サクセスリーダーインタビュー by Successly キャサリン・ブラックモア氏 Oracle

私の大好きなキャサリン・ブラックモアさんです。

 

彼女は現在、Oracle社のマーケティングクラウド部門におけるカスタマーサクセスのグローバルVPですが、そういう肩書を超越し、「カスタマーサクセス界のクイーン」という別名が密かにあります(笑)。それほど有名で、誰もが注目する存在です。

 

かなり昔から様々な場面で発言され、インタビュー動画やプレゼン動画も山ほどありますが、今回取り上げたインタビューは「エンプロイ―サクセス」です。カスタマーサクセスに関する様々なトピックの中でも割とユニークで、それもまたクイーンらしいテーマ設定だなぁ、と個人的にたいへん興味深く聴きました。

 

お話し好きなキャサリンさんなので少し長めですが、皆さんの役に立つヒントがあちこちに隠れていると思いますよ!

 

 

 

話のポイント:
・「カスタマーサクセス」の成功は「エンプロイ―サクセス」の成功なくして成し得ない

 

・ 大切なカスタマーのことを深く理解するように、優秀なコアメンバーのことを真剣に深く理解し、将来のリーダー候補を見い出すことが重要

 

・ カスタマーサクセスで実施することを、エンプロイ―サクセスに読み替えることで、潜在能力の高い優秀な人材を特定し、育て、守ることができる

 

・ Oracle社では、マネジャーによるタイムリーなコーチングと年次レビュー会議の他、チームメンバーがもつコンピテンシーを深く理解する「才能レビュー」、メンバーのクリティカルシンキングスキルを磨く「答える代わりに問いかける」指導法、優秀な人材の成長を促す「引き留めインタビュー」などを開発し推進している

 

注:Successly社Adam O’Donnell氏の許可を頂き動画の和訳を紹介します


 

アダム

今日、お話してもらうのは「エンプロイ―サクセス」です。カスタマーサクセスの原則を、自社チームのエンプロイ―(従業員)に適用しましょう! という凄く斬新なテーマです。

 

キャサリン

エンプロイ― サクセスは、私にとってカスタマーに成功をもたらすための基礎を成す重要なものです。 エンプロイ― サクセス無くして、カスタマーサクセスは成し得えません

 

その意味を少しご説明しましょう。

 

カスタマーサクセスマネジャーが毎日していることは、プロダクトの最大限に価値を生かす方法を理解した上で、カスタマーが価値を得られるよう支援することです。カスタマーが興奮するようなソリューションの価値を伝え、その使い方を教え、問題が起きたら対処するのです。

 

もし、そういう仕事に遣り甲斐を感じない、または自分がすべきことを理解していない従業員がいたなら、あなたのカスタマーはあなたのプロダクトを使うことに決してワクワクしないでしょう。恐らく、その従業員のようになるのがせいぜいです。

 

アダム

いつそれに気づいたのですか?

 

キャサリン

かなり初期の頃です。私のカスタマーサクセスキャリアの中で、かつて小さなチームに参加し、カスタマーサクセスの立ち上げメンバーを採用した経験があります。

 

自分の代理人のごとく働いてくれるようトレーニングすると、本当にその通りに働いてくれます。彼らがカスタマーと会話する時、あなたの会話パターンに近い話をしてくれます。それほど難しくないことです。

 

構造化されたオンボーディング手法がまだ確立されていない初期段階では、あなたの隣に座るチームメンバーがあなたの指示に従って行動します。

 

その後、最初の5人程度のチーム規模を超えて拡大する段階では、さまざまな手段でコミュニケーションできる新オフィスを実際に開設し、行動を開始しなければなりません。

 

その時はじめて、あなたの指示通りな動きがとられ難くなります。カスタマー1人ひとりの電話にあなたが直接応対することも叶いません。問題が生じるのはその瞬間です。

 

アダム

エンプロイ― サクセスに向け、全員が同じ目的を共有して動いた事例を教えてもらえますか?

