デジタル時代にふさわしいアフターサービスへと進化させるべく、カスタマーサクセスに取り組む第一生命保険。約2年の試行錯誤を経た2024年4月、約400名からなる「カスタマーサクセス部」を発足し、現在も発展し続けています。
第一生命保険でカスタマーサクセス活動をリードされている拝田常務に、同社におけるカスタマーサクセス活動の内容とその将来展望についてお話しを伺いました。
以下のインタビュー動画も併せてご視聴ください。
<ゲストスピーカー>
拝田 恭一 氏 第一生命保険 取締役常務執行役員
<ナビゲーター>
弘子 ラザヴィ サクセスラボ代表
弘子ラザヴィ(以下、弘子)
拝田さんのご経歴と、現在の役割について教えてください。
拝田恭一 氏(以下、拝田)
私は第一生命に入社して、いわゆる保険サービス、つまり事務のオペレーションや、デジタル化などを主に担当しています。
現在は、お客様サービスということで、事務オペレーション全般やコールセンターなど、本社の部門にいながらお客様との接点をどのように構築していくかという所を担当しています。
弘子
御社は数年前からカスタマーサクセスに取り組まれました。その経緯を教えてください。
拝田
はい。約3年前にカスタマーサクセスの取り組みを検討し始めました。
当社には、約700万名超のご契約者さまがいらっしゃいます。1人ひとりのお客様へしっかりしたサービスを提供するために、営業社員(以降、「生涯設計デザイナー」)だけではなく、 会社全体としてお客様サービスをもっと良くしていくことができないかと考えていました。
ある時、当社に入社したばかりの社員で元フィンテック企業に勤めていた者が、「カスタマーサクセスが面白いんではないか」って言い始めてですね。それを機に、カスタマーサクセスに関する書籍を読むなどして、皆で勉強しました。
結果、カスタマーサクセスは当社のビジネスモデルにもの凄くマッチしてるんではないかと考えたわけです。
その後、カスタマーサクセスに取り組まれているIT企業さんに色々と教えてもらったりしながら、保険ビジネスに取り入れる場合はどうすれば良いのかを考え、ビジネスモデルを描きだしました。
弘子
まずSaaS企業のカスタマーサクセスを学び、そして自社事業に落とし込まれた。その結果として、カスタマーサクセスをどのように定義/整理されましたか?
拝田
保険の募集からアフターサービスまでを担っている当社の生涯設計デザイナーは約3万数千名います。彼らは、よくよく考えるとカスタマーサクセスと割と近い仕事をしています。
保険を募集するだけでなく、その後も定期的にお客様を訪問し、ライフプランに変化はないか、今の必要補償は十分か、見直した方がいいんではないかなど、お客様と会話する中で情報収集し、本当にお役に立てる商品を提供できているかを毎年確認しているわけです。
一方、やはり一人ではなかなかすべてをやりきることはできない。結果として、弊社のカスタマーサービスが十分行き届かないお客様が沢山いるともいえます。
ならば、本社でカスタマーサポートをしている社員や、生涯設計デザイナーをサポートしている社員の働き方を変えてみてはどうか、と考えました。つまり、生涯設計デザイナーと一緒にカスタマーのサクセスに向けた仕事をする、お客様に対してよりプロアクティブな活動をする部隊を編成しようと考えたわけです。
最も違う点は、お客様サポートというと、やはりコスト的な意味合いがもの凄く強いと思います。カスタマーサクセスは、コストではなくて、より収益に結びつく価値を見出す。そこが、カスタマーサポートとカスタマーサクセスの大きな違いだと思います。
これまでコストセンターだった組織が、より収益や利益を得る組織に変革していくという点が、特に大企業の組織としてはとても大きな違いだと思います。
弘子
一般的に、カスタマーサクセスを「お客様満足を高めること」と誤解している会社は多いです。
お客様満足が高いことは素晴らしいことです。しかし、カスタマーサクセスの本質的な目的は、お客様へ満足だけでなく価値を提供すること、そうして自社収益を上げることです。
その点について、御社ではどう整理され、結果としてどのような成果が上がったのでしょうか。
拝田
