
by 稲田 和絵
『実践カスタマーサクセス』第3期が2022年4~8月に開催されました。
講師陣には、カスタマーサクセス部門を統括する現役リーダー達が、企業の垣根を越えて集結。受講生は講座を通して、自社の実務に即した実践的なアウトライン「カスタマーサクセス計画大綱」を作成しました。
プログラム修了後、それぞれの現場でどのような成果が生まれているのか、受講生のリアルな声をお届けします。本記事では、グローリー株式会社 DXビジネス推進統括部 DXビジネス推進部 専門部長の佐藤直哉さんのお話をご紹介します。
105年の歴史をもつ機械メーカーの中で、リテンションモデルの事業推進に苦労する佐藤さん。講座で作成した「カスタマーサクセス計画大綱」を基に、経営層や自部門、プロダクト開発部に対しカスタマーサクセスの必要性と重要性を伝え続けてきました。その結果、組織体制が刷新され、リテンションモデル事業の本格展開に向けた準備が進んでいます。
目次
1. この事例のポイント
● 中期経営計画で、モノ売り切りモデルとリテンションモデルのクロス成長を掲げたが、実際の進行状況は思わしくなかった
● 講座で作成した「カスタマーサクセス計画大綱」に基づき社内で啓蒙を開始。少しずつ理解を得られるようになった
● 営業とカスタマーサクセスの機能と役割を明確に分けた新組織体制が始動。リテンションモデル事業の本格展開に向けた準備を進めている
● シニア雇用(定年後の再雇用)4名がチームに参加。講座で学んだ「従業員サクセス」の概念を活かして良好なチーム作りが始動している
● カスタマーサクセスはSaaSだけのものではない。実店舗を有する事業にも重要な取り組みだと確信している
2. 所属企業・担当ビジネスについて
● グローリー株式会社は、創業105年、世界最大の通貨処理機メーカー
● 銀行を中心とした金融機関向けの通貨処理機、小売店のレジで使用されるつり銭機、電子マネーなどの決済関連機器の開発、製造、販売、およびメンテナンスがコア事業
● 中長期の成長戦略としてコア事業と新領域事業のクロス成長を目指している
● 佐藤さんは、新領域事業のDXビジネス推進統括部 DXビジネス推進部の専門部長
● 独自の認識技術を応用した流通・飲食店舗のDX支援として、行動データの収集・分析・効果検証に基づく顧客ビジネスの成功に伴走している
3. 受講開始時の課題を教えて!
弊社は、通貨処理機メーカーとして圧倒的な世界シェアを誇っています。つまり、モノ売り切りモデルで大成功したため、リテンションモデルになかなか舵を切れない。それが大きな課題です。
キャッシュレスが圧倒的な時流です。現金流通量が減るのに伴い、通貨処理機の取引も当然減っていきます。それを見越して、「リテンションモデルの新領域事業をコア事業に重ね合わせる形で進めましょう」と中期経営計画に書きました。しかし、実際は思うように進まず、大きな危機感を持っていました。
1台数百万円の製品が、銀行の支店やスーパーマーケットの店舗に次々と売れた時代がありました。そんな魅力的な事業と真逆なのが、コツコツ積み上げるリテンションモデルの事業です。シフトの必要性は感じているものの、理解し難いのが現実なのです。たとえ理解されても、実際にリソースを割いてもらえませんでした。
また、ノウハウも圧倒的に不足していました。
関連書籍を読みあさって社内でカスタマーサクセスの概念を提唱するものの、反応は薄い。リテンションモデルのサービスをコア事業化する成長戦略は実行が危惧されました。
4. なぜ受講しましたか?
体系的にしっかり学んでから会社に提起したい、というのが受講の理由です。本を読むだけでは会社を動かすことはできない、と確信していました。
実は私、実践カスタマーサクセス第2期の受講を考えていたんです。でも、タイミングが悪くて。ちょっと遅かった。「来年こそ絶対受けるぞ」と心に決めていました。
弘子さんがカスタマーサクセスの概念を日本に持ち込んでくれたと思っています。他社の講座などは考えられませんでした。「実践カスタマーサクセス」一択です。
5. プログラム受講後の効果は?