 

キャサリン

はい、少し詳しく説明しますね。とても重要な点で、かつ私にとっては膝を叩く目ウロコな瞬間(Aha moment)だったからです。

 

それは Jigsaw社やSalesforce社でカスタマーサクセスチームを拡大した瞬間ではありませんでした。

 

Oracle社で私は、買収した企業5社と一緒に働く機会を得ました。その経験から学んだのが、あらゆる仕事の中で最も難しいのは「技術」の統合でなく、異なる企業で働いていた「人」の統合だということです。

 

同時にそれは、チームメンバーから聞くフィードバックはまるでカスタマーの声を聞くかのように意味深いことだと実感した瞬間でもありました。チームメンバーの声に耳を傾けると、誰もが カスタマーを愛するようにチームメンバーを愛することにとても大きな意味があると訴えたのです。

 

それこそが正に私にとって目ウロコな瞬間(Aha moment)でした。

 

カスタマージャーニーとは何か、とか、オンボーディングをどう進めるか、とか、問題が生じたらどう対処し重要な問題はどうエスカレーションしていくか、とか、どの問題はどの部署へ渡すか、とか、いろいろ検討し数多くのプログラムが始動しだした時でもありました。

 

カスタマーが共有してくれたデータをいろいろな方法を駆使して分析し、より良い施策の適否を判断しようとしていました。

 

そんな時に私はオラクル社の経営チームに対し、「皆さん、エンプロイ―サクセスを実現するモデルが見つかった今こそ、それを実行に移す最適なタイミングです!」と提言したのです。

 

アダム

全く異なる5社で働いていた人たちが同じ船に乗っていない、という “ホコロビ” に気づいたのはいつですか?

 

キャサリン

割と早い時期でした。

 

チームメンバーに話しかけ、毎日仕事をするのがどれくらい大変か聞いたとしましょう。

 

「さあね、わからないな。見たいコンテンツを探すのにも苦労してるよ。どうやったら見つかるのか分からないからね」といった返事だった場合、そこから前線にいるマネジャーと彼らが交わす日々の会話が垣間伺えます。つまりそれは非常に簡単な早期警告システムです。

 

もちろん私は、カスタマーサクセスのキャリアに就いた時そうしたように、データもしっかりチェックしました。

 

5社統合の時は、カスタマーに話しかけるようにチームメンバーに聞きました。「あなたは何を愛していますか?」、「問題は何ですか?」と。純粋にそれを知りたかったからです。

 

そして「なぜ退職したのか?」についてはデータ分析しました。カスタマーに対してするように。

 

私たちはカスタマーがなぜチャーンしたか分析しますよね。「なんと、彼らは競合に乗り換えたよ!」とか、「価格が高かったみたいだ」など。

 

それと全く同様に、従業員についても分析します。「 なんと、競合に転職したみたいだ!」とか、「給与が高かったみたいだ」など。 ええ、もちろん他にも色々な理由がありますが。

 

アダム

チームのコアとなる非常に優秀なメンバーに対してはどのような対策をしますか?

 

キャサリン

最も重要なのは、大切なカスタマーのことを深く理解するのと同様に、優秀なコアメンバーのことを真剣に深く理解することです。彼らが何を望んでいる中で今どういう状態なのか。兆速で成長するメンバーに対して何をすべきなのか。

 

あなたの時間とエネルギーを彼らに投資する用意があるなら、「彼らの希望はここで叶いそうか? それともいずれ退職してしまうだろうか?」をしっかり理解しましょう。

 

繰り返します。カスタマーに対して実施することと何ら違いはありません。相手を深く理解することが本当に重要です。

 

カスタマーサクセスのマネジャーあるいはリーダーとして、あなたの時間をチームメンバーの誰に割くのか?それはしびれる判断です。敢えて1つ共有するなら、私のプロフェッショナルとしての経験に基づく「才能(タレント)レビュー」という考え方です。非常に重要な点です。

 

「才能レビュー」と聞いて、メンバーをランク付けするやつかな?、ちょっとヤダな、と思われるかもしれませんが、そうではありません。私もランク付けは嫌いです。

 

そうではなくて「才能レビュー」というのは、あなたのチームメンバーがもつコンピテンシーを深く理解しましょうというものです。企業活動の中でも最も簡単な取り組みだと思います。自分のコンピテンシーについても、なるべく早い段階からレビューすることは本当に良いことです。

