G-ガイド #02 チャーンとは

Gainsight社の豊富な資料の中からカスタマーサクセス初心者に向けたガイド “The Essential Guide” の和訳版を「G-ガイド」と名付けてシリーズでお届けします。

 

#01 カスタマーサクセスとは
#02 チャーンとは      ←今回これ

 

注:Gainsight社の許可を頂き原文の和訳を紹介します。


 

現代社会では消費者がパワーを持っています。SaaS事業や定期収入モデルの事業では特にそうです。誰もがソフトウェアソリューションを限りなく無限に手に入れ、「サービスをキャンセル」をクリックするだけで簡単に「さよなら」できてしまうのです。

 

言い古された言葉ですが「測定しないものは管理できません」。

 

デジタル時代に最も実用的なデータは、カスタマー単位のパフォーマンスを測定するデータです。それは今のパフォーマンスを今後も維持できるか知ることができるデータポイントです。そしてそのカスタマー単位の指標の王様は・・・そうチャーンです!

 

第1章 チャーンとは?

 

チャーンを構成する要素は専門家により少しずつ解釈に差があります。しかしその核心部分は同じです。即ち、あなたの事業のカスタマーがチャーン(契約離脱)するスピードを示すものをチャーンと呼びます。言い換えれば、カスタマーがどれだけ早くキャンセルボタンをクリックするかです。

 

Investopedia社はチャーン率を定義します:特定期間中にサービスの継続を中止した利用者の割合

 

上記の定義に従えば、ある期間中に失ったカスタマー数を同期間開始時のカスタマー数で割ることでチャーン率を算出することができます。数式にするとこうです:

 

(失ったカスタマー数)÷(当初のカスタマー数)

 

たとえば月初のカスタマーが20人だったとして、その月に1人失った場合の月次チャーンは5%です。なお新規カスタマーはこの計算に含めないことにご注意ください。新規は翌月の計算で加味されます。結構シンプルでしょう?

 

シンプルなんですが、収入を見える化しようとすると少しだけ複雑になります。チャーンにはいろいろな測定法がありますが、通常、企業はチャーン率が収益に与える影響を一番気にするので、収益の観点からチャーンを算出する方がいいでしょう。そうなると数式は少し複雑になります。

 

収益チャーンを把握するには、月次の定期収益(MRR; Monthly Recurring Revenue)を把握する必要があります。

 

TechTarget社はMRRをこう定義します:企業が30日ごとに確実に期待できる収入

 

この数字で、ある特定の月に失ったMRRを割ります。その時、既存カスタマーからの追加収入(つまりアップセルとクロスセル)は除いてください。計算式に新規収入を含めてしまうと、実際に失った収入額にブレが生じます。チャーンの計算では実際に失った収入額が本当に知りたいデータポイントです。

 

説明を簡素化するため、すべて月単位の計算としましょう。収益チャーンはどんな期間単位でも計算できますが、設定した期間に相対する収入関係の数字を使う必要があります。たとえば四半期の収益チャーンを計算するには、MRRのかわりに四半期の定期収入を使わなければなりません。

 

期間設定に関する一言メモ:
四半期など長期のチャーンを計算する場合は注意が必要です。evergageの記事によると「第一四半期の初月の売上は翌月や翌々月にチャーンされやすい。こういう傾向が誤ってチャーンの計算に含まれるとチャーンは過剰に計算される」

 

今回は説明を簡素化するため月単位のチャーンを見ていきます。先の記事の例を見てみましょう。月初のMRR10万ドルが、月末には8万ドルだったとします。期間中、既存カスタマーからのアップグレード1万ドルを追加します。結果、収益チャーンは次のように計算されます。

 

(($100,000 ? $80,000) ? $10,000) ÷ $100,000 = ($20,000 ? $10,000) ÷ $100,000 = ($10,000) ÷ $100,000 = 0.1 = 10%

 

第2章 カスタマーチャーン vs. 収益チャーン

 

カスタマーチャーンは必ずしも収益チャーンと一致しません。プロダクトラインやサービスパッケージが複数ある企業では確実に一致しません。複数の価格単価が存在するからです。収益チャーンの観点では、あるカスタマーは他のカスタマーより価値が高いということです。先の計算例の発展形として別の例を見てみましょう。

