優秀なカスタマーサクセスマネジャーを採用、育成し、活躍し続けてもらう方法

先の投稿「最高のカスタマー体験:凄いアイディアが湧き出るチームの法則」は、アイディア溢れるチームには多様性が重要、という話でした。今回は1歩基本に戻り、そもそもカスタマーサクセスチームをどう編成するの?という視点で、人材のスキルや特性について書かれた記事をご紹介します。

 

著書のジョン・ケリーさんは欧州で活躍するカスタマーサクセスのエキスパートで、昨年も記事「人材投資 vs テクノロジー投資 それが問題だ!」を紹介しました。ケリーさんの記事は、教科書的になりがちなテーマでもキラリと光る洞察が溢れ、個人的に愛読しています。

 

今回も、「カスタマーケアDNA」や「レジリエンス(逆境に強く物事をやり遂げる力)」など重要キーワードをサラッと言及していて、センス良いなーと思いました。ぜひ皆さんもお楽しみください。

 

注:著者John Kelly氏の許可を頂き原文の和訳を紹介します


 

あなたの会社のカスタマーサクセスチームにどんな人材を採用し、育成し、どう活躍し続けてもらうか

専門キャリアとしてのカスタマーサクセスは、主にB2B SaaS業界を中心に、わずか数年で急成長を遂げました。企業はもはやカスタマーサクセスの考え方を勉強する段階を終え、今現在は大きな投資をする段階、つまりカスタマーサクセスチームの構築と人材育成に取り組んでいます。

 

この記事では、優秀なカスタマーサクセスマネジャーが兼ね備えるスキルと特性、カスタマーサクセスマネジャーに適性した人材が集まる場所、そしてカスタマーサクセスチームを編成し強化する方法についてご紹介します。

 

求められる人材のスキルと特性は?

カスタマーサクセスマネジャーの役割をたった1つに定義できないことは周知の事実です。彼らの責任範囲は、スタートアップ、中小企業(SMB)、大企業など企業の成熟段階で大きく異なります。しかしカスタマーサクセスマネジャーに適した人材を探す際に注目すべき普遍的な特性というものはいくつかあるのでご紹介しましょう。

 

・カスタマーとコミュニケーションし、関係を構築し、状況を管理するスキル

 

・知識を共有し、他者の成功を支援することへの熱意

 

・自社内だけでなくカスタマー企業の観点も踏まえた技術への精通

 

・プログラム、プロジェクト、およびプロセスへの深い知識

 

・営業チーム、リニューアルチーム、サポートチームなど社内関係者グループとの利害調整

 

・個性としてのレジリエンス(逆境に強く物事をやり遂げる力)

 

カスタマーがプロダクトを購入後、オンボードからアダプションへと進むにつれ、より多くの工数やサービスが必要なことが多く、それらのニーズに対応できればアップセル機会に繋がります。

 

そもそもカスタマーサクセスのプロセス全体が、サブスクリプション契約が確実に更新されるよう、カスタマーが価値を爆速で実感できることに重点を置いています。つまり、アップセル機会や契約更新が目的であるがため、以下の能力が発揮されることが期待されます。

 

・営業的な洞察力

 

・契約更新マネジメント

 

出会いたい人材はどこにいるのか?

 

カスタマーサポート

カスタマーの課題解決が上手いカスタマーサポートエンジニア、中でも特に、割と積極的にカスタマーと関わり良好な関係を維持することが必要とされる企業でサポート経験のあるエンジニアの人たちは、優れたカスタマーサクセスマネジャーになります。

 

同様に、かなり重篤な状況のマネジメントやカスタマーの上級意思決定者らとのやり取りを任されている人も、貴重なカスタマーサクセスマネジャースキルを持っています。

 

彼らは技術的なスキルに加え、1)カスタマーケアの「DNA」と、2)個性としてのレジリエンス、という定量化が難しい2つの不可欠な特性を持っています。

 

1.カスタマーケアの「DNA」

カスタマーをサポートすることに熱心な人のことです。重大な困難に直面すると、彼らは頻繁にコミュニケーションを取り、組織的に行動し、サポートするのに必要なことは何でもするとカスタマーに伝えます。最も要求の厳しいカスタマーでさえ、それに気づき評価します。つまり永続的な関係と強い忠誠心を構築する力。

 

2.レジリエンス(逆境に強く物事をやり遂げる力)

難しい問題の解決と感情的な緊張状態を大幅に強いられる役割を担う人たちとレジリエンスとの重要な関係性に関する研究はこれまで何度も行われています。 1日8〜10時間、毎日、カスタマーの問題に直面する役割は、時に担当者へ大きな負担を強います。成功するには、個性としてのレジリエンスが必須です。つまりカスタマーの要求や感情的な緊張をマネジメントする力。

 

トレーニング&教育

社内トレーナー、特にプロダクトやプロセスに関する技術的要素を教える人たちは、素晴らしいカスタマーサクセスマネジャーになります。彼らは知識を共有する経験があるので、オンボードなどでは即戦力として全力で活躍してくれます。

 

トレーナーはコミュニケーションスキルも十分高く、少しサポートすれば、社内カスタマーのサポートから社外カスタマーのサポートへ素早く移行できます。経験豊富なトレーナーは、ライブやオンラインでのクラス設定に必要なロジ管理や、優れたファシリテーションスキルを持ち、コンテンツ作成もお手のものです。

 

営業

“営業的な洞察力”を持つ人たちも、カスタマーサクセスマネジャーの役割がアップセルまでカバーされてる場合、最適なカスタマーサクセスマネジャーになります。

 