社内におけるカスタマーサクセスの認知・理解が高まった
14週間の講座を通じて完成させた「カスタマーサクセス計画大綱」の内容を、経営層や自部門、プロダクトの開発部門に伝え、啓蒙し、実行に移しました。そうすることで、少しずつではありますが、社内の理解を得られるようになりました。
そうした折、部門のメンバー2人を 2022年9月に開講した『認定カスタマーサクセス』に参加させました。
彼らは、認定カスタマーサクセスの講義を受けるたびに毎週、当時19名のDX推進部メンバーに対して共有会を実施しました。そうして理解が進むと、部門内でさまざまな意見が出るようになりました。みんなで集まって議論したことで、理解のスピードが一気に上がりました。
お客さまとサクセスの会話を始めた
弊社は105年続く老舗なので、「グローリーだから」と信頼して契約くださるお客さまが多く、KPIや目的が明確ではないお客さまも結構いらっしゃいます。そんなお客さまと改めて、契約の目的やKPIについて話し合いました。お互いに有意義な会話になっています。
併行して、受講した3人と新たに数名が加わり、契約すべき顧客の戦略について再考し、プロダクトに合わせてアダプションパターンを再設計しています。
新たな組織体制が始動
2023年4月から、営業とカスタマーサクセスの機能と役割を明確に分け、分業体制をスタートさせました。リテンションモデル事業を本格展開するための準備です。
具体的には、モノ売り切りモデルからリテンションモデルの経営指標へと切り替えていきます。社内で報告する数字は、まだカスタマーサクセス指標になりきっていないため、啓蒙している最中です。ログインの有無などを反映したヘルススコアを開発しています。
また、プロダクト開発部門と近い関係にあるため、現在、積極的に意見交換をしています。
従業員サクセスの概念を取り入れたチームづくり
弊社では「シニア雇用」、つまり定年後の再雇用制度があります。そのシニア雇用のメンバーが4月から4名入りました。今はシニア雇用と融合したチームづくりを始めています。
シニア雇用では、それまでと同じ仕事をしていても給与が下がります。「それなら何か新しいことをしたい」と思う人もいれば、「自分を変えたくない」と思う人もいますが、概してやる気を失う人が大半です。そんな状況でも、「DX推進部に入ると楽しい」と思ってもらえるような取り組みを継続したいと考えるようになりました。
こうした点は、過去の自分だと考えもしなかったことです。実践カスタマーサクセスで、「従業員サクセスとカスタマーサクセスは両輪」と学んだからこそ得られた発想です。
カスタマーサクセスはSaaSだけのものではない
カスタマーサクセスは、SaaSだけでなく実店舗を有する事業にも必須です。実際、実践カスタマーサクセスの同期には保険業や食品事業の方がいて、「カスタマーサクセスはサービスやソフトウェアだけのものではない」と実感できたのは大きな発見でした。
弊社内でも、ここ1年、さまざまな事業部で「カスタマーサクセス」という言葉が交わされるようになりました。
我々のクライアントは、実店舗を持つ銀行やスーパーマーケットです。日頃から、集客やリピーター育成、ロイヤルカスタマーの育成など、継続的な努力を重ねられています。そのようなクライアントと一緒に考え情報収集する中から、カスタマーサクセスへの関心が生まれつつあります。
カスタマーサクセスは目的でなく手段です。
自社に最適なカスタマーサクセスのモデルは、自分たちで追求し続けなければなりません。書籍だけでは頭デッカチになるところでした。講座に参加できて本当に良かったです。
6. 受講検討者へのメッセージ
カスタマーサクセスは、弊社のようなモノ売切りモデルで成功してきた企業にとっても必要な概念であり、重要な職種です。将来的に、顧客体験を重視して事業を推進するすべての企業が、KPI達成に向けて実践すべき概念です。
そのカスタマーサクセスをいち早く日本に持ち込んでくれた弘子さん、そして、その想いに共鳴し協力している講師陣が素晴らしい。
また、実践カスタマーサクセスという学びの場で出会った同期との出会いも素晴らしいものでした。同じ悩みをもつ同期メンバーとは、今でも定期的に集まっています。このつながりは、自分にとってかけがえのない財産です。
カスタマーサクセスを実践する人なら、SuccessGAKOで学ぶことをおすすめします!
(以上)
▼カスタマーサクセスに挑戦する人が、知恵と勇気と仲間を手にする実践者コミュニティ「SuccessGAKO」
SuccessGAKO(サクセス学校)はカスタマーサクセスの未来を創る挑戦者を輩出する学び場です。カスタマーサクセスを追求するのに必要な知識を学び、自分で考え、実行することで、自社、顧客そして自身も成功することを目指す人のために誕生しました。経験豊富な講師陣による講義とメンバー限定コミュニティとが共鳴し、一方的な知識の習得でなく、仲間と切磋琢磨しながら行動することに価値をおいた実践者コミュニティです。
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