 

プロダクトラインは2つ。カスタマーが1万人いる月々2百ドルの基本サービスのMRRは以下の通りです:

 

10,000 X @200 = $2,000,000

 

一方、カスタマーが5千人で月々5百ドルのプレミアムサービスーのMRRは以下の通りです:

 

5,000 X? @500 = $2,500,000

 

合計すると、カスタマー15,000人のMRRは$4,500,000です。

 

ひと月に基本サービスのカスタマー?500人とプレミアムサービスのカスタマー100人を失う場合、カスタマーチャーンは以下の通りです:

 

(500 + 100) ÷ (15,000) = (600) ÷ (15,000) = 0.04 = 4%

 

一方、収益チャーンを計算するには関連する収益の数字を加味します。

 

((500 X $200) + (100 X $500)) ÷ ($4,500,000) = ($100,000 + $50,000) ÷ ($4,500,000) = ($150,000) ÷ ($4,500,000) = 0.033 = 3.3%

 

上記の通り、カスタマーチャーン(4%)は収益チャーン(3.3%)より高いです。この2つの指標は分けて把握する必要があります。どちらも事業に関する異なる情報だからです。

 

さらにプロダクトラインを分けて計算すれば、事業の強みがどこにあるのかカスタマーの維持と収益創出の両面から知ることができます。

 

たとえば基本サービスのカスタマーをより多く失った場合、カスタマーチャーンは少し高くても収益チャーンはそれほど悪化しません。プレミアムカスタマーの維持に集中することで、基本サービスのカスタマーを多少失っても収益上は大問題でない場合もあるのです。

 

第3章 自発チャーンと強制チャーン

 

チャーンの計算では、意図して離れていくカスタマーと、やむを得ず離れていくカスタマーを区別することが大事です。

 

強制チャーンは、あなたがコントロール不可能な理由でカスタマーがサービスを中止する場合に発生します。たとえば、カスタマーが事業そのものを終了するとか、あなたのサービスを利用する必要があった事業を売却するなどです。通常こういう理由のチャーンは計算から除外します。

 

逆に自発チャーンへは最大限の注意を払って対策を講じる必要があります。自発チャーンをするカスタマーは、あなたのプロダクトやサービスの利用を意思をもって中止する人たちです。何が原因なのか知ることでチャーンを抑制し将来の損失を回避できます。実際に損失が起きる前に予防策を講じたり、チャーンのリスクを事前に把握しましょう。それには予防に向けたプロセスやテクノロジーが必要です。

 

その点は後ほど説明します。まず先に、なぜチャーンがカスタマー単位の重要指標なのかを見てみましょう。

 

第4章 なぜチャーンは重要なのか?

 

チャーンは、あなたの事業の健全度に関する様々なことを伝えてくれます。何人のカスタマーが、?どのくらいのスピードであなたのサービスから離れようとしているかがハッキリ分かります。離れたカスタマーがどれだけ収益に直接影響を与えるかも実感できるでしょう。しかし、チャーンの影響は実はそれ以上にとてつもなく大きいのです。

 

事業経営において、新しい従業員を雇用し訓練するのに比べ、今いる従業員を維持する方がずっと労力が少なく安く済みます。同様に、新しいカスタマーを確保するより、今いるカスタマーを維持した方がはるかにコストを抑えることができます。

 

Kissmetrics社によれば、既存カスタマーの維持コストに比べ、新規カスタマーの獲得コストは実際に7倍高いです。加えてチャーンは事業の成長を遅らせます。高い成長率を維持するには、既存カスタマーを失うたびに新規カスタマーを獲得する必要があるからです。カスタマー件数が月15%増加しても、カスタマーチャーンが10%だったなら、実際の成長率は決して褒められない微々たる数字です。

 

チャーンしたカスタマー1件1件の影響は短期的には小さく見えても、創業初期の成長フェーズを越えた辺りから、その影響はぐっと大きくなります。既存カスタマーの数が増えるほど、そして毎月の収入が多額になるほど、チャーンの%に対する金銭的な損失額がグイグイ大きくなるからです。