規模拡大するSaaS企業では一般的に、カスタマーサクセスにおいて収益拡大をあまり強調せず、他の重点分野を優先することで、営業 vs サポートといった利害対立を抑制する傾向があります。

 

特に新規カスタマー獲得で大手柄を上げた営業マンをカスタマーサクセスのポジションに採用する場合は明快な理由が必要です。

 

事業を深く理解しつつ営業以外のポジションに関心のある営業マンは、強力なカスタマーサクセスマネジャー候補者です。カスタマーへの強い共感を持ち、カスタマー獲得よりもカスタマー維持を重視するアカウントマネージャーは、新規のカスタマー獲得を優先する人たちよりカスタマーサクセスに向いています。

 

カスタマーサクセスと営業とを連携させて収益確保に重点を置きたい企業では、管理職レベルにセールスリーダーをおくと、優れたカスタマーサクセスリーダーになります。

 

カスタマーサクセス

カスタマーサクセスの経験を持つ候補者は、必要なスキルを持っているかもしれませんが、決して絶対に適任とはいえません。仮に役職名が同じでも、通常カスタマーサクセスの役割は企業により異なります。カスタマーサクセス、オンボード、リニューアルの役割を区別する企業もあれば、アカウント管理と営業/収益責任を含めてカスタマーサクセスと定義する企業もあります。

 

営業オペレーションとビジネスインテリジェンス(BI)

カスタマーサクセス部門は、データ分析をしてカスタマーをセグメント化し、オンボード状況を把握し、アダプションの程度を追跡し、サポート依頼チケットを関連付け、ヘルススコアを計算し、業績評価指標や事業への寄与状況を追跡します。

 

つまり、データ分析のスキルとビジネスインテリジェンスの必要性は、カスタマーサクセスチームの規模が拡大するにつれよりますます重要になります。

 

他部門で営業オペレーションとビジネスインテリジェンスの役割を経験した人は転用可能なスキルを持っているので、カスタマーサクセスの役割に容易にシフトできます。

 

優秀な人材の育成とリテンション

有能な人材を引き留める最良の方法は、必要な役割、能力、特性を極めて明確に定義することです。そうすることで離職率を下げ活躍率を大幅に改善できます。

 

せっかく優秀な人材を採用できたのに、カスタマーの問題解決に始終させて疲労したり燃え尽きたりするのを避け、カスタマーサクセスマネジャーの育成を軌道に乗せるには、以下のキャリア開発戦術が有効です。

 

・カスタマーライフサイクル全体(オンボード、アダプション、およびリニューアル)をジョブローテーションで経験させる

 

・1対多のカスタマーマネジメントから、1対1のカスタマーマネジメントまで、幅広くチームメンバーを育成する

 

・トレーニングとコンテンツ開発の役割を担う人たちとカスタマーサクセスマネジャーを連携させる

 

・必要に応じ、ビジネスインテリジェンスやカスタマーサクセスオペレーションへチームメンバーを配置転換する

 

・カスタマーサクセスマネジャーに対し、チーム内のリーダーシップが必要な仕事を追加で割り当てる

 

カスタマーサクセスマネジャーのレベルをコンピテンシーレベルでマッピングする「チームコンピテンシーマトリックス」というツールを用いれば、カスタマーサクセスマネジャーの育成パスを作成したり、体系的に育成を行うのに効果的です。このようなマップは、カスタマーサクセスマネジャーの候補者に見せて、チームのマネジメントに関心を持ってもらうのにも非常に効果的です。

 

報酬戦略

報酬戦略は人の行動に大いに影響を与えます。

 

カスタマーサクセスマネジャーをアップセルの実績で評価し報酬を与えるなら、それは彼らの営業活動を促すことを意味します。報酬は事業の成功に繋がる行動を引き出すよう設計しなければなりません。アップセルが重要要件なら、収益目標を与え、目標達成%次第でボーナスの額を上げましょう。

 

カスタマーサクセスよりも営業が優先されるリスクを回避するには、ボーナスの計算にネットプロモータスコア(NPS)などのカスタマー満足度基準を含める必要があります。

 

組織連携

組織の規模が拡大するにつれ、カスタマーサクセスに必要な機能やチームが分散的に拡充する傾向があります。オンボード、アダプション、カスタマーサポート、エスカレーション管理、オンサイトサービス、リニューアルなどです。この分散的拡充に伴うリスクは、チームが独自指標で独立的に動き、カスタマーの状況や実態を把握できなくなることです。

 

経営構造、経営管理指標、責任範囲などの点では明快であっても、チームの目標と努力の方向性がカスタマーサクセスに完全にマッチしない可能性があります。そうならないために、共通の指標・プロセス・構造に基づいた共通目標に向け、チームが連携して機能しているかを定期的に評価することが重要です。

 

カスタマーサクセスチームには、カスタマーがプロダクトに価値を見出し、企業が事業で成功するために、さまざまな役割を果たすキャラクターが必要です。カスタマーサクセスチームにはそれぞれに固有のニーズがありますが、良いニュースは、何を押さえておくべきかさえ明快ならば利用可能な才能が既に存在している点です。更に、カスタマーサクセスマネジャーのポジションは非常に人気があり、増大する候補者たちにとっても大変魅力的なキャリアです。

 

残された課題は、1)目標に向けチームを統合し、訓練し、サポートできる優れたチームマネージャーと、2)チーム編成を可能にする予算、なのです。

 


 

著者?John Kelly氏?について
CustomerLink社のマネージング・ディレクター。同社は、ヨーロッパを拠点にSaaS企業に向けてカスタマーサクセステクノロジー&サービスを提供する会社であり、Natero社のEMEAにおけるエクスクルーシブ・パートナー。

 

(原文)

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