CEOが語るカスタマーサクセス #001 アーロン・レヴィ氏 Box

 

カスタマーサクセスは米国西海岸で成功したCEOの思考行動様式から生まれました。デジタル技術をつかって画期的なプロダクトを創り、カスタマーへ凄い価値を提供したいという情熱をもちながら日々カスタマーへ向き合うことに心血を注いだCEOが始めたこと、それがカスタマーサクセスの起源です。

 

Customer Success Japanはカスタマーサクセスのこの起源を重視し、ブレない視点として持ち続けるため、「CEOが語るカスタマーサクセス」シリーズを展開します。

 

記念すべき第1号は日本でもお馴染みの Box社創業者でCEO、アーロン・レヴィさんの Pulse 2017 での動画をご紹介します。

 

 

アーロンさんの話は非常にストーレトで分かりやすく示唆深いです。テック会社の創業者ですが、ノンテック会社にとってのカスタマーサクセスについても語っています。ぜひ動画を何度もお楽しみください!

 

注:Gainsight社の許可を頂き原画一部(5:40以降)の和訳を紹介します。


 

1. Box社立ち上げとカスタマーサクセスについて

2005年、私たちは大学に通いながらBoxを立ち上げました。最初は、ファイルをとっても簡単に共有出来たら超良くない? という凄くシンプルな発想から始まりました。

 

やがて、企業が多大な費用と時間と労力とエンジニアリングをファイル共有のために投入していることがわかったので、私たちは非常に簡単なソリューションを提供することで企業の問題を解決することにしました。それが2005年です。

 

当時、カスタマーサクセスのヘッドは私でした

 

当初の顧客窓口は非常にマルチチャネルだったので、私が大学で会計学の授業を受けてる最中に、カスタマーは私に電話してきて、私はBlackBerryでそれを受けていました。会計学の授業中に電話でカスタマーから「請求額が間違ってる!$ 2.99も多いよ!」言われては必死に対処し、「ファイルのアップロードがメチャクチャ遅いぞ!」と言われては必死に対処していました。

 

変な話ですが、私たちが大学を中退しようと決めた最大の理由は、カスタマーとのやりとりに膨大な時間を費やす必要があったからです。つまり私たちは、カスタマーのニーズや、私たちのプロダクトやテクノロジーに大変興味を持ってくれている人たちの中でアップアップしたため、大学を中退してすべての時間をカスタマーとのやりとりに使おうと決めたのです。

 

というわけで私たちは事業を立ち上げたごく初期にカスタマーとのやりとりに多大な時間を使いました

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2. カスタマーサクセス統括副社長(VP)を初めて採用したのはいつ?

設立当初のカスタマーサクセスは明らかにサポート寄りでしたが、カスタマーサクセス統括シニアVPのジョン・ヘイスティンが当社に来てくれて以来、よりフルサービスのカスタマーサクセスへと転換しました。6年前の2011年のことです。以来数年間、我々はその領域に力を注いでいます。

 

ジョンのおかげで、それまで我々はカスタマーサクセスを全体的な視点で捉えきれていなかったという点に気づきました

 

私たちは超最先端の電話サポートをしていると勝手に自己満足してましたが、カスタマーとのエンド2エンドの関係だとか、カスタマーリレーションそのものだとか、電話以外のあらゆるカスタマー接点をどう活かすだとか、コンサルティングのアカウント管理をどうするだとかについて、深く考えていなかったことに気づいたのです。ジョンが来てくれ、そういうトピックの検討が始まりました。

 

3. 初めてカスタマーサクセスという言葉を聞いた時の印象は?

その通り(という印象です)!

非常に納得感があり、他に表現しようがないほどその価値は明確だと確信しました。

 

私たちベンダーやあらゆるテクノロジー会社の基本的な立場を考えれば、あらゆる事業がサービスに向かうことは明白であり、そうなればカスタマーサクセスは地球上のあらゆる事業に不可避なことになり、カスタマーへ成果をもたらさねばならない、というのは我々のミッションそのものです。

 

まあ今から5年後くらいには、もしかしたら「サクセス」という言葉は冗漫になり、空気のように言わなくても自然なことになっているかもしれません。なぜならカスタマーサクセスができなければビジネスは立ち行かなくなるでしょうからね。

 

4. あなたはスタンフォード大学でディスラプションについて講義していますね?ソフトウェア業界以外では、どこでディスラプションが起きていますか?

ここにいる皆さんの中で、5年前には、まさか自分の会社がソフトウェア会社になっているとは想像もしていなかったと言う人は手を挙げてください。例えば、小売、バイオテクノロジー、エネルギー… その他すべて挙げるのは本当に難しいですね。会場のライトで客席がよく見えないけれど…90%は手を上げているかな。

 

今日、あらゆる事業がテクノロジーを活用してます。僕は「イノベーターのジレンマ」でお馴染みのスタンフォード大学で教鞭に立ってます。そう、あの偉大なベストセラー本です。皆さん、あの本はぜひ読んでくださいね!