 

私はこれまで、カスタマーサクセス関連のさまざまなフォーラムで、カスタマーサクセスの目的を明確にすることの重要性を何度も強調してきました。カスタマーサクセスの目的を明確に定義できていれば、どういう人材を採用すべきかは自明です。そこから彼らに求めるコンピテンシーも自然と導かれます。

 

カスタマーサクセスチームは、カスタマーへ価値を提供することに秀でている必要があります。カスタマーの要求を満たす必要があります。そのために必要な高いレベルの専門知識を持つ必要があります。そういう才能チームを編成する必要があります。

 

「才能レビュー」は簡単に言うと、パフォーマンスレビューのプロセスです。「仕事は順調ですか?」から始まり、「どんな仕事をしたいですか?」、「経営チームの一員になることを目指しますか?」、「あなたのキャリアゴールは何ですか?」などを質問していきます。

 

そのような質問をしていて面白いのは、同じ人でも答えは毎年変わるという点です! 人生は今年または来年、変化します。人生の優先順位も変わります。そしてそれは全く問題ありません。

 

従って、 エンプロイ― ジャーニーを明確にすることは、彼らがキャリアで成功するために私たちがその時々に何を提供できるのか伝えるのに非常に役に立ちます。

 

アダム

とても納得感があります。一方「HRの仕事は、社員がハッピーに働けるようにすることだ」と言う会社も多いです。それはあなたの視点とは少し異なるように思います。あなたはHRとどう連携しますか?

 

キャサリン

そうですね、連携余地は非常に大きいです。つまり、HRは会社の中で最も重要なパートナー部門の1つです。部門規模の大小は関係ありません。カスタマーサクセスチームがよい仕事をするためにコンピテンシーを考える上で彼らを巻き込むことは非常に重要です。

 

コンピテンシーの評価ツールは世の中に沢山あり、中小企業でさえ利用できます。少しトレーニングを受ければ、特定のスキルセットをもつ人材を採用するできるツールもあります。

 

カスタマーサクセスのスキルトレーニングサービスも世の中にあって、チームメンバーに社外の既存プログラムへ参加してもらったり、カスタマーサクセスチームのメンバー向け社内トレーニングプログラムを自前で構築することも可能です。

 

アダム

優秀なカスタマーサクセスチームを編成したい場合、まず最初にすべきことは何ですか?

 

キャサリン

カスタマーサクセスチームをゼロから立ち上げる場合、あなたが最初にすべきは、まずは自ら仕事をして成果を出し貢献することです。最初のカスタマーサクセスマネジャーになるのです。

 

私はかつてチームをゼロから立ち上げた経験があります。その時まずしたことは、最初のメンバーを採用することでした。「彼らはWikiコンテンツを実際に書いたことがあるだろうか?」、「私が今毎日している仕事を彼らはできるだろうか?」、「私は仕事を上手くこなしてるのだろうか?」と考えながら。

 

メンバーを採用した後は、「彼らは私が書いたwikiコンテンツを見ただろうか?」、「それを編集しただろうか?」」という点を気にします。彼らには、私のコンテンツに自由に手を加え、生き生きと呼吸するような文書にしてもらうのです。それができると、とても嬉しい気分ですよ。

 

逆にそれができなければ、チームが5人、10人、20人と拡大していった時、チーム全員の知識を全部自分で記録するなんてできませんから。

 

アダム

それはエンプロイ―のオンボーディングプロセスですか? つまり、あなたのおっしゃるエンプロイ―サクセスの第1フェーズですか?

 

キャサリン

よいポイントですね!そうだと思います。

 

新しく採用されたチームメンバーが最初に経験するのは、新しい仕事に着手する方法を知ることです。もしwikiに馴染みがあるなら、入社オリエンテーションをwikiを使って自分でやりたいと思いませんか?

