HubSpotのカスタマーサクセスをゼロから構築したマイケルさんの「カスタマーサクセスに全力を尽くすSaaS創業者の必読バイブル」はお陰様で大好評で、CEO/経営者の方含め大変多くの方にご覧頂いてます。
そのマイケルさんが、カスタマーサクセスとカスタマーサポートの役割の違いについて語る座談形式の記事を紹介します。最後の質問、組織モデルに絡む話はカスタマーサポートをもつ成長中な企業の方にはぜひ読んでほしいです!
注:著者Michael Redbord氏の許可を頂き原文の和訳を紹介します
質問 カスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いは?
マイケル
一時期、私の肩書はサポート&サクセス責任者でした。ここからも、この2つは別物と捉えられる傾向が伺えます。理想的には、この2つの機能は同じグループに所属すべきです。なぜならどちらもカスタマーに対するサービスであり、あなたの事業やプロダクトからカスタマーが得る価値を最大化するという目的が一緒だからです。
でも実際のにやる仕事はかなり違います。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートの根本的な違いは2つです。
1)カスタマーサクセスの仕事には終わりがない
2)カスタマーサクセスの仕事は、どんなカスタマーか、どんなサクセスマネジャーかにより相当変わる
基本的にサポートは受け身の仕事です。カスタマーから依頼があって仕事が始まり、カスタマーとのやり取りは割と単純明快な処理で、それには終わりがあります。
一方、カスタマーサクセスの仕事はそもそもの構造が違います。何より視点がより長期です。カスタマーサクセスには終わりがありません。カスタマーサクセスマネジャーは、カスタマーが1人では発見できない価値を実現するため、時間をかけカスタマーと協業する必要があります。
カスタマーサクセスとカスタマーサポートは、関わりを持つ部分がありますが、その本質(DNA)は少し違うと私は思います。
質問 サポートおよびサクセスで活用する指標は何でしょうか?どう違いますか?
マイケル
カスタマーサポートは何十年も前からあり非常に良く理解されている分野です。カスタマーサポートはカスタマーの要求を満たすことが目的です。カスタマーサポートの重要指標は「スピード」と「サポート品質」に関するものです。
スピードは、例えばカスタマーから処理依頼があった案件の解決所要時間、平均応答時間、平均待ち時間などで測定します。
品質を測定するには、カスタマーが問題解決するのに要した労力を測る「カスタマーエフォートスコア(CES)」が絶対おススメです。サポート機能が拡大したら、カスタマーサティスファクションスコア(CSAT)、ネットプロモータ―スコア(NPS)、エージェントサティスファクション(訳者注:サポートスタッフの満足度)なども測定すると良いでしょう。
カスタマーサクセスの指標は少し違います。カスタマーサクセスの目標は、時間軸に基き測定される価値です。つまり時の経過と共にどれだけ価値が提供され&拡大したかを測定することです。SaaS事業では通常、これをリテンションとして数値化するのが一般的です。
定期収益が入る企業では、カスタマーのリテンションをよく「ネット収益」で測定します。つまり「カスタマーが契約更新したか?、カスタマーは追加で何を購入・契約したか?」です。それ以外にも「年初にX人いたカスタマーが年末にはY人になった」と簡潔に計算する場合もあります。
質問 カスタマーサクセスはどのようなモデルで成長を追求しますか?
マイケル
まずカスタマーサクセスマネジャーの責任を明確に定義します。カスタマーサクセスはやることが明確に決まっている実際の仕事です。何をするのか理解し項目化できる仕事であり、サクセスマネジャーが実際に行う仕事を定量モデルで見える化もできます。
何件のアカウントを担当しているか、四半期ビジネスレビュー(QBR; Quarterly Business Review)を実施するアカウントはそのうち何件かということから、であれば XX件の仕事です、という感じです。QBRにどれくらい時間が必要か、おそらく準備に1時間、報告に1時間、フォローアップに1時間くらいでしょう、つまりアカウント件数に3時間かける計算です。結構な作業量になります。
個々の仕事の業務内容を考える時は、それがカスタマーや事業にどれだけ価値を生み出すかを考えてください。業務を定義し、価値を定義し、ROIも粗く追跡できたなら、一般的なカスタマーサクセス組織よりもはるかに優れた成果を上げられるでしょう。
一方、こんな会社があるのも知ってます。「カスタマーサクセスは重要だと分かっている・・・ただ仕事の内容を項目化したり業務を定義できないので、カスタマーサクセスが一体何をしているのか実はよく分かってない。でもカスタマーサクセスマネジャーが1人100社のカスタマーを管理してくれてるのは分かってる。とりあえず101件、102件目を担当させてみようか…」
このアプローチはしばらく上手くいくかもしれませんが、いずれ何かが犠牲になり終わりを迎えるのは目に見えてます。いつこのモデルが壊れて大規模な損害が出てもおかしくありません。
カスタマーサクセスの作業時間だけでなく、実際に何をしてどれだけ価値を出しているか知ることが重要です。理想は、トップダウンアプローチ(カスタマーの数から割り出す)より、ボトムアップアプローチ(必要な業務の量から割り出す)です。
質問 あなたはサポートとサクセスの仕事を否応なしに任されたと仰っていましたが、これは組織モデルとして良い例でしょうか?
マイケル
特に小規模な多くの企業では、カスタマーサポートが事業の中のオペレーション機能として扱われ、エンジニアリングやオペレーションと同じグループに所属します。中小企業では通常、誰もがカスタマーと繋がっているため、これはあまり大きな問題になりません。
しかし成長して企業が大きくなるにつれ、カスタマーサポートはカスタマーサクセスを志向する機能と同じグループにまとめるべきでしょう。
最終的には1人のリーダー、おそらく「カスタマーサクセス責任者」に絞り、その人が収益と優れたサポートチームの運営責任も持つのが理想的です。
なぜそれが理想的で重要なことなのか?
それは、カスタマーサポートがオペレーション機能のままだと、往々にして財務管理部門から予算圧縮プレッシャーをかけられ、必要な費用を確保できず縮小均衡に向かってしまうからです。更に、長期リテンション、ライフタイムバリュー、リピート率など長期的なビジョンとの繋がりも絶たれることが多いです。
しかしカスタマーサポートとカスタマーサクセスを組み合わせれば、そういう事態を回避し、より良い結果が得られるのです。