 

この重要なポイントを、For Entrepreneursの記事の例で説明します。あるSaaSスタートアップが、最初の1か月に1万ドルの収益をあげ、その後毎月2千ドルずつ収益を増やしたとしましょう。

最初の数ヶ月間、チャーン?2.5%?は収益に大した影響を与えません。しかしMRRの拡大と共にすべてが変わります。記事の説明はこうです「5年目の終わりに近づくと、チャーンが2.5%と低くても、月々6万4千ドル失う計算です。これは新規カスタマーで埋め合わせるには大きすぎる金額です」。

 

この影響が事業の成長の足かせにならないよう、創業初期のうちからカスタマーを維持する組織能力に投資することが大事、かつ大いに価値があるのです。

 

最後に、資金調達を検討しているスタートアップは、ベンチャーキャピタル(VC)がチャーンに細心の注意を払うことを知ってください。チャーンは、VCにとり投資先のプロダクトの筋の良さと市場フィットを確認する固い指標だからです。SaaSの事業性評価において、カスタマー維持率は成長率の次に重要な指標なのです。

 

第5章 ネガティブチャーンとは?

 

ネガティブチャーンと呼ばれるものがあります。チャーンの究極の姿とも言えます。

 

For Entrepreneursの記事ではネガティブチャーンをこう定義します「 契約離脱に伴う減少収益を、既存カスタマーへのエクスパンション/アップセル/クロスセルに伴う増加収益が上回った場合のチャーン

 

先ほどの例で説明を続けましょう。新規カスタマーからの収益に加え、既存カスタマーから2.5%の収益が追加されれば、5年目には月々およそ18万ドルの収益成長を達成できます。これは契約離脱したカスタマーからの損失を補填する以上の数字です。

 

どうやったらこの魔法のようなチャーンスを実現できるのでしょうか?For Entrepreneursによれば、次の3項目のうち少なくとも1つを実行する必要があります。

 

1.エクスパンション(既存プロダクトからの収益拡大)
時間と共に増える利用量基準で料金が上がる価格モデルを使うと最も効果的に達成できます。 例えばあるクラウドサービスはより多くのデータストレージを使用するほどより高い料金を請求します。 Eメールのマーケティング会社は、Eメールのリストが増えるほどより多くの料金を請求します。

 

2.アップセル
既存カスタマーに機能がより高度な高価格帯プロダクトへアップグレードしてもらいます。

 

3.クロスセル
既存カスタマーに追加で他のプロダクトまたはサービスを契約してもらいます。

 

営業部門と協働してアップセルやクロスセルを推進する計画があるなら、既存カスタマーへの拡販強化専任チームを組成することで効果が上がるかもしれません。

 

ただし、成長フェーズにいる企業にとりアップセルとクロスセルは必ずしも最優先事項ではありません。スタートアップであればなおのこと、主要プロダクトを拡販するためにより広範囲な新規カスタマーの獲得と既存カスタマーの維持(つまりチャーン抑制)に注力すべきです。スタートアップは、価格設定、プロダクト、サポートなど、シンプルなアプローチにこだわることが何より先決です。

 

事業経営に成功し、確かな地盤ができあがってはじめて、ネガティブチャーンの戦略を立てることができるのです。

 

チャーン抑制の戦略とは?

 

企業にとり一定数のチャーンは不可避です。しかしチャーンを最小限に食い止めることは可能です。For Entrepreneursからいくつかのアイデアを紹介します。

 

1. 既存カスタマーに電話する

あなたの会社がチャーンの非常に高い初期スタートアップなら、まず最初にすべきは、解約した顧客に電話して理由を聞くことです。そして私は、起業家(またはCEO)こそがそうすることを勧めます。なぜなら、彼らこそが、顧客の声に基づいてプロダクトのビジョンやサービスの内容を変える力をもつからです。

 