 

新人さんは、何をどうすればいいのか分かりません。けれど読むべき重要なリンクや文書をチェックすることは必須です。そういう時、新人の方には wikiで自ら学んでほしいのです。wikiを見に行けば自分で学べます。更に、wikiに記載された情報の改善にも貢献してくれると嬉しいです。チームがまだ小さければ、不足していたり編集が必要な情報があるかもしれません。

 

この方法は、トレーニングビデオやトレーニングモジュールを使った公式な入社オリエンテーションとは対照的な方法で、素晴らしい方法だと思います。もちろん公式の入社オリエンテーションにもいずれ参加してもらうのですが、wikiに書かれている情報を学べば入社オリエンの内容も理解することができます。

 

アダム

あなたとエンプロイ―との年次タイムラインのようなやり取りの様子を教えてくれますか?

 

キャサリン

とても重要な質問です。なぜなら多くの場合、パフォーマンスレビューのタイミングや、コーチングが必要になるような危機が発生するまで、エンプロイ―である部下とやり取りしない人が多いからです。

 

私はエンプロイ―とやり取りする方法をいつも考えています。つまり、現場のリーダーやマネジャーには私の代理人として動いてほしいので、彼らとは毎日やり取りする必要があります。時々、今コーチングが必要だと思う瞬間があります。そういう時こそ、本当にコーチングが必要ですし実際にそうします。トレーニングのような時間です。偶発的に起こる時もあります。カスタマーに危機が偶発的に生じる瞬間のようなものです。

 

あるいは、誰かが何かよい行動をしたり、実際に良い仕事、正しい仕事を達成した時にもやり取りします。良いことを祝うという意味で、それは本当に重要かつ意味あることです。

 

一方、会話にはある程度のフォーマリティが必要だとも言っています。残念なことに、フォーマリティの低い会話は増える傾向があります。「ちょっとオフィスへ来て、あなたの担当するカスタマーについて話してください」と言い、彼らとカスタマーについて話したとして、あまり重要でないとりとめない話だと、何を話したいのかポイントを見失うことがあります。

 

逆にフォーマルに時間をとれば、カスタマーと今どういう状態なのか、計画に対して今どうなのか、どういう計画だったかなどを一緒にきちんと考えられます。それが私たちの1年間のベースになるやり取りです。毎年の年初に目標を設定し、目標達成に向け必要なこと、今年1年の重点ポイント、何をもって成功とするか、などをしっかり話し合います。その後、彼ら自身のエンプロイ―サクセス計画を整理し、フォーマルなチェックイン時間のおよそのマイルストーンと、次回の予定を決めます。

 

そういうやり取りを普段からしているので、パフォーマンスレビューの時にはお互い内容が予測でき、話すべきことが明快になっています。寝耳に水のような話には決してなりません。何度も話しているからです。

 

その後、才能(タレント)レビューの話に移ります。

 

そうやって集めたあらゆるデータを踏まえ、誰が新しい役割や課題に取り組む準備ができているかをマッピングします。

 

アダム

組織の中でエンプロイ―サクセスに責任をもつのは誰でしょう? カスタマーサクセスのVPですか? それともそれを仕事とする誰か他の人ですか? 皆さん超忙しいですよね?

 

キャサリン

そうですね、それは会社の大きさ次第ではないでしょうか。重要なのは、組織にいる全員がエンプロイ―サクセスを重要だと認識することが必要だという点です。本当にそれはとても重要です。

 

その上で、組織が大きくなり始めた時、「エンプロイ―サクセスのことを時間を使って考え実行に移す人を採用する必要があるか?」、「それともカスタマーサクセスチームがするべきか?」、「いや、HRチームがするべきでは?」など考えるでしょう。

 

最も重要なのは、どの部門が責任を持とうとも、あなたの会社がエンプロイ―サクセスにきちんと時間を投資できているという点です。

 

アダム

すべてが順調に進み、あなたはエンプロイ―と一緒に進歩を果たしたとしましょう。彼らが引き続きあなたの会社で働くことにやり甲斐を持てているかどうか、どうやって確認しますか?

