返信が集まりました。
ニコールは言います。
「そのテーマは皆さんが色々と悩んでいて、お互い一緒に議論したいと思っていたようです。Influitiveのツールを活用することで、彼らが望んでいた議論をするフォーラム(場)ができました。それは本当にパワフルです」
教育と学習のプラットフォームをファンの方がたへ提供することで、お互い繋がりあい、サポートしあい、お互いの専門知識を披露しあう、活気溢れるコミュニティを構築でき、おまけに、カスタマーサクセスチームの負担も軽減できました。
そこに集まる専門知識は、カスタマーサクセスチームが収集しうる水準を超越しています。なぜなら、スーパーファンの皆さんが彼らの専門分野特有の知識や知恵を提供してくれるからです。
こういったコミュニティに参加するファンの人たちは、プロダクト以上の価値を手にします。なぜなら、より良いサポートと素晴らしい学びの機会も得られるからです。結果としてチャーンの可能性はぐっと減ります。
7. カスタマーサクセスマネジャーの活動をスケールさせられるテクノロジーを選択する
ニコールのチームでは大人数の既存カスタマーをまとめてサポートする方法が必要不可欠だったため、彼らはInfluitive社のAdvocateHubプラットフォームを選択しました。
ニコールは言います。
「このテクノロジーを使いだしたとたん、コミュニティ上でリアルタイムに人とつながる手段が手に入りました。彼らと議論したり、プロダクト情報を共有したり、連絡を取り合ったりできるようになりました。WileyPLUS Studioを導入し、私たちは自分たちを複製することに成功したのです」
企業のニーズは1社ごとに違います。使うテクノロジーは、各社が抱える個々のニーズを満たす機能が備わっていなければなりません。
(もしあなたがカスタマーコミュニティの良いプラットフォームを探しているなら、別の記事「成功するプラットフォーム10の特徴」をぜひご参照ください)
適切なテクノロジーを選択すれば、カスタマーサクセスマネジャーの専門知識を “1対多数” アプローチで広く共有・展開できるため、 彼らの時間を1対1の会議をするよりずっと効率的に使えるようになるのです。
成果:チャーン減少、NPS向上、などなど
Wiley社の WileyPLUS Studioが、2017年のBAMMIE(The Best Advocate Marketing Awards)を受賞した理由は明白です!
既存カスタマーを重視し、彼らが互いに繋がり、共有し合い、学び合える仕組みを構築しました。結果は以下の通りです:
・WileyPLUSのユーザーのチャーンが54%削減
・Studioメンバーのネットプロモータスコア(NPS)が 380%向上
・ユーザーの教師が書いた推薦状による新規の売上 25万ドル
・既存カスタマーによる推薦コメント 917件
最後にニコールから一言。
「アドボカシーほど最高に楽しいものは他にありませんよ!」