お客様満足を上げることはもちろん当社でも各部署が意識していて、1つひとつの手続き単位でお客様の満足を得られているかをもの凄く重視しています。
そうした満足度を上げることとの違いは、カスタマーサクセスはお客様のロイヤリティーを高めることなんだろうと思います。満足度が高くてもロイヤリティーが本当に高まるかというと恐らく違いがあります。
我々がカスタマーサクセス活動の中で極めて重視しているのは、心理的なロイヤリティーを高めることです。
具体的には、第一生命さんはいつも親切にしてくれる、細かなことまでよく気づいてくれる、この人・このサクセス担当者に相談したいなど、そうした心理的ロイヤリティーを構築することをもの凄く重要視しています。
結果として、契約を継続しようとか、お客様の環境が変化したときに第一生命に相談してみようとか、そうした気持ちが醸成されるところまで繋げたいと思っています。単に保険商品の中身だけ、値段だけの比較ではなくて、第一生命保険に入るとしっかりしたサービスが受けられる、こんないい人に相談できるといった、心理的な価値を大事にしていこうと思っています。
そうしたことが結果として、保険契約の継続率やアップセル・クロスセルに繋がり、最終的に、カスタマーサクセスを推進する財務的な評価に反映されると思います。
ただ、忘れてはならないのは、財務的価値だけを求めるのでなくて、やはり、お客様にしっかりとしたサービスを提供しながらロイヤリティを高めていくには何すればいいのかを日々考えることが大事、という点です。
弘子
既に数字面へ現れている成果についてお話しいただけますか?
拝田
そうですね、効果は徐々に出てきています。例えば、カスタマーサクセス担当者がいる契約といない契約とでは、継続率に差が表れてきています。
我々の保険収益は、契約継続からの「継続保険料」が収益の源泉です。それがコンマ何%でも上がれば、それは非常に大きな価値になります。その継続率に、カスタマーサクセス活動の成果が差として現れてきています。
また、いわゆるアップセルやクロスセルについても効果が表れています。
カスタマーサクセス担当者が新商品をご案内し、関心・興味を持ったお客様には生涯設計デザイナーが訪問して提案します。結果、契約件数がひと月あたり約千件増えてきています。
単に件数の増加という点に加え、見込み客を探すという、生涯設計デザイナーにとってはもの凄く負担が多い所を、カスタマーサクセスチームが協力することで負担を減らせる点が大きいです。また、新しいお客様を見つけようという活力になるんではないかと思っています。
弘子
お客様の反応はいかがですか?また、お客様と接点を持たれる生涯設計デザイナーさんや、サポート担当者の反応、そして、彼らのマインドセットや行動の変化などはありましたか?
拝田
我々がこのプロジェクトで重視しているのは、何よりお客様からの評価、そして現場の生涯設計デザイナーから見てどう映るかという点です。アンケートを取りながら定点観測を続けています。
お客様の評価については、当初、生涯設計デザイナーがいながらカスタマーサクセス担当者もいるということが本当にお客様にとって分かりやすいものなのかいう点を心配しました。
トライしてみると、意外とそんな混乱はありませんでした。
「生涯設計デザイナーとは別に本社に気軽に問い合わせできる人がいるのね」「そういうサービスを始めてくれたのね」と、非常に好意的に受け止められるお客様が多いです。
また、このプロジェクトで最も難しかったのは、やはり生涯設計デザイナーとの関係性ですね。
生涯設計デザイナーにとって、自分が担当しているお客様に別の人が話をするということはもの凄く不安を感じるのだと思います。このプロジェクトを始めた時、やはりその課題がもの凄く大きくでてきました。
そこで、カスタマーサクセス担当者、いわゆるCSMは、皆さんと一緒に協力して仕事をする担当で、決してお客様を取ったりとか、自分の営業成績を上げようとか、そういったことが目的ではなく、皆さんをしっかりサポートするための制度です、という点をしっかり伝えました。
同時に、CSMの人柄など知ってもらうため、リモートで顔合わせ会をしたり、心理的な安全性というか、コミュニケーションをもの凄く大事に重ねました。