 

キャサリン

成功や勝利を祝うことがとても重要だと思います。 カスタマーの成功をどう一緒に祝うべきか、皆さん色々考えるでしょう。エンプロイ―の成功も全く同様に重要です。

 

エンプロイ―が偉大な仕事をし、そのことに高い熱意を持てているなら、それは、大勢の人がそこから学びを得られる瞬間でもあります。同時に、彼らがチームに留まろうと思うキッカケにもなります。要は勝利を祝う文化を醸成するということです。

 

素晴らしいセールス文化のある企業を何社も知っています。どのような職場でも、セールス文化には皆さん馴染みがあるでしょう。カスタマーサクセスにも同じような文化を根付かせる必要があると思っています。

 

かつて私が働いていた Jigsaw社で、私の所属する部門は契約更新の責任を担っていました。目標を達成した時は皆でお祝いしたものです。誰が今月のノルマを最初に達成するだろうか?とみんなが注目し、達成した人にはカップを渡しました。抜け目ない同僚がある月の更新目標を最初に達成した時、私は彼にスターバックスのカップにスターバックスの小さなカードを添えて渡しました。素晴らしかったのは、誰もが自分のカップを積み重ねるチームスピリットになったことです。実は1人、休暇中に更新目標を達成できた人がいて、彼は休暇先でスターバックスを飲んでいる自分の写真を撮って送ってきました。「キャサリン、コーヒー代は君に請求するよ!」と書き添えて!

 

アダム

リーダーであるあなたは、エンプロイ―サクセスに対し、自分の時間の何%を割きますか?

 

キャサリン

カスタマーサクセスに対して割く時間と全く同じです。時にはそれ以上になる場合もあります。なぜなら私のチームには常に120%の力が発揮でき、成功できる状態になっていてほしいからです。

 

私は本当に毎日、毎週、「彼らが今必要としている情報は何か?」、「良い仕事ができているかどうかを、どうやって測定すべきか?」考えています。カスタマーに対するのと同様に、エンプロイ―サクセスを実現するためにも羅針盤となる指標が必要です。

 

「離職リスクのあるエンプロイ―はいるか?」、「リスクスコアは上昇してるか?」、「新人さんのオンボーディングは順調か?」、「期待と成果のギャップはないか?」、「私たちに伝えたいことはないか?」を考えながら常に微調整します。なぜなら、離職者が出たり、力を発揮できない人がいないようにするには、そうすることが必須だからです。

 

アダム

ハイパフォーマーを育てるために何をしていますか?

 

キャサリン

それは、急成長できる人を早々に見定めることです。特に組織が大きく成長しようとしている時こそ、それはとても重要です。

 

皆さんご承知のとおり、”才能の取り合い戦争” がおきています。誰もが優秀なカスタマーサクセスマネジャーを採用したいと思っています。「あなたの所は何人ですか?」、「弊社は人を募集しています!」、「うちも募集中です!」、「弊社は人がたくさん必要です!」 と皆さん言います。なので、優秀な人材は他社に取られないようキープする必要があります。

 

カスタマーを取られないように良いプログラムを用意するように、優秀な人材を守るための良いプログラムを持つことが大切です。カスタマーサクセスで実施することを、エンプロイ―サクセスに読み替えることで、私たちは本当に潜在能力の高い優秀な人材を特定できるようになりました。

 

既存カスタマーとよい関係を維持する、という仕事をするだけで満足な人もいます。しかしより重要なのは将来のリーダー候補を見い出すことです。カスタマーサクセス責任者候補がいなければ、育てなければなりません。誰が成長できそうか、もっとマネジャーを追加する必要があるか、などを考えます。

 

私たちは自分たちのために、私たちが求める向上心をもったリーダーはどういう人材か、リーダーを育てるためにどういったプログラムを用意すればよいか、時間をかけて考えています。社内から人材を見つけて育てるべきか、外から採用するべきか、どちらがカスタマーそしてエンプロイー、共に私たちと長く関係を持ち続けてくれる素晴らしい方法なのかを検討します。

 

アダム

素晴らしいプログラムですね、もう少し詳しく聞かせてくれませんか?