解約した顧客から話を聞くことはそれほど重要で、他人へ委任できる仕事ではありません。電話で話せば、あなたのプロダクトがそもそも顧客の抱える問題を解決しないのか、それとも顧客がプロダクト活用に問題を抱えているのかなどを理解できます。結果、プロダクトを変えたりプロダクトの実装を支援する方法を変えたりすることでチャーンが改善するのはよくあることです。

 

2. カスタマー・エンゲージメントを測る

「カスタマーのハピネスを測れ」という言葉をよく耳にすると思いますが、実際それはとても難しいです。私はそうする代わりに、あなたのプロダクトとカスタマーの関与度を測定することをお勧めします。

 

具体的にはプロタクトの主要機能を特定し、その機能を使用するたびにカスタマーエンゲージメントデータベースにログエントリーを送信するのです。そして、それぞれのイベントに加重値を割り当て、カスタマーエンゲージメントスコアを算出します。

 

そのスコアを見れば、どのカスタマーがプロダクトの主要機能をうまく活用していて離脱の可能性が低いか、逆にどのカスタマーが離脱リスクが高いかを理解できます。同スコアに基づき、サポート担当者と連携して高リスクのカスタマーにプロダクトをより活用できるよう支援や助言をしたり、Eメールを送ったり、電話をしたりできます。
(このトピックは別の記事「カスタマーエンゲージメントの測定 ーコンバージョン増加&チャーン低減」も参照ください)

 

3. カスタマーを釘付けにするプロダクト特性を知る

HubSpotは創業初期にかなり高いチャーンに苦しみました。理由は、彼らの初期プロダクトがSEOにフォーカスしていたため、サイト検索の最適化を終えたカスタマーはもうプロダクトを使い続ける必要がないと思うからでした。

 

そこで同社は、カスタマーが使い続けたいと思うにはどのような機能を追加すべきか考えました。仮説の1つはユーザーの日常ワークフローの中核部分で利用されるプロダクトになること、もう1つは重要なデータの貯蔵庫になることでした。 一旦データ保存システムになれば、別のサービスへ切り替えるのはずっと難しくなります。

 

あなたのプロダクトのどの機能がカスタマーを釘付けにするのか理解していますか? それが分かったならカスタマー・エンゲージメントの測定値に基づき、どのカスタマーがその機能を使用していないか確認してください。彼らはチャーンのリスクが最も高いカスタマーです。

 

4. 解約を申し出るカスタマーに最高の営業マンを割りあてる

解約しようとしているカスタマーを解約から救うことは可能です。しかし良い結果を出すには最高の営業スキルが必須です。

 

5. 長期契約の可能性を探る

ここまでの議論は、カスタマーが月次契約を結ぶことを想定しました。チャーンを減らす1つの方法は、より長期の契約(通常、6か月または12か月)を促すことです。長期契約は、プロダクトへのコミットメントが高く、しっかり実装して成果を実現するための時間もあることから、チャーンを減らす効果が見込めます。デメリットは、営業活動を阻害することです。従い、最も良い方法は、最適レベルを見出すためのテストをしてみることです。テストと位置づければ、営業に長期契約を強制せずにもすみます。

 

6. チャーンと相関関係にある要因を見つける

もしあなたのカスタマーには小企業も大企業もいるなら、小企業カスタマーが大企業カスタマーに比べチャーンが高いかどうかチェックできます。そして収益性の高いカスタマーにより多くの営業&マーケティング活動を集中投下できます(CACとLTVの両方を考慮しましょう)。

 

ある垂直領域/リードソース等のカスタマーはチャーンが高い傾向があるかもしれません。こうして調べていくと、どのカスタマーはプロダクトフィットが不十分だとか、プロダクトをカスタマーのニーズに合うよう変更する必要があるか、などがわかります。

 

第6章 最後に

 

既存カスタマーを維持することは、事業の規模や業界に関わらず、事業を健全に経営するうえで非常に重要なことです。チャーンは既存カスタマーを維持して収益を最大化する事業推進力を示す一般的な指標です。

 

どのチャーン指標を用いようとも、あらゆるチャーン指標の真価はそれが促す予防行動にあります。チャーンに繋がってしまう要因を掘り下げることができれば、カスタマーサクセス戦略が改善される多くの機会に光が当たることでしょう。

 

(原文)

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