そうして1年、2年、3年と時間を経る中で、もの凄く信頼感が醸成されました。今では、お客様からの感謝の声よりも、生涯設計デザイナーからの毎月の感謝の声の方が圧倒的に多い状態になっています。
それは、単に仕事を手伝ってもらうというだけでなく、色々な相談事にもしっかり答えてもらう中で、安心して仕事ができるという生涯設計デザイナーが増えてきたためです。そうした、人と人とのコミュニケーションや信頼関係が、このプロジェクトではもの凄く重要だと感じています。
弘子
御社の取り組みは、経営層が十分な議論と意思決定プロセスを重ね、そこに現場が一体となって進められている印象です。実際、経営層ではどのような議論があったのか教えてください。
拝田
経営層がこのカタマーサクセスのプロジェクトを進める背景には、会社全体のビジネスモデル、将来の事業リスクや成長性について考えた時に、今までとは違うことをやらないと成長を続けることは非常に難しい、という危機感があります。
そうした中で、ビジネスモデルを変革していく取り組みを、社長を筆頭に進めています。実際、経営層では様々な議論があります。
700万名のお客様すべてに担当者をつけることが本当に効率的なのか、本当に収益がよりプラスになっていくのかといった点はやはり議論になります。コスト負担もでてきますので。
そこで我々は、チェックポイントを設けました。継続率の上昇や、クロスセル・アップセルに繋がった件数など、複数のKPIを設けて、毎月のようにそれをチェックし、本当に上手くいってるのかを確認しながら進めています。
弘子
昨年、隅野社長がアナリスト向け説明会で、ご自身の言葉でカスタマーサクセスの取り組みを紹介されました。拝聴していて、御社の経営層が1枚岩になっている様子が伝わってきました。
拝田
隅野(社長)は、いち早く現場を見にきました。
彼は、いわゆる営業現場である支社もよく訪問しますので、その際に、カスタマーサクセスについて、現場の生涯設計デザイナーや彼らの指導者層の反応などを直接聞いています。
聞く毎に、この取り組みが現場から「もの凄く良い」という話を耳にし、やはりこのプロジェクトを進めることは、本社と現場の一体感も多分に醸成され、生涯設計デザイナーの助けにもなっている、と感じられたと思います。
また、支社の営業を統括する支社長、他部門の部長や役員がカスタマーサクセス拠点を見学すると、「え、こんなことまでやってるの?!」と言います。データも使いながら、お客様にしっかりとしたサポートを効率的に提供するにはどうすればいいかを考えながらやってるんだな、という点を理解されます。
実際にカスタマーサクセスという仕事を担当するCSMから、お客様との接点が強化されている、生涯設計デザイナーから安心感をもの凄く得ているという話を聞き、彼らのモチベーションの高さなども含め、「あ、このプロジェクトなら上手くいきそうだ」と肌で感じられるのではないかと思います。
弘子
既に素晴らしい成果を上げられていますが、まだ満足してないとも聞きました。数年先を見据えた時に何を目指し、どのような計画があるのか、お話しできる範囲で教えて下さい。
拝田
現時点で、カスタマーサクセスのサービスを提供できているお客様は約120万名。全体の約6分の1程度です。今期はそれを180万名ぐらいまで拡大したいと考えています。
私の思いとして、数年以内にはすべてのお客様にこのサービスを提供できる体制をつくっていけないかと、今計画を練っているところです。
そのためには、人材であったり、デジタルの仕組みであったり、より効率的に運営をするためのAI活用であったり、そうしたことが必須になりますので、数年で実現できるかどうかは今後次第です。
ですが、やはり少しでも早くスピーディーにサービスを展開して、より大きな成果をだしていきたいと考えています。
拝田
カスタマーサクセスで重要しているのは、お客様の情報をしっかり集めることです。なぜなら、お客様の情報がなければ的を得た提案も、的を得たサポートもできないからです。
私がCSMメンバーに伝えているのは、どんな些細なことでもよいので、お客様の周辺情報を聞くことの大切さです。家族のこと、どんなペットを飼ってる、どんな趣味をお持ち、どんなお仕事をされているなどを、ちょっとした会話の中でしっかり聞いて蓄積していくことをもの凄く重視しています。