 

キャサリン

はい、実際それはOracle社の強みの一部です。

 

私たちは世界クラスのリーダーを育成するため、驚くほど多くのリソースを抱えています。それは、私がOracle社の一員であることに誇りを感じる理由の1つです。

 

それは、エンプロイ―にも正しく伝えたいことでもあります。私たちは社内で将来のリーダーを育成する方法を時間をかけてよくよく考えているのです。

 

それは明らかに、ピープルマネジメントという側面に閉じるものではありません。初めてリーダーシップ職に就いて成果をだしてもらうため、本当に優秀な人材に習得し身に着けてほしい、より大きな素晴らしい概念があります。それは「変化を管理する(managing change)」という概念です。

 

私たちの業界は、カスタマーサクセスチームでさえ、スピーディに変化できなければなりません。リーダーはチームの最前線に立ち、リジリエンス(訳者注:非常に困難な状況でも挫けず逆境に打ち勝つ力)を発揮できなければなりません。変化のインパクトについてどう周囲に上手くコミュニケーションするのか? それは重要なスキルの1つです。

 

私たちはそういったことを長いこと考えています。私たちが社内で人を育て、彼らがリーダーシップを発揮するポジションの第1歩を踏み出すことができるのを支援する素晴らしいプログラムを完成させられたことを、本当に誇りに感じています。

 

アダム

優秀な人材を惹きつけ、Oracle社でのカスタマーサクセスの仕事にやり甲斐を感じ続けてもらうために何をしていますか?

 

キャサリン

私たちは、特にマネジャークラスやリーダークラスの人たちのことを考えます。なぜなら退職する人の多くは彼らの上司であるマネジャーやリーダーと合わないのが理由だからです。でしょう? 会社と合わないからではないのです、結局、人です。

 

従って、先ほどマネジャーやリーダーをどうトレーニングするか説明しましたが、その点が非常に重要です。

 

一方、マネジャーとリーダーを守るために私たちは何をすべきか? それは、彼らに特化したプログラムを持つことが非常に重要です。

 

中でも私が決定的に重要だと思うのは、彼らが得意分野でソートリーダーシップ(訳者注:Thought Leadership。特定分野において将来をリードする先端かつ革新的な意見や思考を提示し周囲の議論や合意を創造する力)を発揮してくれることです。

 

私たちは素晴らしいことを沢山しています。ですので、彼らには自分ブランドを構築し、それを梃(テコ)に世界中のリーダーと交流し、自分たちが何をしているのか分かち合ってほしいのです。ソートリーダーシップがあれば、自分がワクワクしているのはなぜか、何にどんな遣り甲斐を感じているのかを話す機会に恵まれます。そして、それはとても特別な機会だと思うのです。

 

またそういう機会を通じ、自分1人で出来ること以上のことを成し遂げられるような良き人たちと繋がれることも、非常に重要なことです。

 

アダム

それは素晴らしいことですし、大変興味深いです。でも一体それ、どうやるんですか?

 

つまり、ソートリーダーシップを奨励するというのは、ちょっと期待が高そうです。そう、あなた自身が興味深い例かもしれません。あなたはカスタマーと日々話をしながら、同時に偉大なソートリーダーでもあります。この2面をどう両立させているのですか?

 

キャサリン

そうですね現実問題、私たちは日常業務に追われています。

 

私自身は、自分はマネジャーだと思っています。私が責任をもつ、私のカスタマーというべき社員/部下を大勢抱えていますし、同時に私はカスタマーサクセスマネジャーであり、大勢のカスタマーを担当しています。

 

私たちはチームメンバーに対し、どんな手段、どんな機会もどんどん活用してほしいと奨励していて、実際そうできるようサポートしています。それがバランスのとれた行為だと思うからです。そして1人ひとりに、何か少しストレッチが必要な役割を持ってもらうようにしています。

 

ストレッチな役割というのは全く別テーマの話ですが、実はそういったストレッチ課題というのが、イベントのコンテンツを提供するのに役立ったりするのです。あるいは、私たちがカスタマーやカスタマーサクセスをリードするのに必要な特定記事を開発するのに役立ったりもするのです。

 

私自身は、自ら日常業務を超えて新しいことに挑戦しなければならないと自覚しています。それが結果的に、日常業務に役立つヒントを得たり、カスタマーとの絆を深めることに繋がるからです。なぜなら、新しいことへ挑戦すると、日常業務の壁の外で起きていることに目を向けることができるからです。それはとても重要なことです。そうする時間を与えられた人は、与えられた以上の価値を会社へ返そうと貢献してくれます。

 

アダム

仮に今、私がカスタマーサクセスマネジャー数人のチームを管理するカスタマーサクセスリーダーだとしましょう。カスタマーサクセスマネジャーに良い仕事をしてもらうために、他に何かできることはありますか?

