「リテンション」と「契約更新」が必ずしも同義でない理由

米国のカスタマーサクセス界でこの人を知らない人はいない、リンカーン・マーフィーさん。

 

それは、彼のもつカリスマ性、ソートリーダーシップによる所が大きいのですが、加えて、彼のユニークな経歴(プロフェッショナルレスラー)と、少しエキセントリックな性格の影響もあると思います。

 

リンカーン・マーフィーさんは、2014年から2年ほどGainsight社で働き「2年たったら会社がでかくなった。でかい会社で働くのは興味ないんだ」と言って退職されました。

 

現在は、Sixteen Ventures社でカスタマーサクセスのコンサルティングを手掛けています。

 

今でもGainsight社とは近しい関係のようで、Pulse 2018では〆のセッションでスピーチされ、好評を得ていました。そんなリンカーン・マーフィーさんによる記事をご紹介します。

 

注:Gainsight社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。


 

リテンションと契約更新は別物

 

カスタマーサクセスマネジメントでチャーンを減らすという話をする際、私はポイントの核心をつくため、必ず “リテンション” と “契約更新” の両方について話をします。すると必ず皆さん、眉をしかめてこう言います(なので私は敢えてそうするのですが)。

 

「ちょっと待って、それって同じことでしょう?」

 

実は同じではありません・・・その理由を今からお話しましょう。

 

リテンション

 

契約が月次の場合、リテンションと契約更新はほぼ同義です。なぜなら、仮にクレジットカード払いの自動更新だったとしても、あらゆるカスタマーがいつでもチャーン or 契約更新する可能性があるためです。

 

一方、契約がもっと長期にわたり、契約終了時にしかチャーンできない(少なくとも法的に)契約の場合、シナリオは全く別物になります。 形式的には、彼らが契約満了と共にチャーンした場合、「契約更新しなかった」ことになります。

 

契約更新

 

重要なのは、契約満了月に該当しない数ヶ月間のチャーンの計算に、長期契約満了時にチャーンするカスタマーは現れてこないという点です。

 

つまり、そのチャーン率はその月に現れないカスタマーが含まれている分だけ、見た目が良い数字になっています。

 

このように、年次または複数年に渡る契約は、ベンダーにとり必ずしも都合の良いものではありません。特に、創業間もないスタートアップや、大企業向けゲームに精通していない企業の人たちは苦労を強いられることでしょう。

 

SaaSの長期契約は俗によく「カスタマー仕様の契約」と表現されます。つまり、契約条件や法務部門を駆使して基本的にカスタマーが好む条件(長期を前提とした大幅な割引など)を許すことで、カスタマーを囲い込むことが意図されています。

 

しかし実際、カスタマーはそう簡単に囲い込めるものではありません

 

たとえカスタマーと長期契約を結んだとしても、カスタマーはいつでもチャーンする可能性があります。 従って、契約種類(カスタマー仕様かベンダー仕様か)の違い別に分けてチャーンを計算するのが良いでしょう。

 

以上が、リテンション(契約を解約出来るが敢えてしていない)と契約更新(意思をもって契約を更新する)は厳密には同じでない、と私が思う根拠です。

 

さて、皆さんはどう思われますか?

 

(原文)

 

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