そうしたデータは、今直ぐ使われなくなくても、将来もの凄く生きてくると思っています。
データを貯める活動を当初から重視し、貯めたデータを分析しながら、お客様にとってより良いサービスを提供していく。さらに、AIを活用して自動的により良いサービスを生みだしていく、そうした世界をしっかり作っていきたいと考えています。
私自身、過去に様々なデジタル化の取り組みを経験した中で、このカスタマーサクセスという活動が、AI活用、データ活用に最も親和性のある、相性のいい仕事だと思っています。
逆に、データ活用なしでカスタマーサクセスはそう簡単に成功しないと思いますので、積極的に進めていきたいと思っています。
拝田
カスタマーサクセスを全国に広げる体制をつくるには、「人材」が極めて重要です。人材をどう獲得、育成しながら進めていけるかが、このカスタマーサクセスを進める上で極めて重要なポイントです。
当社には、全国に千以上の拠点があります。北海道から沖縄に至る日本中の隅々まで、事務を担当する社員がそれぞれの拠点に配置されています。
彼らはこれまで、そうした営業拠点で事務手続きのサポート、具体的には、書類の点検などの限られた仕事を担当してきました。しかし、今後、デジタル化が進む中でそうした仕事の量は現実的にどんどん減っていく。もしくは、デジタル化することで、そうした仕事は効率化しなければいけません。
一方、そこにいる人材は、保険商品に関する知識や、生涯設計デザイナーとの人間関係などについて、もの凄く高いスキルを持っています。彼らの知識やスキル、パフォーマンスを最大限に生かすことが大きな課題でもあります。
弊社のカスタマーサクセスの取り組みは、冒頭申した通り、コロナ禍にデジタル化を進める中で始めたので、当初から、自宅でもこのカスタマーサクセスの仕事ができる環境を作ろうと決めていました。
それが最終的には、社員のキャリア形成や、やりがい感の創出にも繋がっていくと思います。
当社の社員は、生涯設計デザイナーをサポートできる、お客様に喜んでもらえる、ということにもの凄く高いモチベーションをもつ人が多いです。
実際、現場でカスタマーサクセスの仕事に携わっている社員は、もの凄くやりがいを感じて仕事をしてくれていると感じます。お客様から感謝されたり、生涯設計デザイナーから感謝されたりする中で、自分ももっと頑張ろうという気持ちが醸成されるようです。
企業の経営者である我々にとって最も重要なことは、社員の活力を創出することです。ですので、活力が高まる仕事を生み出していくことが我々の仕事だと思っています。
拝田
私が初めて「カスタマーサクセス」という言葉を聞いたときの印象は、「変わった名前のサービスだな」程度で、あまり関心を持ちませんでした。
しかし、勉強していく中で、カスタマーサクセスというものが、様々な企業、様々な仕事においてもの凄く重要なものだと思うようになりました。弊社内にも、実際、時間はかかりましたが、徐々に浸透していきました。
やはり、お客様のことを徹底的に真剣に考えるという所に、このカスタマーサクセスの原点があると思います。
お客様の成功を理解し、それを企業のサービスや商品に当てはめるとどういうことなのかを考えながら、1人ひとりが仕事をするということがとても大切です。
色々なハードルも沢山あると思いますが、私自身は、カスタマーサクセスが日本企業全体の活力を引き上げていく取り組みになっていけばいいなと思っています。
写真:拝田常務
SuccessGAKO(サクセス学校)はカスタマーサクセスの未来を創る挑戦者を輩出する学び場です。カスタマーサクセスを追求するのに必要な知識を学び、自分で考え、実行することで、自社、顧客そして自身も成功することを目指す人のために誕生しました。経験豊富な講師陣による講義と受講生限定のコミュニティとが共鳴し、一方的な知識の習得でなく、仲間と切磋琢磨しながら行動することに価値をおいた実践者コミュニティです。
※まずはこちらから説明会(11月18日)へ参加登録ください。当日参加が叶わなかった方を含む登録者全員へアーカイブを共有します。
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