 

キャサリン

もちろんあります。実際、私たちがそれなりの時間を使ってマネジャーやリーダーを指導しているがいくつかあります。

 

1つ目は何といっても素晴らしいトレーニングプログラムです。このプログラムは、私も偉大な同僚と一緒に開発に関わりました。

 

リーダーにとって、チームメンバーに対し、何をすべきか・どうしたら良いかの答えを教えることは簡単です。その方が本当に簡単なのです。

 

例えばメンバーがあなたの元に来て「大変です、私のカスタマーに火がふいてます!」といって状況を伝えてきたとしましょう。あなたは何をすべきか完璧にわかります。でも「あなたがすべきは・・・」と1つ1つ指示したなら、それは彼/ 彼女の成長に繋がりません。

 

答えを伝える代わりに「意味ある問かけをする」ことに辛抱強く多くの時間を使う必要があります。そうすることでクリティカルシンキング(訳者注:課題を客観的・論理的・合理的な視点で分析し最適解を導く問題解決思考)スキルが磨かれるのです。

 

なぜそうするかといえば、そうしなければ、あなたがすべての問題に解を見つけて指示しなければならなくなるからです。そんな状況を想像できますか? だってあなたの時間は有限です。そんなことしていたら自分の時間をスケールさせられませんよね?

 

ですので、「答える代わりに問いかける」はとても重要なことです。それこそ私たちがカスタマーサクセスマネジャーに成長してもらうためにしていることです。正直に言えば、そうすることで私たちチームはかなり成熟しました。

 

もう1つ、とても重要だけれど往々にして見過ごされている点があります。マネジャーが大切な正にその瞬間に部下をコーチングすることが重要、と同時に、部下の一定期間の成果を確認するためのフォーマルなレビュー時間も重要だ、と先ほどお話しました。そのフォーマルなレビュー時間に関係することです。

 

先日、私が毎年主催しているリーダーシップサミットで少しだけ練習をし、新しいタイプのスキルをチームに訓練させ、スピーディに浸透させました。そのうちの1つは「引き留めインタビュー(stay conversation)」と呼ぶスキルでした。

 

ある人が退職する時に「退職インタビュー」をしますよね? 私たちのは、退職する前なので「引き留めインタビュー」なのです。そしてそれは本当に効果的です。

 

具体的にはこういった会話です:

「私は、あなたの貢献に本当に感謝しています。あなたの関心をもっとよく知りたいのです」

「私たちは、あなたが本当にやり甲斐をもって働けることが重要だと思っています」

「XXでは、あたなは本当に素晴らしい良い仕事をしてくれています」

「少なくともあと2、3年、あなたがここで働き続けてくれるため、私たちにできることはありますか?」

 

おわかりですね?

ですので「退職インタビュー」ではなく「引き留めインタビュー」なのです。

 

アダム

すでに成功しているカスタマーよろしく、活躍しているエンプロイ―にも積極的に声をかけて、彼らを次のレベルへと引き上げ、成長してもらうの見守るということですね。

 

キャサリン

その通りです。そしてそういうことを、マネジャーの皆さんの「すべきこと」リストにしっかり載せるよう指導しています。

 

私たちは一般的に、カスタマーに問題はないと思いがちです。「僕の担当するカスタマーは大丈夫」、「彼らは素晴らしいよ」、「プロダクトをばっちり使いこなしてる。問題は全くない」

 

でも本当にそうでしょうか?

 

データでは順調に見えても、その裏側まで確認するような深い質問はしていないのです。

 

アダム

なるほど。今日は大変興味深いお話しを聞かせてくださり、有難うございます。

 

(原画)

 

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