 

ディスラプション最大の本質は文字通り、あなたとあなたのカスタマーとの関係性ですから、カスタマーサクセスのリーダーである皆さんには、あの本を読まれることを強くお勧めします。

 

イノベーターのジレンマは、新たな技術革新やビジネスモデルの変革が起きると、完全にヨソ者の会社が ”安く・早く・簡単に” できる組織能力を持って産業に新規参入し、ローエンド市場から破壊が起きるという考え方です。それは、(米国レンタルビデオ最大手の)ブロックバスターに対してネットフリックスが仕掛けた破壊のようなものです。

 

テクノロジー企業の私たちは技術による破壊/ディスラプトに慣れています。GoogleがYahooを、Facebookが僕らの領域をディスラプトした事実からそういう事態に慣れているわけですが、それにも増して興味深いのは、テクノロジー企業が非テクノロジー企業をディスラプトする時に起こることです。

 

テクノロジー企業で重視されることは、ノン-テクノロジー企業、即ちインダストリアル企業などで重視されることと全く異なります。

 

もしあなたがインダストリアル企業に属しているなら、小売業の動向について勉強しているだろうし、プロセス効率についても熟慮しているでしょう。インダストリアル業界の一員なら、小売店舗の現場や、プロセス効率の改善点や、シックスシグマなど、我々シリコンバレーの企業が考えているのとは全く異なる視点を真剣に考えていることでしょう。

 

一方、あなたはもっとアジャイルに動けるでしょうし、もっとコラボレーションできるでしょうし、今より10倍速で働く必要があります。なぜなら、ディスラプションは360度どの方角からも攻めてくる可能性があるからです。

 

Amazonのおかげで、小売業で何が起きているかは皆さんある程度想像がつきます。しかし、バイオテクノロジーやライフサイエンスではどうでしょう?それらの業界で次に何が起きるでしょう? エネルギーでは次に何が起きるでしょう? 自動車ではGoogleやアップルやその他の企業が突然現れ、既存企業群とは根本的に全く異なる方法で事業展開し始めました、というようなことを、私はスタンフォード大学の授業で話しています。

 

スタンフォード大学の授業で最も重要な学びトップ2のうちの1つは、デジタルエコノミーへ突入するにつれ、あなたとカスタマーとの関係性は根本的に変化するという点です。なぜなら、あなたはもはや ”モノ売り事業者” ではなく、”サービス事業者” だからです。

 

この中にGEの人はいますか? 10年前、GEはジェット・エンジンを売っていました。今日のGEは、納品したエンジンの ”エネルギー効率” を売っています。飛行機の整備時間や、メンテナンス時間のダウンタイムを削減する方法を売っています。そしてそれは明らかにサービス事業です。

 

GEでは、皆さんがそうするように、我々がそうするように、そしてセールスフォースがそうするように、日常業務の進め方を再考し、カスタマーとの関係性を分析し、そのデータ分析結果を踏まえ、他のテクノロジー会社と全く同じ方法で、どの製品がどのように動作しているかを分析しています。

 

皆さん、GEはシリコンバレーの会社ではないと思うかもしれません。でもこのグローバルな世界で事業をどう展開するか、皆さんどうやって学んでいますか?私たちはあらゆる業界で活躍する人たちから学ぶことが沢山あります。

 

最終的にカスタマーとベンダーの関係性が根本的に変わる所までが必須なので、伝統的なインダストリアル事業はまだまだ準備が全く整ってないと思われます。でも世界的な企業であるGEのように、過去数年かけて大きく変わり、経営者としては相当シビれる意思決定を英断して素晴らしい状態に至る例もあります。ただ、GEはあらゆる事業のお手本にはなりえませんね。

 

このようなプロセスからの学びは、インダストリアル事業での考え方・マインドセットです。インダストリアル事業では、物流については超エキスーパートだとか、物理的な拠点づくりについては超エキスーパートだとか、物流パートナーシップを構築するのが可能、ロジスティックスの構築が可能、という点が本当に重要だということです。

 

それはある意味、どんな製品、どんなサービス、どんなカスタマー経験を提供しようとも、distribution based economy において勝つことができるマインドセットであり、考え方であり、能力なのです。

 

一方、デジタルの世界で競争する場合、distribution based economyで競争する場合に比べ、カスタマーは基本的により多くの選択肢を手に入れています。つまりサービス主導型エコノミーでは、カスタマーに対して最高のカスタマー経験、最高のプロダクトを提供する企業が熾烈な競争を繰り広げる世界で競争することを意味します。

 

それは、本当に些細なことがあった途端にソーシャルメディア経由で膨大な燃料が小さな火に投下される世界です。ユナイテッド航空が、恐らく数十年間維持してきたポリシーを最悪のカスタマー経験と共に終了させねばならなかった、そして世界中がその事実を知ってしまったわけです。

 

あらゆる企業にとり、これまで考える必要すらなかったカスタマーの満足・成果を高めることについて考え、対処することが必須になります。そしてその点こそが、カスタマーサクセスの重要性を、本質的に、永遠に高めていくのです。

 

5. CEO がこの新しいマインドセットを受け入れなかったら、どうなりますか?

市場から退場になりますね。100%そう言い切れます。

 

(ニック:)20年といった時間軸でしょうか?

 

時間軸は事業によります。規制や寡占環境などで、もっと長く生き延びるビジネスもあるでしょう。例えば油田のように、過去の取引を管理しているだけで、プロダクトへの関心や興奮を維持できるビジネスもあります。

 

しかしそういうケースでない限り、カスタマーの成功第一主義のマインドセットでカスタマーサクセスを推進できなければ、早晩あなたのビジネスは市場から退場させられます。それは火を見るより明らかですよ。

 

(原画)

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